「住みたい街ランキング」2024、東京勢弱体!? 1位、2位は東京外、吉祥寺はまさかの3位に退く
リクルートが、首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県)在住の20歳〜49歳の男女9335人を対象に実施した「SUUMO住みたい街ランキング2024」を発表した。ランキング上位は常連が顔をそろえる中、あの吉祥寺を抑えて2位になった街がある。ランキングがアップした街を中心に、その背景をさぐってみよう。
【今週の住活トピック】
「SUUMO住みたい街ランキング2024 首都圏版」を発表/リクルート
住みたい街ランキング2024、1位は横浜、2位には吉祥寺を抜いた大宮
では、2024年の住みたい街(駅)ランキングの結果を紹介しよう。「横浜」が首位を、しかも得点を伸ばしてナンバー1になった。2位には、得点を落とした「吉祥寺」を抑えて「大宮」がその座に就いた。その結果、「北の大宮・南の横浜」が1・2位を占め、中に当たる東京勢の街は3位以下へと退く形になった。
住みたい街(駅)総合ランキングトップ10(首都圏全体/3つの限定回答)(出典:リクルート)
詳しく見ていこう。今回2位の「大宮」は、2018年の9位から順位を4位、3位と上げて、ついに2位に至った。2018年に2位だった「恵比寿」は、吉祥寺、大宮に抜かれた後は4位をキープ、2018年に3位だった「吉祥寺」は恵比寿を抜いて2位をキープしていたが、今回は3位に退いた。
2018年に4位だった「品川」は2023年には11位までランクダウンしたが、今回はTOP10に返り咲いた。おおむねランキング14位くらいまでは、常連の街が調査時期によって入れ替わりながら、上位を維持している形だ。
住みたい街(駅)総合ランキング11位〜25位(首都圏全体/3つの限定回答)(出典:リクルート)
11位〜25位までを見ると、「流山おおたかの森」「舞浜」「桜木町」「みなとみらい」などが、過去最高の順位になるなど、人気のある郊外の街の中で、ランキングの入れ替わりが見られた。さらに上位50位までを見ると、つくばエクスプレスのような新しい沿線の街がランクアップし、かつて人気を誇った東急田園都市線の街がランクダウンしたという印象を受けた。
また、SUUMOが2023年との得点を比較して、得点ジャンプアップしたランキングを分析したところ、1位は「横浜」(+123点)で、2位「秋葉原」(+91点)、3位は「北千住」(+57点)、4位「巣鴨」(+49点)、5位「練馬」(+48点)と東京駅より北側の駅が上位を占めたという。
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「横浜」が大横綱ぶりを見せた理由は?
TOPの座を守っただけでなく、得点も伸ばした「横浜」。まさしく、大横綱という感じだが、その理由はどこにあるのだろう?
SUUMOの分析によると、「子育て世帯」での得点が伸びていることが大きな要因だという。近年、横浜市は、子育て支援を強化している。子どもを預かるサービスについて無料クーポンを配布(2023年6月〜)したり、中学生まで医療費の無料化を所得制限なしで実施(2023年8月〜)したりと、子育て施策に力を入れていることが影響したのかもしれない。
同じ横浜市にある「桜木町」と「みなとみらい」もランクアップしているが、みなとみらい地区で企業本社、研究施設等を誘致が進んでいるため、「働く」場としても注目されている。また、2023年に音楽特化型アリーナ「Kアリーナ横浜」、バーベキュー施設なども備えた「ザ・ワーフハウス山下公園」などのスポットもオープンし、「遊ぶ」場としての魅力も増している。こうした総合力が、横浜の強みなのだろう。
SUUMO住みたい街ランキング2024首都圏版 記者発表会資料(出典:リクルート)
「大宮」と「吉祥寺」、天下分け目の鍵は?
大宮が人気を維持し、吉祥寺が人気を落とした形での入れ替わりとなったが、その要因はどこにあるのだろう?
おしゃれな街、公園のあるクリーンな街の印象が強い「吉祥寺」は、女性や夫婦+子ども世帯、40代に人気はあるが、「大宮」は男性や夫婦のみ世帯、20代・30代に人気が高かった。つまり吉祥寺は、大宮の人気に押されて、男性や20代・30代などから支持を得られにくくなったということだ。
2024年の属性別「大宮」「吉祥寺」の順位(出典:リクルート)
では、大宮が男性や20代・30代などに支持された理由はなんだろう?
