「次期パジェロ」登場に期待大!「本格復活」の兆し見せる三菱の“新型車”に課せられた「重要な役割」とは

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新型「トライトン」が12年ぶりに日本市場へ復活した本当の理由

 2024年2月15日、12年ぶりに日本市場に復活した三菱自動車工業(以下、三菱)の新型「トライトン」が好調な立ち上がりをみせています。
 
「デリカミニ」などの先行する新型車の好調ぶりを含め、三菱はいよいよ復活を遂げたといって良いのでしょうか。同社の「次の一手」について考察します。

「パジェロ復活」に期待大! 本格的な四輪駆動を搭載した三菱の「新型車」が課せられた役割とは

乗会の場では、総受注数が約1700台に達したことが分かりました。

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 当初月販200台を目標に立てていますので、販売の出足はすこぶる良いと言えるでしょう。

 そこでユーザーが気になるのは「いったいどんな人が新型トライトンを購入しているのか」という点ではないでしょうか。

 なにせ新型トライトンは、全長5360mm×全幅1930mm×全高1815mm(GSRグレード)という巨漢です。

 しかも車両本体価格(消費税込み)は、ベースモデルである「GLS」グレードでも498万800円と、ほぼ500万円。

 同じくピックアップトラックであるトヨタ「ハイラックス」のベースモデル(Zグレード)より90万円近く高い、三菱としては強気の値付けだと感じます。

 上級グレードの新型トライトン「GSR」と、ハイラックス「Z”GR SPORT”」とでは価格差はさらに広がり、109万円にも及びます。

 そんな新型トライトンですが、開発関係者に試乗会の現場で直接聞いたところ、販売開始直後である現時点では、ユーザーの属性に関わる詳しいデータはとりまとめていないとのこと。

 ただイメージとしては、既存の三菱ユーザーでは「デリカD:5」からの買い替えや、長年にわたり先代トライトンを愛用していた人、または以前トライトンに乗っていたが手放してしまい、今回の新型に惹かれた人などが考えられると言います。

 また、他社のSUVからの乗り換えが進めば、トライトン日本再導入の狙い通りといった声も聞かれました。

 確かに新型トライトンは、過酷な走行条件をスムーズに乗り越えられる、本格四駆SUV顔負けの走行性能を誇ります。

 新設計の車体構造、柔軟性と操縦安定性を両立したリアサスペンション、さらに2WD「2H」、フルタイム4WD「4H」、センターデフロックの直結4WD「4HLc」、センターデフロックのローギア直結4WD「4LLc」をベースとしてブレーキなどの協調制御を行う合計7つの走行モードを設定など、オフローダーとして充実装備です。

1980年代から1990年代にかけて三菱の全盛期を象徴する存在だった「パジェロ」(写真は2代目モデル)

 今回、様々なオフロードシーンで試乗し、本格四駆としての実力を見せつけました。

 さらに、オンロードでは2Hでの軽快さ、さらに4Hでの安定間があり、ボディのサイズ感やピックアップトラックという外観を忘れてしまうようなSUVさながらの取り回しの良さを実感しました。

 そんなオールラウンダーの新型トライトンですが、全長5.3m級と、一般家庭向けとして保管するスペースを確保することが難しいなど、価格面だけではなく所有するためのハードルが高い商品です。

 そのため初期受注は順調とはいえ、販売台数は今後、限定的だと言わざるを得ません。

 そうしたことから、日本では新型トライトンで熟成した四駆システムを応用した本格オフロードSUVとして、次期「パジェロ」の復活を求める声もあるでしょう。

 人気の「ランドクルーザー」が、トヨタでいう「群」というブランド構成となるなか、例えばフラッグシップの「ランドクルーザー300」対抗の新型パジェロや、ミドル級の新型「ランドクルーザー250」に対抗する次期「パジェロスポーツ」など、三菱らしい本格四駆や電動化技術を織り交ぜた、次世代「パジェロシリーズ」の世界感に期待を膨らませている人もいるかもしれません。

新型「トライトン」は三菱の新時代をけん引する象徴だ

 その上で、改めて近年の日本での三菱の動向を振り返ってみましょう。

 新型「アウトランダーPHEV」や軽EVの「eKクロスEV」という最新電動車の導入によって、今「技術の三菱」復活というブランドイメージが徐々に広がってきているところです。

新開発のラダーフレームやサスペンション、そしてパジェロで培われた独自の4WDシステム「スーパーセレクト4WD-II」などで極めて高い走破性を確保した新型「トライトン」

 さらに、三菱としては珍しい可愛いキャラクター「デリ丸。」を擁するSUVテイストの軽スーパーハイトワゴン「デリカミニ」は、三菱に限らず国内市場全体の中でも、マーケティング戦略の成功事例として注目が集まっています。

 こうして三菱が上昇機運に乗る中で、日本市場に復活した新型トライトンの存在は極めて重要だと言えるでしょう。

 SUVや軽自動車に比べれば、販売台数は限定的でも、新型トライトンは「強い三菱」や「もっと攻める三菱」といった三菱ブランドの推進力を担うからです。

 そもそも、トライトンは世界150ヶ国で年間約20万台を販売する三菱の屋台骨です。1978年からの累積販売台数はや560万台強。

 2ドアの廉価モデルから、4ドアモデルの上級モデルまで、仕向け別に多様なレイアウトを用意しています。

 そのうち日本市場向けの新型トライトンは、あえて最上級モデルに集約し、三菱ブランド全体を牽引していくという、したたかな事業戦略だと言えるでしょう。

 1980年代から1990年代にかけ全盛期を迎えていた往年の三菱は、本格四輪駆動車シリーズの「パジェロ王国」として繁栄し、またWRC(世界ラリー選手権)で「ランサーエボリューション(ランエボ)の雄姿」が世界を魅了してきました。

 その後、商品イメージが強いモデルが徐々に減り、またモータースポーツとの連携も薄れていった印象があった三菱。

 それが今、ルノー・日産・三菱アライアンスという大きな転換期を経て、さらなる飛躍に向けて動き出しています。

 その象徴が、新型トライトンの日本市場復活なのです。