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木が、木がメタンを吸収している…だと?

木は増え続ける大気中の二酸化炭素を吸収する重要な役割を担っています。それだけで十分な気もするのですが、今回新たな研究結果で、強力な温室効果を持つメタンまで吸収してくれちゃっていることがわかったそうですよ。さらなる温室効果ガス削減のスーパーヒーローになってくれるかも。

樹皮がメタンを吸収

科学誌Natureに掲載された研究結果で、樹皮に生息する微生物が大気中のメタンを大量に吸収し、樹木による温暖化緩和を約10%促進させていることが判明しました。

これまで、陸地でメタンを吸収するのは土壌だけと考えられていましたが、今回の新たな発見で、樹木が土壌と同等かそれ以上に重要な存在になる可能性が示されました。

産業革命以降における気温上昇の約30%は、メタンが原因と考えられています。 二酸化炭素が300年から1000年も大気中に留まるのに対して、メタンは7年から12年と寿命はすごく短いのですが、温室効果は100年で二酸化炭素の28倍、20年の短期だと80倍もあるんです。

短期的な温室効果が二酸化炭素の比ではないうえに、人間活動によるメタン排出量は急増中。そんな中で新たな吸収源が発見されたのは、めちゃくちゃうれしいサプライズです。

研究チームは、世界各地の異なる気候帯の森林を対象に、最新のレーザースキャニング技術を用いて世界全体の樹皮の面積を定量化し、メタンの吸収量と排出量を分析したところ、木が年に2500万〜5000万トンのメタンを大気から除去しているという結果が出ました。

除去されたメタンのほとんどは、熱帯林に吸収されています。温暖で湿気の多い環境が、微生物の繁殖を活発にしているのではないかと考えられています。ただ、微生物がメタンを取り込むメカニズムを解明するには、さらなる研究が必要です。

また、地表近くではメタンの排出量の方が多く、地上数メートルで排出から吸収に転じ、上に行くほど吸収量が増えるとのこと。

世界中の木々の樹皮を平らに敷き詰めると、なんと地表をすべて覆ってしまうのだそうです。

温暖化緩和への希望

論文執筆者の代表Vincent Gauci氏は、面積が変化しない土壌と異なり、伐採と再植林によって拡大と縮小を繰り返している森林が、大気中のメタン濃度に影響している可能性があると考えており、森林伐採が大気中のメタン濃度を増加させたかどうかを調べるための研究を計画しています。

適切な地域にメタンをより吸収できる木を植えて、微生物にとって最適な環境を作れれば、より大量のメタンを大気から除去できるようになるかもしれません。

温暖化を止めるための切り札として、森林の保護と再生への国際的な取り組みがますます重要になりますね。

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Source: Gauci et. al 2024 / Nature

Reference: SciTechDaily, NASA (1, 2), The Conversation