ウェアラブルAIデバイス「Ai Pin」不振でHumaneが身売り先を探しているとの報道
2024年4月に、胸に留めた端末から手のひらに映像を投影して使用するAI搭載ウェアラブルデバイス「Ai Pin」がリリースされました。スマートフォン市場を席巻すると鳴り物入りで登場したAi Pinですが、売上が振るわず早くもメーカーのHumaneが事業の売却先を模索していると報じられています。
Wearable AI Startup Humane Is Said to Explore Potential Sale - Bloomberg
Humane is looking for a buyer after the AI Pin’s underwhelming debut - The Verge
https://www.theverge.com/2024/5/21/24162185/humane-seeking-acquisition-rumor-ai-pin
Appleの元社員によって設立されたスタートアップ・Humaneが手がけた「Ai Pin」は、名前の通りクリップとマグネットで胸に着用するウェアラブルデバイスです。ディスプレイを持たない代わりにレーザーで手のひらに映像を投影することが可能なほか、操作はマイクを介した音声入力やタッチパッドによるタッチ入力、3D深度カメラを使ったジェスチャー入力に対応しています。
AI搭載で手のひらに画面投影可能なクリップ型ウェアラブルデバイス「Ai Pin」をHumaneが正式発表 - GIGAZINE
海外メディアのBloombergは2024年5月22日に、Ai Pinの売上が振るわないことから、Humaneが事業の買い手を探すために金融顧問との協議を開始したと報じました。
非公開の情報であることを理由に匿名で取材に応じた関係者の話によると、Humaneは7億5000万ドル(約1175億円)から10億ドル(約1568億円)での売却を望んでいるとのこと。交渉はまだ初期段階であるため、合意に至らない可能性もあります。
スマートフォンに代わるウェアラブルデバイスとしての注目を集めたAi Pinは、CosmOSという独自のOSを搭載しており、AIモデルとのネットワーク接続により音声クエリに応答したり、内蔵カメラが撮影したものをAIが分析したりする機能を備えていますが、使用するには通信費として月額24ドル(約3700円)のサブスクリプション料金が必要です。
また、本体もEclipseカラーが699ドル(約10万9600円)、LunarとEquinoxカラーが799ドル(約12万5300円)と、例えばApple Watch Series 9のアメリカでの販売価格である400ドル(約6万2700円)と比べても高価なことが発売前から指摘されてきました。
さらに、リリース後には信頼性と実用性に問題があるとして酷評されたとBloombergは報じており、Humaneはバッテリー寿命、デバイスの過熱、精度、応答時間といった問題に対応していくと述べています。加えて、2025年5月15日にはより高速で回答の精度も高いGPT-4oへのアップグレードも発表されました。
Hi everyone. We just shared details on our first update for Ai Pin and CosmOS. We've also outlined the major focus areas for continued improvement.
Priority Areas:
- Improving battery life and thermal management
- Reducing response latency
- Fine-tuning accuracy for a smoother…— Humane (@Humane) April 23, 2024
BloombergはHumaneにコメントを要請しましたが、回答は得られませんでした。
Bloombergの報道を取り上げたIT系ニュースサイトのThe Vergeは、「Humaneが希望している売却額を考えると、買い手候補はかなり限られるように思えます。Amazon、Apple、Google、Meta、MicrosoftなどはいずれもAI分野に大きく乗り出していますが、Humaneがその取り組みにどれほどの価値をもたらすかは未知数だからです」と述べました。