石丸伸二「恥を知れ、恥を!」発言は、3日前から練っていた

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 7月7日の東京都知事選で、165万票を獲得して2位に躍進した石丸伸二氏。選挙戦略やマスコミ対応などネット上では賛否がわかれ、一躍全国区となったが、その手腕は安芸高田市長時代から変わらない。その石丸流「思考法」を本人が明かす(以下、石丸氏の寄稿)。
◆恥を知れ、恥を!

 5月16日、私は東京都知事選(6月20日告示・7月7日投開票)に立候補することを表明しました。安芸高田市長選への不出馬を表明した会見でも明かしたように、本当はこの先も市長をやりたかった。しかし、もっと優先しなければならないことがあった。それは地方の衰退に歯止めをかけることです。

 最大の問題は人口減少にあります。日本の総人口は次の20年間で1300万人も減少すると予測されています。当然、多くの自治体が消滅することは避けられません。

 もはや、各自治体で解決できるものではありません。だから、日本最大の都市である東京で46の道府県と密にコミュニケーションを取りながら“多極分散”を実現して、地方とともに東京を発展させたい──。そう考えたのです。

 この決断の背景には、安芸高田市長として市の財政悪化に歯止めをかけられたという理由もあります。やれることは、すべてやった。

「恥を知れ、恥を!」

 振り返れば、私と安芸高田市の知名度を急激に高めたのは、’22年6月10日に市議会で私が発したこのセリフでした。全国メディアでも繰り返し取り上げられました。市議会の機能不全を最も印象づけたセリフだったのではないでしょうか? 人口2万7000人の小さな町の市議の名前まで“全国区”になりました。

 この発言の発端は、安芸高田市の2人目の副市長選任を巡って議会と衝突したことです。2度にわたって私が提出した選任案が否決され、’21年6月にはその議決に条例違反があったと再議を求めましたが、これも否決されました。

 その後、9人の市議が’22年1月に「清志会」を結成しました。居眠り市議に居眠り容認発言をした元議長、恫喝疑惑市議、河井克行事件でお金を受け取って一度は辞職した市議、正副議長を含めた、私に対抗しようとするグループです。

 安芸高田市議会の定数は16ですから、彼らは過半数を握りました。その力を利用して、’22年3月の議会に副市長の定数を2から1に減らす条例改正案を提出・可決させました。こちらの副市長選任案を認めない理由を説明してほしいという私の求めに対し、まったく説明責任を果たさなかった彼らは、「2人目の枠をなくす」という手法で“説明責任を果たさなくて済む”体裁にしたのです。

 ここまでやるか!?という多少の驚きを感じつつも、私はしてやったりでした。「副市長を半減させてもいいのなら、議員定数も半減させていい」という提案ができるからです。

◆“不正義”の実態を反転 可能性テストで明らかに

 もちろん、これが通るはずもないことはわかっていました。ただ、議員を半分にしても議員1人あたりの人口は、広島県三原市と同水準ですから、「市民の声が届かなくなる」心配はありません。財政問題を理由に副市長枠を減らすのなら、議員も減らして当然ではないか? そんなメッセージを発する目的もありました。

 議員定数半減案には、一部で「おとなげない市長」と批判的な声も上がりましたが、それは本質がわかっていないだけです。

 私の取った手法は、反転可能性テストです。自分と他者が反転しても、受け入れられるか否かのテストです。ハーバード大学のサンデル教授の『これからの正義の話をしよう』でも触れられているとおり、「正義」の概念を分析する際にも用いられます。

 これに則って、「(財政的余裕がないから)副市長を減らす」を「市議を減らす」という立場の反転を行ったわけです。結果、副市長は減らしてもいいのに市議は減らせないという“不正義”の実態を明らかにすることができました。