ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨は、ブロックチェーンと呼ばれる暗号技術を用いた電子台帳によって取引履歴が記録され、政府による規制のない匿名取引を可能にします。近年は仮想通貨に投資する人が増えていますが、トロント大学やマイアミ大学の研究チームが行った新たな調査では、仮想通貨に投資する人は「ダークな性格特性」を持っている可能性が高く、陰謀論や非主流のソーシャルメディアを使う傾向が強いことなどが明らかになりました。

The political, psychological, and social correlates of cryptocurrency ownership | PLOS ONE

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0305178



Cryptocurrency investors linked to dark personality traits - Earth.com

https://www.earth.com/news/cryptocurrency-investors-linked-to-dark-personality-traits/

Dark Personality Traits of People Who Invest in Crypto Revealed : ScienceAlert

https://www.sciencealert.com/dark-personality-traits-of-people-who-invest-in-crypto-revealed

プライバシーを保護するデジタル通貨の概念は1980年代には登場していましたが、仮想通貨という存在が普及したのは2009年にビットコインが登場したことがきっかけでした。仮想通貨市場の総資産は記事作成時点で2.5兆ドル(約380兆円)と推定されており、そのほとんどはビットコイン・イーサリアム・テザーといった主要な仮想通貨の形式で保有されているとのこと。

ブロックチェーンによって匿名取引が可能な仮想通貨を用いれば、政府が発行するその他の貨幣形態では不可能なプライバシーとセキュリティ保護がもたらされ、国家による規制の届かない経済が実現できるとされています。しかし、仮想通貨に投資する人の多くはこうしたプライバシー面に目を向けておらず、仮想通貨を「商品やサービスの購入に使える通貨」ではなく「相場の上下に乗じて利益を得るための媒体」とみなしているのが実態です。その点では、仮想通貨は現金よりもギャンブルのチップに近いと科学系メディアのScience Alertは指摘しています。

Science Alertは、「主流の権威に対する不信が動機となり、仮想通貨の投資家は陰謀論を重視し、オルタナティブな政治的傾向を持ち、科学に対する信頼が低いと考えられるかもしれません。しかし、既存の研究では投資家を特定のイデオロギーに限定することは難しく、仮想通貨の所有者はアナーキスト、リバタリアン、ポピュリストなど多様であることがわかっています。他の研究では、極右的な信念と白人至上主義との関係が指摘されています」と述べています。



このように「どのような属性の人が仮想通貨を好んでいるのか」については多様な意見が存在しています。そこで研究チームは、アメリカに住む2001人の成人を対象にアンケートを実施し、仮想通貨を持っているのかどうかに加え、政治的・心理的・社会的特性について調査を行いました。

回答を分析した結果、回答者のうち仮想通貨を所有していたのは約30%でした。仮想通貨を持っている人々の政治的志向は左派から右派まで驚くほど広かったものの、伝統的な政治傾向から外れてキリスト教ナショナリズムやアメリカ例外主義に固執する傾向もみられたと報告されています。

また、ナルシシズム・マキャヴェリズム・サイコパシー・サディズムなど、典型的なダークな性格特性を持っていることも示されました。さらに、「カオス」の必要性を反映したスケールでも、非仮想通貨投資家と比べてわずかに高いスコアだったとのことです。

研究チームによると、仮想通貨を持っている可能性が最も高い予測因子は、「ニュースをSNSなどの非主流のメディアに依存していること」だったそうです。仮想通貨の所有と関連するそれ以外の特性としては、「男性であること」「議論が好きであること」「権威主義的な政府に嫌悪感を持っていること」「高収入であること」「被害者意識が強いこと」などが挙げられています。



今回の研究結果はあくまで自己申告に基づくものであり、調査した人数もそれほど多くはないため、調査結果をその他の大衆やアメリカ国外の人々にも一般化できるかどうかは不明です。

研究チームは、「各国政府がより厳しく仮想通貨を規制し、場合によっては国主導で仮想通貨を発行しようとしている今、仮想通貨の魅力を理解することが必要でしょう」とコメントしました。