パナソニック エレクトリックワークス社と和歌山市は、「ZEBおよびウェルビーイングの普及拡大に向けた連携協定」を締結しました。ZEBとは、ネットゼロエネルギービルのことで、消費するエネルギーを実質ゼロに近づけた建物のこと。ウェルビーイングは快適な状態を表す言葉です。

 

今回の協定は、脱炭素化を進めつつ、和歌山市の「働きたい、住みたい街づくり」を推進するための取り組みとなっています。その協定締結式を取材しました。

 

ZEBの重要性と、パナソニックの強みとは?

ZEBに関して、パナソニックはこれまでも、大阪府、京都市、鳥栖市との協定を締結し、自治体との連携を強めてきました。和歌山市との協定締結は4例目となります。

 

これまで同社が連携協定を締結してきた自治体において、多くの二酸化炭素を排出しているのが、産業部門です。和歌山市の場合も、産業部門からの排出が全体の80%を占めています。

 

そんな状況下において脱炭素化を進めるためには、空調、照明などで多くの電力を消費する建築物の省エネ化の必要性が高くなります。それを実現するのが、ZEB化の技術です。

 

ZEB化においては、太陽光発電などによる創エネ、高効率な空調・照明機器の導入などによって、建物の消費エネルギーを抑えていくことになります。しかしこれには、高い断熱性や気密性などが求められるため、新築でないとやりにくいのが現状でした。

 

そこでパナソニックは、一定の条件を満たす既築の建物をZEB化するノウハウを開発。建物の骨組み部分に手を加えずともZEB化することができるので、改修コストを抑えながら脱炭素化を進められます。パナソニックはこのノウハウを強みとして、自治体との連携を強めながら、全国への普及を進めています。今回の連携協定締結もその一環となります。

 

ZEB化に関する協定として、ウェルビーイングを初めて盛り込む

パナソニックと和歌山市の間で締結された連携協定には、ZEB化する物件を選定するための調査や計画の立案、セミナー等の開催のほか、ウェルビーイング推進についての内容が盛り込まれています。これまでパナソニックが各自治体と結んできた協定の内容は、ZEB化の推進に関することのみ。ウェルビーイングにまで言及されたのは、今回が初です。これには、和歌山市の街づくりへの思いが込められています。

 

「脱炭素化は喫緊の課題だが、それと同時に働きたい環境を整えることも必要だと思っている」と語るのは、尾花正啓(まさひろ)和歌山市長。ZEB化と同時にウェルビーイングにも配慮した建物改修を進めることで、快適なオフィス環境を整え、和歌山市が掲げる「働きたい、住みたい街づくり」を実現しようという算段です。

↑尾花正啓和歌山市長

 

近年、和歌山市は市内への5つの大学の誘致を進めてきました。今回の協定締結は、これらの大学や和歌山大学の卒業生に、和歌山で働くことを選んでもらうための取り組みでもあります。

 

パナソニック創業者の松下幸之助は和歌山市出身

ちなみに和歌山市は、パナソニックの創業者・松下幸之助の出身地(松下幸之助の出生地は海草郡和佐村千旦ノ木で、現・和歌山市禰宜)。出身地にかける彼の思いは強く、和歌山市立和歌山体育館など、多くの建物を市に寄贈してきました。彼は、和歌山市の名誉市民にもなっています。

↑松下幸之助が和歌山市に寄贈した茶室「紅松庵」の内部。2024年に寄贈後50周年を迎えました

 

和歌山市の尾花市長は「連携協定のパートナーにパナソニックを選んだ理由のひとつは、松下幸之助とのゆかり」と語っています。今回の連携協定がもたらす成果は、パナソニックと和歌山市の両者にとって、実効性だけにとどまらないものがありそうです。