ぶっちゃけ新車販売だけじゃ食べていけない! いま新車ディーラーが「中古車販売」に力を入れるワケ
この記事をまとめると
■新車ディーラーの再配置が近年目立っている
■新車販売だけでは採算が取れずメンテナンスや中古車部門が重要視されている
■残価設定ローンで販売したクルマはディーラーが再販までを見据えているケースがある
ディーラーは新車販売だけでは食べていけない時代!
筆者の生活圏では新車ディーラー店舗の「再配置」が目立っている。新車販売が伸び悩むなか、そして働き手不足もあり、いまどき店舗の新規追加出店というものはまず行われない。「あれっ、こんなところにあったかな?」と感じた新しい店舗を訪れ話を聞くと、近所の生活道路沿いにあった古い店舗をバイパス沿いに移転させたと教えてくれた。このようなケースは筆者の生活圏では最近数店舗行われている。
また、新たに鉄道が開業し、沿線開発が進むなか新たなニュータウンができ始めると、メーカーを問わず、既存店をその新興開発地域へ移転させることで新たなディーラー街ができていたりもしている。かつて1990年代に宅地開発が盛んであった地域に店舗を構えるディーラーでは、「当時のニュータウン居住者向けに出店したと聞いています。しかし、出店から30年以上が経ち、住んでおられるみなさんも高齢化が目立っております。この店舗でおクルマを継続的に買っていただいているお客様のなかでも、運転免許の自主返納などでクルマの所有をやめられる方が増えております。バイパス沿いに出店しているわけでもなく、ポツンと店があるのでほかの地域から足を運んでいただけるお客様は期待できません」とのことであった。
過去に宅地開発された際に出店し、いまでは顧客を求めて少し離れた新たに造成されたニュータウンにチラシのポスティングなどで遠征して販売促進活動を行っているという店舗の話も聞いている。
既存店の「引っ越し」という形で新規オープンした店舗の多くでは、広めの中古車展示場を併設していることも多い。ただ、部材費や流通コストの上昇に歯止めがかからないなか、新車も価格引き上げを行っているが、コスト上昇分を十分吸収するには正直至っていない。ただ、このような状況になる前から、新車販売による利益がカスカスであったので、点検・整備などのメンテナンス部門の収益に注目していた。
しかし、安全運転支援デバイスの普及もあり、貴重な収益源であった板金修理が激減し、メンテナンス部門でも部材費や人件費高騰(メカニックはとくに離職が激しい)などもあり、それほど収益は見込めなくなっている。なので、新車ディーラーであっても最近は中古車販売に力を入れているのである。中古車は「古物」となり、同年式同型車であっても、走行距離やボディカラーによって販売価格は異なる。つまり、価格設定の自由度は新車よりはるかにあるので、当然販売する「うまみ」も大きいのである。
中古車販売がいまアツい!
アメリカでも新車販売ビジネスの置かれている状況が厳しくなってきて久しい。そんなアメリカでは、すでに新車ディーラーの多くが中古車販売に力を入れている。アメリカでの新車販売は在庫販売が大原則となるので、道路から奥まったところにあるショールームや整備工場までの間に、クルマを置けるスペースが広く用意されることが多く、ディーラー敷地内にはそのような場所には多くの中古車が展示されている。
アメリカンブランドのディーラーでも、入口の目立つところに人気のある日本車の中古車を置いたりしているので、パっと見るとどこのディーラーかわからないほど。アメリカでは新車購入に際し、それまで乗っていたクルマを個人間売買で処分することがあるので、展示される中古車はディーラーそれぞれがオークションで落札してくるケースが多いとも聞いている。
日本ではまだ外部オークションで積極的に落札してくるというところまではいってないようで、自銘柄(自分が扱うメーカー車)中古車が大半となっている。実際に訪れるお客の多くも、メーカー系ディーラーでは、同メーカーの中古車を探しにやってくるケースが多い。
また、国内ではまだまだ下取りが多いので、自社で下取りをしたなかで走行距離が少なめで程度のいいものは、オークション出品などせずに自社で売って利益を増やしたいと考えていることがほとんど。
アメリカでは、販売予定の在庫車を直接試乗させるのだが、日本では「受注販売」が原則ということもあり、各ディーラーでは試乗車が用意され、それが役目を終えると中古車として展示されることもある。ディーラーによって異なるのだが、試乗車はおおむね半年ほど使用して、走行距離の上限を決めるなど厳しく管理されているとも聞いたことがある。
ディーラーによっては試乗車のほかに、点検・整備などのときの「代車」として別に用意しているとも聞いている。
ちなみに残価設定ローンを組むと、残価保証の条件として月間走行距離が決められるのが一般的。しかも、残価設定ローンを組むことで、それぞれの時期によって、どんなクルマがどの程度下取り車として入庫予定となるのかというものも把握しやすくなっているし、セールスマンもそれをベースにして、乗り換え促進などの営業活動を展開しているメリットがあるという。
さらに、メンテナンスパック(一定期間の点検・整備代などを前払いすることでお得になるもの)を付帯してもらえれば、管理が行き届き日々の車両状態も把握しやすくなる。ディーラーが新車のほか、中古車販売にも力を入れるのには、収益体質改善もあるが、自社扱い車の再販価値の維持という側面も大きいものと考えている。
新車購入のための商談中に、購入予算でなかなか折り合いがつかないと「中古車でいいのありますよ」とふってくることがある。このようなときはたいがい試乗車として使われていた車両となる。ほかには、一時控えられていたのだが、未登録の展示車両の販売も、最近では目立って行われるようになってきている。
新車ディーラーは新車だけを販売しているのではなく、柔軟な選択肢を用意しているので、買う側も柔軟な思考で損得を判断したほうが、よりお買い得な買い物ができることになるだろう。