周囲の騒音を内蔵するマイクで拾い、逆位相の波形をぶつけることで騒音を打ち消す「ノイズキャンセリング」を搭載するイヤホンやヘッドホンが近年増えています。また、AirPods Proなど一部のイヤホンには、装着者が会話中であることを感知して音量を自動的に調節する機能も搭載されています。ワシントン大学の研究チームが、「ヘッドホンを装着したユーザーが会話相手を数秒見つめて登録するだけで会話相手の音だけを拾うシステム」を開発したと発表しました。

Look Once to Hear: Target Speech Hearing with Noisy Examples - CHI '24

https://programs.sigchi.org/chi/2024/program/content/147319

AI headphones let wearer listen to a single person in a crowd, by looking at them just once | UW News

https://www.washington.edu/news/2024/05/23/ai-headphones-noise-cancelling-target-speech-hearing/

開発されたヘッドホンシステムがどういうものなのかは以下のムービーを見るとよくわかります。

AI headphones filter out noise so you hear one voice in a crowd - YouTube

これが新しいシステムを搭載したヘッドホンです。



ノイズキャンセリング機能を搭載したヘッドホンの両耳部分に、小型マイクとボタンがついています。



使い方は非常に簡単。まずは会話相手を真正面に見つめます。



会話相手を見つめたまま、イヤーカップにとりつけられたボタンを押します。声の登録はこれでOK。



仕組みは非常にシンプルで、会話相手を真正面に見つめると、相手の口から左右のイヤーカップに取り付けられたマイクまでの距離が等しくなります。



ボタンを押した時点で内蔵されているAIが、両耳のマイクから等しい距離で発している声を「会話相手の声」と断定し、その波形を分析します。あとはその波形以外の音をキャンセルすれば、会話相手の声だけを拾うことができるというわけです。



このシステムは、以下のように噴水の音など騒音が多い場所で活躍します。



相手をじっと見つめてボタンを押すだけで、相手の声が登録されて、聞き取りやすくなります。ただし、登録できるのは一度に1人までなので、多人数での会話への応用は記事作成時点だと不可能です。



このAIヘッドホンシステムは記事作成時点では市販化されておらず、2024年5月14日に開催された学術イベントで概念実証実験が公開されたばかり。研究チームは、将来的にワイヤレスイヤホンや聴音機に実装することを目標としています。