日本では6割の夫婦が陥るといわれるセックスレス。「夫に拒まれる寂しさを外に向けるしかなかった…」と語るのは専業主婦の邦子さん(仮名・60歳)です。レスになってから、夫との関係にどのような変化があったのでしょうか。20年を超えるレス生活のリアルな実態を赤裸々に語っていただきました。

悩んでいるのは私だけ?レスで悩む男性との出会い

結婚一年目で夫と完全レスの生活に陥り、職場では「鉄の女」と呼ばれ、自身の意向に沿わず、バリキャリ人生を歩むことになってしまった邦子さん。時代はネット黎明期。だれにも打ち明けられなかったという孤独や寂しさを、ネットの掲示板書き込んでしまったのが始まりでした。

「別に性的な行為がすごく好きっていうわけじゃないけれど、一緒に住んでいる夫に触れられないというのは寂しいものでした。本人を問い詰めた結果、より深刻化してしまい、私は対処に失敗したんだという後悔だけを抱えていたような状態。“鉄の女”キャラになってしまった職場で、まさかこんな話もできないし、頼れたのは私のことをなにも知らないネット住人だけでした」と邦子さん。

 

不思議なことに、レスに悩む邦子さんの書き込みに反応してきたのは男性ばかり。

「そもそも女性がネットの掲示板を見ていないのか、本当に私の悩みに共感してくれた男性しかいなかったのか、真相はわからないんですけれど、応答してくれた9割以上が男性でした。『好きなのに妻に触れることもできず、結婚生活が苦しい』とか『家にいる時間は、職場よりもキツイ』とか『どうしてしてくれないのか理由がぜんぜんわからない』など、拒否される側に女性とか男性とか関係ないんだなって感じる場面もあるし、女性の意見がほとんど皆無だったことから、私が男性的な思考なのかなって思ったり…。解決はしないけれど、今までと違う角度から悩んだりしていた時期もありました」

こうして、邦子さんは相談の場を掲示板から会員制のコミュニティーへと広げていきました。初めは同じようにレスで悩んでいる女性の話が聞けたらいいなという思いからの書き込みだったといいますが、そこで新しい出会いがありました。

「癒やしがほしかった」同じ悩みを抱えた人と共有する時間

「当時流行していた、会員制のコミュニティーでレスの話題を書きこんでみたのですが、男性からの返事がほとんどでした。たくさん来た返信の多くは、レス同士で直接話しませんか? というお誘いのものばかり。そういう人と会って話をしてみるのもいいかなと思って、何人かと直接会ってみることにしたんです」

あからさまな体目的とは違うけれど、同じレスという状況に悩む男女が直接対面をするわけです。ときには大人の誘いを受けることもあったそう。

「ただ癒やしがほしかったんです。私もお相手も。本当にみんな普通にいい人ばかり。ちょっとお茶して、おしゃべりして、『またときどき会いましょうね』と終わる人がほとんどでした。でもそのうち、互いに『タイプだなぁ』という気持ちが通じ合った相手と関係をもってしまいました」と邦子さん。

「自分にも向こうにも家庭があるので、よくないという気持ちはありましたが、それよりもつい『うれしい』という感情の方が上回っていました。私にとって体の触れ合いは大事な要素だったんだなと…。レスでも平気な夫との溝はもう埋まることはないんだ、と思い知らされました」

体の関係をもって、そのままずるずる続かなかったのですか? と聞くと、Aさんというお相手の男性に恋をしてしまったというお話をしてくれました。

夫とは真逆の男。「こういう人と結婚すればよかった」

Aさんは、とても苦労の多い人生を歩んできた人だったといいます。

「小学生のときに両親が離婚して、中学からはどっちにも頼らず、1人で暮らしてきたそうなんです。学費の一部は親が出してくれたそうですが、それも高校まで。たりない分は新聞配達をしたり、年齢を偽って、ホストのバイトをしながら食いつないでいたとも言っていました」と邦子さん。

「話を聞けば聞くほど、生きる力が強い人だなって思って、どんどん好きになりました。親元でお勉強ばかりしながらぬくぬく育った夫とはまったく逆のタイプ。こういう人と結婚すればよかったって心底後悔しました」

Aさんとの関係が深まるまでに時間はかかりませんでした。W不倫の沼に陥ってしまったその後のお話はまた次回。