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 ニュースなどで頻繁に取り上げられる「あおり運転」。被害者の精神的苦痛は深刻であり、トラウマにもなりかねない。
 自動車損害保険を扱うチューリッヒ保険は、『2023年あおり運転実態調査』を実施。あおり運転をされたことがあるドライバーは53.5%であった。約半数のドライバーが被害経験を持っており、現在も社会問題となっている。

 今回は、あおり運転に対する2人の逆転劇をお送りする。

◆クラクションの鳴らし方で“あおり運転”だと気づいた

 時田直美さん(仮名・30代)は、パートを終えて自宅に帰ろうといつもの道を走っていたときに、あおり運転に遭遇した。

「最初は、まったく“あおられていること”に気づけませんでした」

時田さんは、後ろを走る白い車が、なんとなく車間距離が近いな……と思うくらいだったそうだ。道路は片道1車線で、時田さんの前にも1台の軽トラックが走っていたため、スピードを上げることができなかった。

「私が“後ろの車おかしいな”と気づいたのは、軽トラが横断歩道で一時停止したときです。後ろから荒々しいクラクションの音が聞こえて、かなりイライラしているのがクラクションの鳴らし方でわかりました」

 軽トラックが走り出し、時田さんも続いて走り始めると、当然のように後ろの車もついてきたという。そして、徐々に“あおり”がエスカレートしていくことに……。

「一体何をしたいのかわかりませんでした。センターラインを越えて蛇行運転を始め、『早く行けよ』と言わんばかりのあおり具合だったんです」

「もう勘弁してよ!」と思いながらも、自宅まであと500メートルのところにあるコンビニに差しかかったところで、軽トラがコンビニの駐車場に入ったそうだ。

「つまり、先頭が私に……。スピードを上げるべきか、このまま知らないふりして走ろうかと悩みましたが、だんだん“あおり男”に腹が立ってきました」

◆“取り締まりが強化される日”を把握していた

 時田さんの自宅まで残り100メートルのところで、「もうこの辺でいいか」と時田さんは道路の脇に、ハザードランプをつけて停車した。そして、“待ってました!”と言わんばかりのものすごいスピードで、白い車は追い抜いていったという。

「その瞬間でした。大きな笛とともに道の真ん中で、停車を促す警察官が現れたんです」

「よかった! まだいてくれた」と、時田さんは笑みがこぼれた。

「実は、知っていたんですよね。その日は30日で、ゼロがつく日はスピード違反の取り締まりが強化される日でした。私の自宅前には大きな空き地があるのですが、取り締まりをする定番の場所なんです。パートに行く前に、すでに警察官が準備をしていたので把握していました」

 しかし、「こんなにうまくいくなんて思っていなかった」と、時田さんは振り返る。“あおり男”がゆっくりと空き地に入っていく姿をしっかりと見送り、最高の気分で帰宅することになった。

◆「後ろの車、さっきからついて来てね?」

 会社の夏季休暇に友人たちと長野県にある別荘に行った帰りに、あおり運転に遭遇してしまったという小林たかおさん(仮名・20代)。

「帰り道はみんな疲れていたため、事故を起こさないように交代で運転しながら東京に向かっていました」

 山道を抜けて高速に入り、他愛のない会話をしながら順調に運転をしていた。とくに大きなトラブルもなく、埼玉に入ったところでサービスエリアに寄り、残りの運転を小林さんが任されることになった。

「異変に気づいたのは、私が運転をはじめてから15分くらい経ったころでした。助手席に乗る友人が、『なぁ、後ろの車、さっきからついて来てね?』と言ったんです。後ろを確認してみると、確かに白い車が車間距離を詰めて走っていました」