【可決・成立】子どもを教育現場の性被害から守る!「日本版DBS」について経緯〜内容まで解説
昨今子どもに関して話題になっている「DBS」をご存じでしょうか。DBSはイギリスの犯罪歴照会制度で、子どもに接する仕事の人に性犯罪歴がないか確認する制度です。このイギリスの制度を参考にした「日本版DBS」の導入のための法案が2024年5月23日に衆議院本会議で可決、2024年6月18日に参議院本会議で可決、19日に成立しました。今回は5月24日に行われた認定NPO法人フローレンス(以下「フローレンス」)が実施したメディア向け情報共有会の内容を基に、この「日本版DBS」について解説します。
2020年のベビーシッターによる小児わいせつ事件
2020年にベビーシッターによる小児わいせつ事件が相次ぎました。当時、被害者の子どもは判明しているだけでも5〜11歳の男児20人。その後は世論も大きく動き、当事者団体などの声も相まって、2024年5月23日に日本版DBS関連法案が衆議院本会議で可決。2024年6月19日に参議院本会議で成立となりました。法の略称は「こども性暴力防止法」となります。
子どもは自分が性被害に遭ったことを認識できないため、明るみに出ていない犯罪もあるでしょう。知らない人だけではなく、学校や学童保育などにおける身近な大人からの性被害もあり、早急に法整備を整える必要性が叫ばれてきました。
これまでの日本の法律や制度では性暴力から子どもを守れなかった
これまで日本では、子どもの性被害を防ぐ法律や制度がありませんでした。たとえば教員や保育士がわいせつ行為を起こしても、復職が可能だったのです。ここ数年で制度の厳罰化が実現しているものの、まだまだ不十分という課題がありました。
また学校や認可保育園以外の子どもに関わる事業者については性犯罪者参入の規制がなかったため、わいせつ教員等の横滑りを防ぐことができませんでした。つまり学校での性犯罪によって教員免許が取消となり復職ができなくても、学童保育や学習塾、ベビーシッター、スポーツクラブには規制なしで就職ができてしまったのです。事業所側としても採用時にこれまでの犯歴を確認する仕組みがないため、問題を察知する方法がありませんでした。
「日本版DBS」児童への性暴力を防止するための4つのこと
「日本版DBS」は、学校、保育園等及び認定を受けた学童保育、学習塾に対して児童への性暴力を防止するための措置を講じることを義務付ける制度となっています。
具体的には、次の4つが掲げられています。
1.学校設置者等及び民間教育保育等事業者の責務
学校や民間の教育組織は、児童対象性暴力等の防止に努め、被害児童等を適切に保護する責務があることを規定。
2.学校設置者等が行うべきこと
教員等への研修や 児童等との面談、児童等が相談を行いやすくする(相談体制)、児童への性暴力の発生が疑われる場合の調査、被害児童の保護・支援などを行う。
3.民間の教育保育事業者の認定、認定事業者が行うべきこと
内閣総理大臣が、児童への性暴力防止の対策を行っている民間事業者を認定、公表する。民間事業者は学校と同等の対策を行う。
4. 特定性犯罪前科の有無の確認
働く人の犯罪前科有無の確認ができるようにする。性犯罪前科がある場合は教育や保育等の業務に従事させない。
犯歴の取り扱いはとてもセンシティブのため、確認の申請には法務省、こども家庭庁も関わりながら事業者が本人の人権に考慮しながら確認を取っていくそうです。
子どもを性暴力から守るために家庭内でできることは
フローレンスは2017年から「子どもの性被害を防ぐための法案が日本にも必要」として、日本版DBSの必要性を政府にも訴えてきました。日本版DBSは子どもを性被害から守る社会への一歩となることが期待されています。しかしフローレンスの代表理事である赤坂緑さんは「法だけに頼るのではなく、大人と子どもそれぞれへのハラスメント研修も必要」と語ります。
親が子どもに、日本版DBSの説明だけでなく、性暴力から自分自身を守るための方法を話すことはとても大切です。プライベートゾーンはたとえ身近な人であっても見せても触らせてもいけないことを子どもに伝えて、嫌なことをされたら「嫌」とハッキリ言えるようにすること。これは大人としての役目でしょう。
また日本版DBSは子どもだけでなく、働く人をも守る制度として期待されています。先述の小児わいせつ事件によって真面目に働いている大半の男性保育士や男性シッターは、偏見が助長され、依頼が減ってしまっているそうです。子どもたちが知識を持つことで、身近な先生を信頼して安全な環境で過ごすことができ、不要な偏見や差別を生まない環境を作り出せるはず。
こども性暴力防止法は今後、公布から2年半以内に施行、施行から3年で見直しというスケジュールとなります。わが子を守るためにも、親として正しい知識と関心を持っておきたい日本版DBS。まずは概要と現在の状況を知っておき、今後の動向を追っていきたいですね。
