“新聞離れ”が加速、不動産事業も焼け石に水…ジリ貧の大手新聞社が見習うべき「アメリカの事例」
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日本新聞協会によると、2023年の新聞発行部数は2800万部。ついに3000万部を下回りました。前年比で7.3%の減少。縮小ペースは加速しています。Webニュースにその地位を脅かされているのが主要因ですが、新聞社には重要な役割があり、情報発信拠点の崩壊はニュースの根幹を揺るがすことにもなりかねません。
◆23年前と打って変わった状態に
2000年の発行部数は5300万部でした。1世帯当たり1.13部を発行していたことになり、複数の新聞を持つ世帯の方が多かったことを示しています。2023年は0.49部。2世帯あわせても1部に満たない計算です。
2023年は創刊から50年の歴史を持つ日経産業新聞が休刊に追い込まれました。北海道新聞、信濃毎日新聞は夕刊を休止しています。発行部数が減っているうえに原材料高が重なり、発行を続けることが難しくなったのです。
新聞そのものが廃れても、書籍のようにデジタル化が進んでいるようにも思えます。日経電子版のような成功事例もよく知られています。しかし、必ずしも順風満帆というわけではありません。
◆日経電子版でさえも盤石とはいえない
2023年の日経電子版の加入者は前年比9.8%増の90万人でした。ただし、新聞・電子版購読者数は同6.5%減の231万人。2つのサービスを合わせた加入者数は321万人で、前年比2.4%の減少です。
2019年まで両サービスを合計すると増加していましたが、2020年に新聞離れが加速すると減少へと転じました。
日本経済新聞社の2023年12月期の売上高は前期比2.3%増の3665億円と増収。しかし、営業利益は同37.2%減の114億円。4割もの営業減益となりました。
同社は新聞、雑誌などの販売収入や広告収入が減少したものの、フィナンシャル・タイムズ・グループの売上が伸びて全体では増収となったと説明しています。
国内は苦戦を強いられており、営業利益が削られている様子が伝わってきます。
◆“経営効率が高い”不動産事業でも、会社全体は支えられない
よく「新聞社は不動産事業があるから経営は安定している」という声が聞こえてきます。
不動産事業が安定した収益基盤の一つになっているのは間違いありませんが、会社全体を支えられるほどの事業規模はありません。
朝日新聞社の2023年3月期の不動産事業のセグメント利益率は19.2%にものぼります。メディア・コンテンツ事業は70億円のセグメント損失を出しました。なお、メディア・コンテンツ事業が利益を出していた2022年3月期の利益率はわずか1.9%。不動産事業の経営効率が高いのは間違いありません。
しかし、不動産の売上規模は350億円程度であり、利益は66億円程度。この事業規模で売上2000億円を超えるメディア事業を長期にわたってカバーするのは難しいでしょう。
朝日新聞社は2019年3月期の売上高が3700億円を超えていましたが、2023年3月期には2670億円まで縮小。わずか4年で1000億円が吹き飛びました。
◆Z世代はむしろ新聞の情報を信頼している
新聞社が、何らかの手を打つ必要があるのは明白です。
新聞の発行部数の落ち込みは、Webの発達による情報の取得単価の低下にあります。多くのニュースは無料で手に入るようになり、一般家庭では新聞に月数千円の支払いをすることをためらうようになったのです。
情報の取得単価が下がって新聞社の経営が傾いたのであれば、資本主義の原理として淘汰されるのが自然だと考えるかもしれません。