3位はホウレン草、2位は春菊、1位は…同じ緑色でも栄養素がケタ違い「老けない最強野菜」の名前
■野菜は「濃い色」を選ぼう
誰しも健康のために野菜を摂らなくてはという意識はあるだろう。しかしいつも同じ野菜、同じ調理法で食べていないだろうか。体をさびさせない抗酸化物質を豊富に含み、老化防止に欠かせない野菜だが、“色の薄い”ものばかり、また少量ではその若返り効果をあまり期待できない。野菜や果物の「濃い色」に、抗酸化成分がたっぷり含まれているからだ。
植物に関する著書を数多く持つ甲南大学名誉教授の田中修氏は「強い太陽が当たる場所で育つ植物ほど、紫外線の害を消すために、より多くのきれいな色素を作って、ますます鮮やかな色になる傾向がある」と説明する。
つまり、野菜や果物自身もまた活性酸素の害から自分の体を守らなければならないという、人間と同じ課題を抱えているのだ。例えば夏が旬のモロヘイヤは、活性酸素を強力に抑える力があり、“野菜の王様”とされる。
「世界三大美女の一人、クレオパトラが美貌を保つために食べていたといわれる野菜です。モロヘイヤはビタミンA、C、Eが、群を抜いて豊富です」
■身体が老けない「赤、緑、黄、紫、黒」
抗酸化物質はビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール、カロテノイドの4つが基本。野菜や果物の鮮やかな色のもとになるポリフェノールやカロテノイドは数千種類も存在するという。そのためポイントは、野菜や果物の種類を多く摂って、少しずつ違う抗酸化物質を取り入れることだ。「色」で判断するとわかりやすい。
見た目と食事の関係に詳しい管理栄養士の望月理恵子氏は、老けないために「赤、緑、黄、紫、黒」の“5色”が重要と話す。
「『赤色』に含まれるリコピンが美白に効き、『緑色』に豊富なβカロテンが肌を丈夫にします。『黄色』には、体内でビタミンA作用を発揮するβカロテン当量が多い。肌にハリをもたせて小皺を目立たなくします。『紫色』は網膜や水晶体の栄養分になるアントシアニンを多く含んでいるため、“きれいな目”になりますね。食物繊維が豊富な『黒色』は、体内の老廃物を排出します」
図表に赤色、緑色のランキングを挙げるので参照してほしい。そのほかの色のランキングや各解説については『老けない最強食』で詳しく解説している。
■春野菜はβカロテンがたくさん摂れるチャンス
美白【赤色】リコピンが豊富なベスト3
1位 金時人参 15.1mg
2位 ミニトマト 7.97mg
(トマト桃太郎は5.94mg)
3位 スイカ 4.37mg
※4位 ミディトマト3.53mg 5位・トマトファースト(昔ながらのトマト)2.96mg
健康的な肌【緑色】βカロテンが豊富なベスト7
1位 モロヘイヤ 10000μg
2位 春菊 4500μg
3位 ホウレン草 4200μg
4位 小松菜 3100μg
5位 ブロッコリー 900μg
6位 オクラ 670μg
7位 ピーマン 400μg
※ほか)あしたば、よもぎ各5300μg、大根葉3900μg、パプリカ(赤)940μg
※可食部100gあたりの含有量をもとに作成。『老けない最強食』(文春新書)より
前述した5色のうち、一番大切な色を挙げるなら「緑」だ。
ちょうど旬を迎えた菜花(菜の花)やタラの芽、フキノトウなどの春野菜も緑色、つまりβカロテンが豊富。βカロテンを摂取すると、粘膜の再生や潤いにつながり、暖かくなるにつれ強まっていく紫外線から肌を守ってくれる。
■胃もたれを起こしやすい人は生野菜のほうがいい
「シミやシワができるのを予防する作用もあります。βカロテンは油と一緒に摂ることで吸収率が高まるので天ぷらでいただくのもいいでしょう」(望月氏)
また春野菜は“ほろ苦さ”が特徴だが、これは抗酸化成分と同じように、植物が昆虫や動物、微生物から自身を守るために含む微量の毒素「植物性アルカロイド」によるもの。人が摂取すると、「腎臓の機能が促進され、冬に停滞した新陳代謝を活発にし、老廃物を体外に排出するのを助ける作用がある」(同)という。
