事件やトラブルなどが相次ぎ、社会問題化している「トー横」。その「トー横」にたむろする「トー横キッズ」に暴力団が忍び寄っている。取材したテレビ朝日社会部の阿部佳南記者に実態を聞いた。

【映像】若者が座る地面に堂々とアルコール…トー横周辺の様子

━━「トー横」とはどんな場所なのか?

「新宿歌舞伎町の複合商業施設『新宿東宝ビル』周辺の広場で、家庭や学校で居場所を見つけられない若者たちが集まってくる場所だ」

━━その「トー横」にどのような変化が見られるのか?

「トー横広場は新宿区などによってバリケードが置かれ、無断で立ち入れない状況になっている。その代わりにキッズたちが付近の公道になだれ込み、一般歩行者の迷惑になることも。未成年とみられるキッズの飲酒も相変わらずで、道路に空き缶が散乱している。これまでと変わったのは暴力団組員の姿が増えていることだ」

━━暴力団組員は「トー横」で何をしているのか?

「暴れるなどの目立つ行動をしているわけではない。“見回り”という名目でトー横エリアを歩き回ったり、キッズやその取り巻きに声をかけたりしている。ただ、深夜11時以降に徘徊をしている未成年に対する一斉補導などの際には、警察との間に入って未成年を庇ったり逃がそうとしたりして、キッズに『恩を売っている』節があるようだ」

━━なぜ組員はキッズを庇うのか?

「キッズを“手なずけるため”と見られており、暴力団の存在感やキッズへの影響力を上げようとしているとの見方もある。一部の捜査員は暴力団がトー横における『顔役』の座を狙っているのでは、とみている」

━━顔役とはどういう意味か?

「顔役とはトー横界隈で名の通った人のことを指す。これまで顔役として有名だった『ハウル』は3年ほど前に活動していて、家出をした少年少女に食事を提供したり、相談にのったりして信頼を集めていた。また、『トー横四天王』や『トー横の帝王』などを自称して注目を集める人物もいた」

━━「ハウル」や「トー横の帝王」はなぜ顔役を買って出たのか?

「捜査員は彼らがある種『インフルエンサー』としての価値を高めようとしたのではと見ている。『トー横の帝王』などはSNSで動画配信しており、トー横で名前が知れ渡ればフォロワーが増えるという考えがあったのではないか。しかし、例えば『ハウル』こと小川容疑者は未成年にみだらな行為をしたとして逮捕され、また今月6日にも『トー横の元帝王』を名乗る男が未成年への不同意性交の疑いで逮捕された。有名になればなるほど、犯罪に手を染めたときに逮捕される可能性が高くなり、現在は顔役を自称する人はいない」

━━そこに割って出てきたのが暴力団組員ということか?

「取材中も入れ墨のある人が周辺に多くおり、何度も周回していた印象がある。とはいえ、組員の狙いはこれまでの『ハウル』などとは全く異なると言われている。存在感を高めることでキッズとの“緩いつながり”や匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)のような形を作り、最終的には彼らを金儲けや犯罪に利用しようとしている可能性があると見られている」

━━「トクリュウ」のような形とはどういうもの?

「連続強盗事件『ルフィ事件』で有名になった『トクリュウ』は、SNSなどで人を集めて犯行を実行し、離合集散を繰り返す組織だ。関係性が希薄であるため、1人を逮捕しても全容解明が困難となる。トー横でも同様のネットワークを持てば、犯罪組織は犯行のたびにキッズを呼び出して使い回すことができる」

━━実際に暴力団組員が子どもたちを手なずけて巻き込んでいる具体的な話はあるのか?

「現時点で表面化している問題はない。ただ、起きてからでは手遅れと捜査員は見ており、今後、未成年を風俗店で働かせたり、特殊詐欺の受け子やかけ子などの犯罪の末端役をさせる可能性は十分考えられる」

━━警視庁はどのような対策をしているのか?

「先月、トー横での一斉補導を取材中の記者に言いがかりをつけて詰め寄ったとして、暴力団組員の男ら2人を都の迷惑防止条例違反で逮捕した。男らは記者に対して『俺たちを撮ってるんだろ』『消せよ』などと言いがかりをつけ、スマホのカメラを突き付けていた」

━━トー横で行われている対策にはどのようなものがあるのか?

「広場には新宿区によって柵が設置されトー横には居座れない状態になっているが、歌舞伎町内の規制が緩い場所に散らばっているため、広場の封鎖は成功していない」

━━トー横問題の解決は難しいのか?

「警視庁は引き続き『補導』と『取り締まり』の両輪で対策を強化したい構えだ。取材中の記者への粗野な言動での逮捕は、警視庁が多角的な視点から『トー横での犯罪行為を野放しにしない』という強いメッセージと感じられる」

(ABEMA/倍速ニュース)