※法案およびフローレンスによる情報共有会の内容は2024年5月時点のものです
参考:4割強のママが「知らない」。教育者による性犯罪防止のための制度「日本版DBS」の認知度
取材、文・AKI 編集・編集部 イラスト・猫田カヨ
2020年にベビーシッターによる小児わいせつ事件が相次ぎました。当時、被害者の子どもは判明しているだけでも5〜11歳の男児20人。その後は世論も大きく動き、当事者団体などの声も相まって、2024年5月23日に日本版DBS関連法案が衆議院本会議で可決。2024年6月19日に参議院本会議で成立となりました。法の略称は「こども性暴力防止法」となります。
子どもは自分が性被害に遭ったことを認識できないため、明るみに出ていない犯罪もあるでしょう。知らない人だけではなく、学校や学童保育などにおける身近な大人からの性被害もあり、早急に法整備を整える必要性が叫ばれてきました。
これまでの日本の法律や制度では性暴力から子どもを守れなかった
これまで日本では、子どもの性被害を防ぐ法律や制度がありませんでした。たとえば教員や保育士がわいせつ行為を起こしても、復職が可能だったのです。ここ数年で制度の厳罰化が実現しているものの、まだまだ不十分という課題がありました。
また学校や認可保育園以外の子どもに関わる事業者については性犯罪者参入の規制がなかったため、わいせつ教員等の横滑りを防ぐことができませんでした。つまり学校での性犯罪によって教員免許が取消となり復職ができなくても、学童保育や学習塾、ベビーシッター、スポーツクラブには規制なしで就職ができてしまったのです。事業所側としても採用時にこれまでの犯歴を確認する仕組みがないため、問題を察知する方法がありませんでした。
「日本版DBS」児童への性暴力を防止するための4つのこと
「日本版DBS」は、学校、保育園等及び認定を受けた学童保育、学習塾に対して児童への性暴力を防止するための措置を講じることを義務付ける制度となっています。
具体的には、次の4つが掲げられています。
1.学校設置者等及び民間教育保育等事業者の責務
学校や民間の教育組織は、児童対象性暴力等の防止に努め、被害児童等を適切に保護する責務があることを規定。
2.学校設置者等が行うべきこと
教員等への研修や 児童等との面談、児童等が相談を行いやすくする(相談体制)、児童への性暴力の発生が疑われる場合の調査、被害児童の保護・支援などを行う。
3.民間の教育保育事業者の認定、認定事業者が行うべきこと
内閣総理大臣が、児童への性暴力防止の対策を行っている民間事業者を認定、公表する。民間事業者は学校と同等の対策を行う。
4. 特定性犯罪前科の有無の確認
働く人の犯罪前科有無の確認ができるようにする。性犯罪前科がある場合は教育や保育等の業務に従事させない。
犯歴の取り扱いはとてもセンシティブのため、確認の申請には法務省、こども家庭庁も関わりながら事業者が本人の人権に考慮しながら確認を取っていくそうです。
子どもを性暴力から守るために家庭内でできることは
フローレンスは2017年から「子どもの性被害を防ぐための法案が日本にも必要」として、日本版DBSの必要性を政府にも訴えてきました。日本版DBSは子どもを性被害から守る社会への一歩となることが期待されています。しかしフローレンスの代表理事である赤坂緑さんは「法だけに頼るのではなく、大人と子どもそれぞれへのハラスメント研修も必要」と語ります。
親が子どもに、日本版DBSの説明だけでなく、性暴力から自分自身を守るための方法を話すことはとても大切です。プライベートゾーンはたとえ身近な人であっても見せても触らせてもいけないことを子どもに伝えて、嫌なことをされたら「嫌」とハッキリ言えるようにすること。これは大人としての役目でしょう。
また日本版DBSは子どもだけでなく、働く人をも守る制度として期待されています。先述の小児わいせつ事件によって真面目に働いている大半の男性保育士や男性シッターは、偏見が助長され、依頼が減ってしまっているそうです。子どもたちが知識を持つことで、身近な先生を信頼して安全な環境で過ごすことができ、不要な偏見や差別を生まない環境を作り出せるはず。
こども性暴力防止法は今後、公布から2年半以内に施行、施行から3年で見直しというスケジュールとなります。わが子を守るためにも、親として正しい知識と関心を持っておきたい日本版DBS。まずは概要と現在の状況を知っておき、今後の動向を追っていきたいですね。
※法案およびフローレンスによる情報共有会の内容は2024年5月時点のものです
参考:4割強のママが「知らない」。教育者による性犯罪防止のための制度「日本版DBS」の認知度
取材、文・AKI 編集・編集部 イラスト・猫田カヨ