さて野菜を食べる時は加熱すれば「量」がとれるが、一方で生野菜には「酵素やビタミン」が含まれる。
「年齢とともに体内で酵素が減りがちで、栄養素の消化吸収も衰えます。野菜本来がもつ酵素を生野菜によって摂ることで消化が助けられ、それによって代謝も高まることが期待できるでしょう。特に胸焼けや胃もたれを起こしやすい人、太りやすさを感じている人は生野菜摂取を意識しましょう」
まさしく旬の新玉ねぎや春キャベツも柔らかいので、加熱調理よりも生食向き。生野菜で食べると、熱や水分に溶けやすいビタミンCやビタミンB1、血液の流れを促進する玉ねぎの硫化アリルなどを効率的に摂取できるのだ。望月氏が「ビタミンB1は疲労回復はもちろん、神経を鎮めて質の良い睡眠に働きかける」と補足しつつ、超簡単レシピを紹介してくれた。
■春キャベツをちぎって、ビニール袋に入れるだけ
「薄切りにした新玉ねぎに、酸味を抑えたマイルドな酢を入れて一晩寝かせた『酢玉ねぎ』にするのがお勧めです。玉ねぎのケルセチン(ポリフェノール)が血液の流れをスムーズにし、お酢の酢酸やクエン酸には血圧を上げるホルモン分泌を抑える働きもあって、相乗効果で血管に良い食品といえます。納豆に新玉ねぎをみじん切りにして入れてもいいですね」
キャベツには胃腸の健康を守るビタミンUが含まれるが、これも水溶性のため生で摂取するのがよく、「春キャベツ」が向いている。
「キャベツを一口大にちぎって塩昆布とごま油を一緒にビニール袋に入れて混ぜると、簡単なサラダができます。私はおつまみでよく作りますが、すぐに食べるとシャキシャキ感を楽しめ、一晩おくと漬物のようになりますよ」
新年度を前に不眠には「酢玉ねぎ」、胃腸が弱ったら「春キャベツサラダ」、そしてもう一つ、疲れたら「アスパラガス」と覚えよう。アスパラガス特有のアスパラギン酸(アミノ酸)は疲労回復と滋養強壮の働きがある。また穂先に含まれるルチンも毛細血管を丈夫にするという。これも簡単レシピがある。
「適当な長さ(2〜3cm)に切って塩を振り、ラップに包んで1分加熱。ボウルに汁気をきったツナ、マヨネーズ、粒マスタード、アスパラを入れて混ぜるとアスパラサラダになります。ゆでたパスタにソースとしてかけてもおいしいですよ」
■栄養素を逃がさないためにも時短レシピで
5月以降は目にいい青紫色の天然色素「アントシアニン」を含むパープルアスパラガスも出回る。ほか、ぶどうやブルーベリーなどの赤〜紫色の果実、紫ニンニク、紫玉ねぎ、紫キャベツなどにもアントシアニンは含まれ、抗酸化力が強く目の機能回復の作用がある。
パソコンなどを長時間見ると目がチカチカしたり視界がかすんだりするのは、光を受容するたびに分解・再合成を繰り返す色素体「ロドプシン」の再合成が追いつかなくなるから。アントシアニンは、ロドプシンの再合成を活性化させることがわかっているのだ。
「ただしアントシアニンは水に溶けやすい性質があるため、短時間の加熱で手早く調理するか、煮汁ごと食べられる調理にしたほうがいい」と、望月氏がアドバイスする。
野菜を取り入れようと意気込むと、何だか面倒になってしまうが、基本的には短時間で簡単レシピのほうが野菜の栄養素を摂取しやすい。
管理栄養士で野菜ソムリエ上級プロの岸村康代氏は「ズボラ調理法」と称して、電子レンジでのきんぴら作りを提案している。包丁を使わない「人参のきんぴら」を下記に紹介しよう。
■肌がカサカサの人は人参がオススメ
【「老けない野菜」ズボラレシピ】
【人参のきんぴら風】
人参はビタミンA含有量が野菜の中でトップクラスで、皮膚や粘膜の潤いを保つ。肌がカサカサしている人はビタミンA不足の可能性があるのでお勧めの一品。ビタミンAは脂溶性のため、油と一緒に調理したり、熱を加えると吸収率が高まる。ゴマは小さな粒の中にビタミンや食物繊維、たんぱく質、鉄などの老けない栄養素を多く含む。
