パリ五輪で注目を浴びる中川安奈アナ(本人のInstagramより)

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 さて問題です、NHKはパリオリンピックとパリパラリンピックに一体、何人のアナウンサーを派遣するのでしょうか──? デイリー新潮が広報資料などをもとに数えたところ、少なくとも28人を確認した。そのコストは基本的に、我々の受信料から捻出されている。

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 NHK関係者が言う。

「内訳を見てみましょう。競技の実況を担当するアナウンサーはオリンピックが12人、パラリンピックが10人。開閉会式のみを担当するのが3人。さらに、番組から派遣されているのが3人。これで計28人になります」

 NHKは6月25日、収入から支出を差し引いた事業収支差金が136億円の赤字だったと発表。赤字決算は1989年以来、34年ぶりとなった。23年10月に受信料を1割引き下げ、収入の大半を占める受信料収入が減少したことが影響を与えたという。

パリ五輪で注目を浴びる中川安奈アナ(本人のInstagramより)

 これに先立つ1月9日、NHKは2024年度から3か年の経営計画を決定した。値下げした受信料額は堅持するとし、設備投資の大幅な削減や、あらゆる業務の見直しなど構造改革を進め、事業支出を1000億円削減するとの方針をまとめた。

 NHKの関係者は「要するにNHKは徹底した経費削減が求められています。にもかかわらず、パリに28人のアナウンサーを派遣する。これが国民の理解を得られるのでしょうか? 私は疑問に感じています」と言う。

「もちろん削ってはいけないアナウンサーもいます。競技の実況を担当するアナを手厚くすることに反対する人は少ないでしょう。さらに実況担当のアナはNHKと民放、民放連で構成するジャパンコンソーシアム(JC)から派遣されるという格好にはなっています」

“宝の持ち腐れ”

 JC負担の場合、コストの負担は別会計という考え方も成り立つとは言える。だが、結局のところNHKがオリンピック中継のために払う放映権料の原資は受信料だ。

「その他にも様々な問題がありますが、その一つに開閉会式の実況しか担当しないアナウンサーが3人もいるということが挙げられます」(同・関係者)

 その一人が中山果奈アナだ。2014年入局で、同期入局には「ニュースウォッチ9」(平日・21:00)の星麻琴アナや、「サタデーウォッチ9」(土・21:00)の林田理沙アナがいる。

「中山アナは開会式の実況を担当しましたが、オリンピックで他の実況を行うとは発表されていませんし、NHKの番組に連日出演しているわけでもありません。中川安奈アナは閉会式の実況を担当しますが、彼女はそれ以外の番組でも出演しています。開会式の服装にネット上で批判が殺到したこともありました。民放キー局は実況担当以外となると少数精鋭で、現地の局アナは出ずっぱりです。しかも中山アナは“宝の持ち腐れ”なのに、『NHK NEWS おはよう日本』といった報道番組が、比較的年齢の若い女性アナウンサーをわざわざ3人も派遣しています。この派遣は必要だったのでしょうか?」(同・関係者)

キャスターまでパリへ

 具体的に見てみよう。まずはアナウンサーではないが、「サタデーウオッチ9」(土・21:00)の伊藤良司キャスターは7月27日の放送でパリから中継で出演した。

「繰り返しますが、NHKは28人のアナウンサーをパリに派遣します。さらに伊藤キャスターまでも現地に向かう必要があったのでしょうか? パリで仕事をしているNHKのアナウンサーに出演してもらい、東京のスタジオにいる伊藤キャスターと衛星回線でやり取りすれば、それで済んだと思います」(同・関係者)

 次は番組から派遣された女性アナウンサーだ。先に触れたとおり、3人の女性アナウンサーが番組からパリへ派遣されている。

「NHK NEWS おはよう日本」(平日・5:00など)のレポーター・浅田春奈アナ、「NHKニュース7」(毎日・19:00)で金土日祝のフィールドキャスター・川口由梨香アナ、「ニュースウォッチ9」(平日・21:00)のスポーツキャスター・吉岡真央アナ──この3人だ。

「浅田アナと川口アナは19年、吉岡アナは18年の入局です。3人とも20代の若い女性アナウンサーという共通点があります。Xを見ると、彼女たちはかなり前から現地に入っていることが分かります。とはいえ、3人がフランスから送ってくるレポートはパリ通行人のインタビューとか、選手村の様子を紹介するなど、他愛もないものばかりです」(同・関係者)

番組スタッフも渡仏

 番組から派遣されるのは女性アナウンサーだけではない。番組スタッフも同じようにパリへ渡る。

「“屋上屋を架す”という慣用句を思い出します。パリにはNHKの国際部とスポーツニュース部の記者やデスクが大量に派遣され、取材して記事を書き、カメラマンが撮影しています。ところが番組からも番組の担当記者やデスクが派遣されますから、完全に重複しています。『ニュース7」』や『ニュースウォッチ9』の場合、取材制作ディレクターやデスク級までパリへ渡ります」(同・関係者)

 要するに無駄なアナウンサーやスタッフが目立つようなのだ。

「番組からアナウンサーやスタッフは渡仏させず、現地の記者やディレクターが番組分の取材も行う。必要ならパリ滞在中のアナウンサーに出演してもらうほうが、はるかに合理的であることは言うまでもありません」(同・関係者)

 さらにNHKがネット対応に力を入れていることで、「番組発の独自報道」の必要性が低下しているという。

「昭和の時代なら、それぞれの時間帯で放送される報道番組が独自ネタを放送したり、独自の観点でパリからレポートを伝えたりすることに価値はあったと思います。しかし今では、番組発のニュースであっても、国際部が取材してまとめたニュースでも、ネット記事では単なるNHKのニュースに過ぎません。こうして見ると、NHKはパリオリンピックに対応するため、かなり予算を乱暴に使っていることが分かります。局内でも『こんなにジャブジャブ予算を使って大丈夫なのか?』と呆れ、心配する声が出ているのです」(同・関係者)

デイリー新潮編集部