しかし、新聞社は世界中に築いたネットワークを武器に、正確性の高い情報を発信しています。社会的な価値が極めて高いのです。自民党の裏金問題で、特ダネを次々と明るみに出したのはやはり新聞社でした。

 新聞通信調査会は世代別にメディアの信頼度を調査しています(「メディアに関する全国世論調査」)。それによると、18歳から40代までで、最も信頼するメディアとして挙がったのが新聞でした。50代以上はNHKテレビと回答しています。

 新聞を購読しているのはシルバー層ですが、意外にも若い世代に信頼されてもいるのです。この調査を見ると、インターネットに慣れ親しんでいる世代ほど、新聞への信頼度が高く、価値ある存在であると認知されていることがわかります。

◆「新聞社主導のポータルサイト」は失敗続き…

 スマートフォンの普及によって、情報の取得元は「Yahoo!ニュース」などのポータルサイトが主体となりました。かつて、新聞社はポータルサイトに脅威を感じ、自ら立ち上げようとした時期がありました。

 2007年には朝日新聞社、日本経済新聞社、読売新聞グループが共同でポータルサイトを立ち上げると発表。2008年1月に「新s(あらたにす)」というサイトを開設しました。しかし、2012年2月にサービスを終了。現在は学生向けのサイトとして細々と運営を継続しています。

 その他、52の新聞社と共同通信の「よんななニュース」などがありますが、新聞社主導のポータルサイトは大手プラットフォーマーの牙城を崩すことができません。

 これから共同で新たサイトを立ち上げ、デジタルの収益性を上げるのは難しいでしょう。

 新聞社がこれから辿る道は大きく2つに分かれると考えられます。1つは大規模な再編。もう1つは緩やかな事業規模の縮小です。

 可能性として高いのは前者でしょう。すでにアメリカで前例があるからです。再編にも2つのパターンがあります。経営統合と大手プラットフォーマーなどによる買収です。

◆将来的には経営統合による効率化が必要に?

 2019年末にニューメディア・インベストメント・グループと新聞大手ガネットが合併。600紙以上を抱える全米最大の新聞社が誕生しました。

 アメリカの新聞発行部数の推移は日本と全く同じ状況で、縮小の一途を辿っていました。

 新聞社が経営統合して拠点の合理化を進めれば、経営効率は上げられます。取材活動が一括で行えるため、人員も軽くすることができるでしょう。

 買収例がワシントン・ポスト。アマゾンのジェフ・ベゾス氏が2億5000万ドルを投じて取得しました。オーナーが変わってからは、広告収入やサブスクリプション収入が劇的に増え、早期立て直しを行ったことで知られています。

 大手ポータルサイトは、ユーザーから情報の信頼性を問題視されることが少なくありません。しかし、プラットフォーマーが自前で記者を育て、情報ネットワークを確立することには消極的でした。

 情報の精度や信頼度を高めるという観点から、プラットフォーマーが新聞社を取得する意味は大いにあります。

 新聞社が緩やかに事業規模を縮小しつつ、業界紙のように特定の読者層に最適化。事業規模を縮小しつつ生き残りの道を見つけることもできるでしょう。しかし、それでは社会的な価値は低下してしまうのです。

<TEXT/不破聡>

【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界