材料
・人参……1本(100g程度)
・醤油、砂糖、酒……各大さじ1弱
・ごま……適量
・ごま油……適量
(1)人参をスライサーでカットする
(2)(1)を耐熱容器に入れ、醤油、砂糖、酒をまわしかけ、混ぜる。電子レンジに2〜3分(600Wの場合)かける
(3)器に盛り付け、ごま油をひとまわしし、ごまをふる
調理のポイント
人参は包丁で細めにスライスしてもOK。ごまは皮が硬いため栄養分が吸収されにくい。ひねりつぶしながらふろう
※『老けない最強食』(文春新書)より
■「ちょい足し」で老けなくなる最強食材とは
「手抜き料理のほうがかえって栄養素が残っていることも多いです。美白に効果的な『赤色』の代表格はトマトですが、そこに含まれるリコピンはジュースのほうが体に吸収されやすい。水を飲み続けた群と比較すると、トマトジュースを飲んだ群では12週間後に目の近くのしわが消えたという研究報告があります。トマトジュースを飲むことは野菜の“ちょい足し”にもなりますね」
“ちょい足し”に向いているものには、ほかにもブロッコリーの新芽「ブロッコリースプラウト」がある。老ける元凶・AGEを抑える力がブロッコリー(老けない野菜5位)の7倍というから、サラダに添えれば老けない効果が何倍にもアップする。
「枝豆もお勧めです。コンビニであればそのまま食べられる形で販売されています。枝豆にはビタミンB1、ビタミンC、鉄などが含まれ、疲労対策にも良いです」(岸村氏)
ところで、加熱向きで調理に時間を要する老けない野菜もある。冒頭の「黒色(食物繊維が豊富)」に分類される「ゴボウ」だ。きんぴらゴボウはゴボウをササの葉の形のように薄く削って、ごま油で炒める料理だが、意外にも「加熱するほど抗酸化力が高くなる」と岸村氏。
■“腸の掃除屋”といわれるほど効果絶大
「ゴボウには食物繊維しかないと思われがちですが、クロロゲン酸というポリフェノールも多い。3分より5分、5分より10分と、長い時間炒めたほうがクロロゲン酸が多くなるというデータがあります」
田中氏は「特にゴボウは“腸の掃除屋”」と説明する。
「腸内の不要な物質を便として排出し、老化防止に働きます。また、ゴボウにはアルギニンという成分が多く含まれるのですが、これは元気が出るドリンクに使われる物質。ですから滋養強壮に効果がある料理といったら、私は“きんぴらゴボウ”を挙げますね」
美白に効く赤色、紫外線から肌を守る緑色、目にいい紫色、腸を掃除する黒色。鮮やかな色を意識し、さまざまな野菜を食べよう。すると自然と多様な成分を摂ることになる。そして生と加熱料理の両方の食べ方を取り入れれば、生=酵素&ビタミン、加熱=野菜の量という双方の良さが手に入るのだ。
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笹井 恵里子(ささい・えりこ)
ジャーナリスト
1978年生まれ。「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスに。著書に『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)、『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』(光文社新書)、プレジデントオンラインでの人気連載「こんな家に住んでいると人は死にます」に加筆した『潜入・ゴミ屋敷 孤立社会が生む新しい病』(中公新書ラクレ)など。新著に、『野良猫たちの命をつなぐ 獣医モコ先生の決意』(金の星社)と『老けない最強食』(文春新書)がある。ニッポン放送「ドクターズボイス 根拠ある健康医療情報に迫る」でパーソナリティを務める。過去放送分は、番組HPより聴取可能。
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(ジャーナリスト 笹井 恵里子)