新幹線や特急列車は年々豪華になり、居住性に優れたバラエティー豊かな座席が快適な旅を提供しています。その中でも特に“座り心地”に優れている座席を5つ紹介します。

純粋に“座席の良さ”だけで見る

 新幹線や特急列車、イベント用のジョイフルトレインなどには、個室を始め居住性に優れたバラエティー豊かな座席が多数あります。ではそれらのうち、座席の“座り心地”のみに着目した場合、特に優れた座席を備える車両はどれでしょうか。座席鉄として日本中の鉄道座席に座った筆者(安藤昌季:乗りものライター)が考察します。


JR東日本のジョイフルトレイン、E655系「なごみ」(安藤昌季撮影)。

■JR東日本 E655系「なごみ」

 2007(平成19)年に登場したジョイフルトレインで、皇族や国賓が利用する際は特別車両を連結して「お召列車」にもなる、日本を代表する豪華車両です。

 座席は1+2列の電動式リクライニングシートで、枕とフットレストも付属しています。リクライニング角度も大きく、クッションはJR東日本で最新の特急グリーン車(E353系など)よりも柔らか目です。登場時期の関係もあり、座席へのコンセントは1号車のみ備わっています。

 1+2列の座席としては、肘掛けや座席幅が比較的狭いものの、必要十分ではあります。何より座席形状が抜群に良いため、特にリクライニング時は体に自然な形状で疲れにくいです。革張りのVIP席もあり、触感に優れますが、座り心地は大差ありません。

 なお、登場時はタッチパネル式のモニターが肘掛け内にあり、ゲーム機能のほか車内販売への注文も行えましたが、現在では取り外されています。車両自体も重厚な走りぶりで、走行音も小さいです。

至高の「1+1列」配置シート 最高!

■JR東日本 E261系「サフィール踊り子」プレミアムグリーン

 2020年に登場した、東京・新宿〜伊豆急下田間を結ぶ特急「サフィール踊り子」用車両です。全客車がグリーン車ですが、1号車は「プレミアムグリーン」、2・3号車は「グリーン個室」で、より上のグレードです。

「プレミアムグリーン」は1+1列という究極の座席車であり、バックシェル付きの回転式リクライニングシートを装備。枕やレッグレスト、コンセントもあります。肘掛け内に大きなテーブルも付いています。

 座席の材質は本革で、車内デザインも抜群。伊豆急下田行きなら最前列からは前面展望も楽しめますし、天窓もあって視界はワイドです。ただ惜しむらくは、シートピッチ1250mmと前の座席への距離が近く、靴先が当たること。身長173cmの筆者でもぶつかりますから、高身長の男性は足の置き場に困りそうです。

 リクライニングなどはありませんが、「サフィール踊り子」ではグリーン個室のソファも甲乙つけがたい存在です。座席幅はプレミアムグリーンよりも広く、高級なソファの座り心地である「柔らかく、どっしりと沈み込む」感じが実現しているからです。

■JR東日本・西日本 E7・W7系新幹線「グランクラス」


JR東日本のE7系新幹線「グランクラス」(安藤昌季撮影)。

 2014(平成26)年より、北陸新幹線などに登場した系列です。12号車はグリーン車以上の「グランクラス」で、枕の付いた背もたれ、座面、レッグレストの形状が抜群に良くクッション性にも優れるため、リクライニングした際の座り心地は極上に感じます。

 E5・H5系にもグランクラスがありますが、E7・W7系の方が優れている部分が多いです。座席幅525mmはE5系よりも5mm広いですし、肘掛けの幅が左右とも広く、かつ同じ高さに設置されています。揺れ走行音ともに小さい点も、後発の長所でしょう。電動リクライニングのモーター音が唯一の欠点と感じます。

30年前の車両も負けてない!?

■JR九州 787系「デラックスグリーン」

 2002(平成14)年のリニューアル時に導入された、3席のみの最上級クラスです。すでに紹介したどの座席よりも大きなリクライニング角度(144度)を実現しており、フルリクライニングさせると「寝られ」ます。

 車端部にあり通り抜けの必要がないこともあって、座席幅が非常に広く取られています。車体幅が広い新幹線「グランクラス」と比較しても遜色がありません。「デラックスグリーン」のみが区切られているため、個室感さえあります。設備面でも大きなテーブルやコンセント、読書灯、ハンガーなどを備えており、令和の最新特急車両に劣りません。

 ただ台車上に位置するため乗り心地はあまり良くなく、走行音も大き目。座席に枕があれば、なお良いでしょうか。

■近畿日本鉄道 50000系「しまかぜ」プレミアムシート


近鉄50000系「しまかぜ」のプレミアムシート(安藤昌季撮影)。

 2012(平成24)年に登場した、近畿日本鉄道が誇る豪華観光特急です。1+2列の回転式リクライニングシートは「プレミアムシート」と呼ばれ、革張りとなっています。

 シートピッチ1250mmは、後発の「ひのとり」プレミアムシートの1300mmよりもやや狭いですが、座席全体のクッション性、特に枕の柔らかさから、筆者はやや「しまかぜ」の方が上だと感じます。

 なお、和風個室の内装が変更された第3編成のみ、リクライニングシートの座面クッションが増えているため座り心地がさらに良く、2023年時点で「私鉄特急最高の座席」だと思います。

「しまかぜ」にはプレミアムシート以外に洋風個室、和風個室、グループ席がありますが、座席の座り心地はプレミアムシートの方が快適と感じます。

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 以上、筆者が最高だと思う座席を紹介しました。昔語りをすれば、寝台特急「あさかぜ」「あかつき」などに連結されていたA個室寝台「シングルデラックス」のギャッジ式ベッドが、一部が斜めにせり上がり寝ながら景色を見られたので、「座席」(寝台ですが)としては最高だったと思います。