その一つ目が、「働く」環境だ。「魅力的な働く場や企業がある」「コワーキングスペースなど仕事のできる施設がある」といった理由が高いのだ。近年は、東京都からの企業移転も多く、オフィス賃料も手ごろなため空室率も低くなっているという。今後、大型のオフィスビルの計画もあり、働く場としての魅力が街の人気を高めているのだろう。
二つ目は、商業施設の充実ぶりだ。「大宮」に住みたい理由として目立ったのは、「買う」と「遊ぶ」の環境(文化・娯楽施設の充実、ショッピングモールやデパートなどの大規模商業施設、街の賑わい)の高さだ。大宮駅周辺に店舗数が1000店を超える7つの商業施設があり、散歩デートもできる氷川神社参道の先には、NACK5スタジアム大宮を擁する大宮公園がある。
ちなみに、SUUMO編集長の池本さんは、TOP2・横浜と大宮の人気の要因として、それぞれ県内における「コンパクト東京」の価値にある、と指摘している。直径2km圏というコンパクトなエリアに、東京都心の街の魅力が凝縮しているからだ。これなら、わざわざ東京都内の街まで出かける必要はないということだろう。
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SUUMO住みたい街ランキング2024首都圏版 記者発表会資料(出典:リクルート)
ジャンプアップの街、「秋葉原」と「練馬」の魅力とは?
上位以外で注目の街として、「秋葉原」と「練馬」を挙げておこう。
秋葉原は、先に挙げた「得点がジャンプアップした街(駅)ランキング」で横浜に次ぐ2位で、総合順位も過去最高位の29位になった。人気を押し上げたのは、男性、なかでも30代男性が支持したからだ。
と聞くと、秋葉原は“オタクの街”だからと思いがちだが、そればかりとはいえないようなのだ。街の魅力(住みたい理由)項目の上位を見ると、「コワーキングスペースなど仕事のできる施設がある」「魅力的な働く場や企業がある」と「働く」環境がカギになっているのだ。
オタクの街を想起させる、「メディアに取り上げられて有名」「街に賑わい」「文化・娯楽施設が充実」といった項目は、その次に来ている。また、特徴的だと思った項目は「周囲の目を気にせず自由な生活ができる」。オタクや外国人などを受け入れる懐の広さが、街の魅力になっているようだ。
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「秋葉原」の街の魅力項目TOP10(出典:リクルート)
練馬区は、東京23区の中でも自然が豊かな区だ。その中心にあるのが、練馬駅だ。筆者は電気系に弱いので秋葉原にはそれほど行く機会がないが、練馬文化センターの落語会にはよく足を運んでいる。練馬駅周辺には行政の施設が集約しており、賑わいもあって便利な街だ。近くにできた、ハリーポッターのスタジオツアー東京にはぜひ行きたいと思っている。
この練馬が、得点がジャンクアップした街(駅)ランキング5位、総合順位も過去最高位の48位になった。SUUMOの分析では、男性20代・女性40代で支持が伸びたというのも意外だった。子育て世帯向きの街だと思っていたからだ。
これは、遊園地「としまえん」跡地に、魅力的なテーマパークと東京都の都市計画公園である「練馬城址公園」ができることが大きいのではないか。公園内を貫く石神井川沿いに桜などの樹木が並び、防災井戸などもある場所だ。
練馬城址公園は、今後、広域防災拠点となるほか、緑と水の空間、交流活動が行われる空間などが誕生する予定。段階的に整備される計画だが、テーマパーク開園と合わせて一部が開園している。
もちろん、4路線が利用できる利便性の高さの割には23区の中でも賃料などが安く、コスパが良い街という点は、人気となる大きな理由だ。
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「練馬」の街の魅力項目TOP10(出典:リクルート)
さて、再び総合順位の上位を見ていこう。SUUMOでは、首都圏の都県別にもランキングを出している。東京都民ランキングでは、1位「吉祥寺」、2位「恵比寿」、3位「新宿」、神奈川県民ランキングでは、1位「横浜」、2位「武蔵小杉」、3位「桜木町」、埼玉県民ランキングでは、1位「大宮」、2位「浦和」、3位「さいたま新都心」、千葉県民ランキングでは、1位「船橋」、2位「流山おおたかの森」、3位「千葉」、茨城県民ランキングでは、1位「つくば」、2位「水戸」、3位「研究学園」、と、それぞれの街が上位を占めている。
一方で、「横浜」は東京都民で11位、埼玉県民で5位、千葉県民で6位など、広範囲からの支持を得ている。また、「横浜」は神奈川県民で得点が932点、「大宮」は埼玉県民で775点と、県内で圧倒的な得点を得ている。人気が分散する東京勢の街と比べると、“わが街”感が大きいというのも強みだろう。
●関連サイト
・SUUMOリサーチセンター「SUUMO住みたい街ランキング2024 首都圏版」プレスリリース
(山本 久美子)