山陰新幹線は「すごく疑問」、いっそ「現代のSL」を 立憲・亀井氏が鉄道めぐり持論
立憲民主党の亀井亜紀子衆院議員が2024年5月22日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で開いた記者会見で、大阪-鳥取-松江-下関を結ぶ「山陰新幹線」の構想について、「すごく疑問がある」と述べた。
理由のひとつとして挙げたのが、新幹線の開通にともなってJRから経営が切り離されることが多い「並行在来線」の問題。沿線住民にとって「毎日新幹線に乗るわけではないので、ローカル線がなくなることの方が困る」などと指摘した。新幹線の代わりに、現代版の蒸気機関車(SL)を走らせるなどして山陰本線を活用した方が「かえって地方振興になるのでは」などと持論を展開した。
国鉄民営化も「検証すべき問題」
4月28日に投開票された衆院島根1区補選での勝因が、主な記者会見のテーマだ。亀井氏が当選した島根1区は、23年11月に死去した細田博之・前衆院議長が地盤にしていた「保守王国」。自民党派閥をめぐる「裏金」問題や、細田氏と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関係をめぐる疑惑など、自民党にとって逆風になった。それ以外に亀井氏が選挙戦で訴えていたポイントのひとつが、自民党政権では、島根県が「どうも発展している感じがしない。なぜ衰退しているのだろうか」という点だ。
選挙戦では、線路管理と列車運行の事業者を分ける「上下分離」方式を導入するなどして、県内を走る山陰本線や木次(きすき)線を守ることも訴えた。記者会見では、
「国鉄の民営化は、成功したと......評価されているんでしょうか?ただ、今、島根だけじゃなくて、北海道の方も皆、地方ローカル線の存続問題を抱えている。これも検証すべき問題」
とも話した。
では、国鉄時代に打ち出された山陰新幹線については、どう考えるか。1973年に構想が打ち出された5つの整備新幹線(北海道(青森〜札幌)、東北(盛岡〜青森)、北陸(東京〜長野〜金沢〜大阪)、九州鹿児島ルート(博多〜鹿児島)、九州長崎ルート(博多〜長崎))のネットワークは完成に近づきつつある。だが、それ以外に「基本計画路線」が11路線もあり、そのひとつが山陰新幹線だ。
石破茂氏「日本は人口半分。そのときにフル規格の新幹線走らせてどうすんの?」
政界屈指の「鉄オタ」として知られ、衆院鳥取1区選出の自民党の石破茂元幹事長は、23年12月収録のJ-CASTニュースのインタビューで、
「だって山陰新幹線って、今のままいけば22世紀ですよ?そのころ日本は人口半分。そのときにフル規格の新幹線走らせてどうすんの?という話です」
などとして、「フル規格」ではなく、山形新幹線、秋田新幹線のような「ミニ新幹線」を整備したり、在来線を改修して最高速度を150キロまで上げたりする形に方針転換すべきだとしていた。
山陰新幹線について、フル規格で整備を進めるべきか問われた亀井氏が挙げたのが並行在来線の問題だ。
「それ(並行在来線が)が(JRから)切り離されて、最終的にそれが廃線になっていく。そこに生活している人は毎日新幹線に乗るわけではないので、ローカル線がなくなることの方が困る、という問題がある」
その上で、人口減を背景に、山陰新幹線の整備には「すごく疑問がある」とした。
「今、人口が減っている中で、山陰新幹線を通すべきなのかというのは、すごく疑問があるし、新幹線......仮に通ったとしても車両がすごく短い、そういうものにせざるを得ないだろうと考えるので、ちょっと懐疑的です」
「山陰本線にSLを走らせる会」も立ち上げる
実は亀井氏は鉄道開業150周年の「鉄道の日」にあたる22年10月14日、市民団体「山陰本線にSLを走らせる会」を立ち上げている。英国では鉄道愛好家が資金を集めて08年にSL「トルネード」が製造され、最高時速約160キロを記録している。亀井氏のウェブサイトによると、「走らせる会」は、「トルネード」をモデルに新山口駅から米子駅まで次世代SLを導入することが目的だ。
記者会見でも、
「こういう現代のSLですとか、違う発想で、(山陰)本線を生かした方が、かえって地方振興になるのでは」
などと話した。
(J-CASTニュース編集委員 兼 副編集長 工藤博司)