北朝鮮の女性軍人 ©Roman Harak

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爆弾発言がもたらした動揺が止まらない。

金正恩総書記は今年1月、朝鮮労働党第14期第10回最高人民会議の施政演説で、次のように述べた。

北と南が同族であるかのようにまどわす残滓的な単語を使用しないということと、大韓民国を徹頭徹尾、第一の敵国、不変の主敵と確固と見なすように教育を強化するということを当該の条文に明記するのが正しいと思う。

この他にも、憲法にある「北半部」「自主、平和統一、民族大団結」という表現が今や削除されなければならないと思う。

私は、これらの問題を反映して共和国憲法が改正されなければならず、次回の最高人民会議で審議されなければならないと思う。

もはや韓国は統一の対象ではなく、主敵であるといういきなりの宣言に、北朝鮮国内では大きな動揺が走っている。デイリーNK編集部は、国境に近い地域に住む一般女性のAさんと、朝鮮労働党の幹部であるBさんにインタビューを行った。

Aさんは、北朝鮮の今回の宣言により、南北関係がさらに緊張するのではないかと懸念を示した。

「北南(南北)関係が悪化すればするほど、住民に対する統制が厳しくなり、軍事力強化のために国民が苦しい生活に絶えなければならなくなる。少なくとも南北関係が悪化しないことを願う」

そして、南北関係を改善して、韓国から食糧援助を取り付けてほしいと望んだ。

「飢餓に苦しむ人が多すぎる。できれば南朝鮮(韓国)との関係を良くして、食糧や、人々が生活するために必要なものを支援してほしい」

一方で、自らを「忠誠心が高い」とする幹部のBさんも、今回の宣言には批判的だ。

「自分もそうだが、周りにも忠誠心や党性(忠誠心)の高い幹部が多い。しかし、(同じ)民族ではないと言っても、一瞬のうちに民族性が消えるものではないと思っている」

統一の否定については両者とも意見を同じくしたが、脱北者についての見方は大きく異なる。Aさんにとって韓国はあこがれの対象そのものだ。

「ここ(北朝鮮)では脱北者家族は羨望の対象。南朝鮮に行って行きたいところに行き、着たい服を着て、見たい映画を気兼ねなく思う存分見ることができたらいいのに」

「私たちはここで獣にも劣る生活を送っているが、あそこ(韓国)に行った人たちはここと比べ物にならない良い環境で、関心と支援の中で生きているなんて羨ましい限りだ。なぜ行ける時に行けなかったのかという後悔がある。今は(韓国に行ける)チャンスが来たら、死を覚悟して行かなければならないと思うようになった」

かつて「南朝鮮の子どもたちは米軍に物乞いをして暮らしている」というプロパガンダを信じていた北朝鮮の人々だが、ドラマや映画などの韓流コンテンツを接するようになり、すべて嘘八百であることを知ってしまった。

当局は韓流コンテンツの流通の取り締まりに躍起になっているが、もはや「韓国が自分たちより豊か」というイメージが消えることはないだろう。

一方で幹部のBさんは、脱北者は「裏切り者だ」と切り捨てた。韓国の尹錫悦政権が「北韓離脱住民(脱北者)の日」の制定を進めていることにも首を傾げた。

「反動思想で逃げた者の日を制定したのは、反共和国(北朝鮮)圧殺策動の一環であり、われわれを内部から揺さぶる目的ではないか。独立運動家でもないのに記念日にまでするのはおかしい」

だが、圧倒的に豊かな韓国の現実については否定のしようがないようだ。

(参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為

「南朝鮮が自由国家であり、働いた分だけ稼げる社会であることは幹部たちも知っている。しかし、党は悪い実例だけを総合して人民に講演し、恐怖を煽っている。幹部の中に、そんなことを信じる人はいない。南朝鮮に行けば家とお金をくれることを知らない人はいないだろう。しかし、豊かな暮らしをしている幹部たちは、南朝鮮に行って今と同じように暮らせないなら、わざわざ行く必要はないだろう」

「党から南北統一はあり得ないことで、大韓民国を同族と思わないようにという指示が出された状況で、南からこのような政策が出たことを国民が知れば、憧れが大きくなる危険な思想的要素になるだろう」