こちらは500首の短歌がまとめられた歌集です。この歌集の著者である1人の被爆者を思いを取材してきました

切明千枝子さん。94歳。79年前のあの日、爆心地から2kmの距離にある比治山橋のたもとで被爆しました。15歳でした。

切明千枝子さん「原爆から生き延びてラッキーなんて思ったことはない」

自らもけがをしながら救護のために向かった学校では、下級生の火葬をしたといいます。

「燃えながら泣きながら母校へたどりつき果てたる友よ八月六日」

あの夏の嘆きです。

多くの友人を失い自分だけが生き残った後ろめたさから切明さんを救ったのは短歌でした。

切明千枝子さん「やっぱりあの時のことのちをの世に伝えようという何かの大きな力が私を生かしてくれただろうなと」

そしてこの夏、切明さんがこれまで歌った1500首が1冊の歌集になります。

企画したのは一橋大学大学院生の佐藤優さんです。3年ほど前から交流が続く2人。歌集を作るきっかけは切明さんの一言でした。

佐藤優さん「悲しい記憶は短歌にぶつけてきたのと言ってきたことがあって」

「かくれんぼかくれしままに消え失せし友をさがして今日までを生く」

「八月六日家を出たまま帰らざる人あまたありそれがヒロシマ」

切明千枝子さん「せめて歌の中だけでも生きさせてあげたいという思いもありました」

前日に「またね」と別れ、二度と会えなくなった友人。切明さんのつらい過去が犠牲者の存在を証明します。

佐藤優さん「ちゃんと切明さんの歌のいいところが伝わる1冊になっているかドキドキですけど、色んな人に手に取ってもらえる日が楽しみ」

1日、切明さんのもとに完成した歌集が届きました。

切明さん「あ~これですか、ありがとうございます。ちょっとまあ見てくださいいい本ができてびっくり仰天です」

歌集のタイトルは「ひろしまを想う」です。

500首が厳選され戦争をしてはいけないという思いを訴えます。

切明さん「私が死んでしまったら一緒に消えてしまうんだなと、そのつもりでいたのでこうして残ることになってありがたいことだなと思います」

出版を記念した講演会には東京など全国から約100人が参加しました。

切明さんが語るのは「この歌集は私の人生そのもの」。

切明千枝子さん「どうやったら戦争を避けることができるのか、平和になれるのかを皆さんに考えてもらうほんの一滴のお役に立てばと思います」

世界の平和を心の底から願って・・・

切明さんから佐藤さん、そして読者へ思いは繋がります。

佐藤さん「切明さんが見てきた風景や感情がたくさん込められているので、読者一人一人が自分なりに想像して切明さんが体験したことをいかし続けてほしい」

歌集「ひろしまを想う」は79回目の原爆の日となる8月6日に県内で販売されます。