月給5万円のグラビアアイドルから年商数千万円の経営者に。くりえみが「グラビアが大好き」だけど「グラビアアイドルという呼び名は大嫌い」な理由
AI事業を行なうAIHUB株式会社のCMO(最高マーケティング責任者)に就任し、自身もAIグラビア写真集を刊行するなど、AIに注力している、くりえみさん。現役のグラビアアイドルでありながら、実業家の顔も持つ彼女だが、起業するに至ったきっかけはグラビアアイドルの過酷な現実があったからだという。起業の実情やビジネスにかける意気込みを聞いた。(前後編の後編)
グラビアアイドルにはパパがいる!?
――グラビアアイドルでありながら経営者としての顔を持つ、くりえみさんですが、具体的にはどんなビジネスを展開されているんですか?
マーケティングや経営コンサルティングとして、いろいろな会社に関わらせていただいています。一部は公開されていますけど、あまり公開していないのでわからないですよね。
――くりえみさんの会社(S&E株式会社)のサイトを見ると、美容品の開発やオンラインクリニック、AI開発など、さまざまなサービスを展開していますが、自身で運営しているものは少ない?
去年始めたAGA事業は売却してしまったし、うちだけでやっている事業はほぼないですね。ほとんど他社と協業みたいなスタイルです。売却を視野に入れたサービスの立ち上げを主にやっています。アメリカに多い連続起業家のような考え方です。
――そもそもくりえみさんはなぜ起業を考えたんですか?
まずひとつは、同業者(=グラビアアイドル)の存在です。私、5年前まで毎日ずっと稼働しながら月給5万円だったんです。でも仕事をしている様子がないのにハイブランドのアイテムを持っていたり、海外旅行をしている女の子がたくさん周りにいました。
なぜそんな贅沢ができるのかというと、パパ活していたり、風俗を含む夜のお店で働いていたんです。最近は経営者仲間とご飯に行くことがあるのですが、その席に芸能活動をしている知り合いがついて、「秘密にして!」と言われることも多い。
結局グラビアアイドルの大半はパパをつくったり、夜の世界にいかざるをえない厳しい世界なんですよ。そうでもしないと生きていけないのはわかるので、仕方ないんですけど、私はいいと思わなかった。悔しいと思ったんです。だから自分は違う道で成功してやろうと。
――男や他人にすがらず、自分の手で成功を掴もうと。
私自身はグラビアアイドルを好きでやっているなら誇るべきだとは思うんですけど。
自分の周りに関していうと、あまりにも生活がひどい子や、シャンパンやテキーラを飲んで夜遊びばかりしている人が多かったこと、本気でグラビアを好きでやっている子が少なかったんです。だからこそ「同じだと思われたくない」という気持ちが芽生えました。
パパ活や夜職を楽しんでいるひとがいることも理解できますし、もちろんグラビアアイドル皆が皆ではないとは思います。あくまでも自分の周りの環境が酷かったんですよね。
自分で買ったアクセサリーひとつで
――「グラビアアイドル」という存在を安っぽくしてしまう行為に憤りがあるんですね。ちなみに経営者としてではなく、芸能界で成り上がることは考えなかったんですか? 少なくともグラビアでは雑誌の表紙を飾ったりされていたわけですし。
テレビに出て、広告がつくタレントになることが最大の成功だと思っていたので、経営者としての一面はアピールせずに頑張っていました。
でも、広告が取れる芸能人って芸能界全体の1%で残りの99%は無理なんです。さらに事業をやっている人は、別の事業の看板にはなりにくいですよね。会社経営とタレント業を両立させながら、私がその上位1%に入るのは無理だなと気づきました。
――10年以上前にデビューしていて、芸能界に未練はなかったんですか?
未練、めちゃくちゃありましたよ。
でもグラドルって、泥をかぶっても頑張れって風潮がまだあるんです。ひどいことをされても大丈夫でしょ、崖っぷちなんだから、って。ある番組の収録で芸人さんから、「そのアクセサリーも高いんでしょ? くりえみは社長だからね」って言われたんですよ。
もちろんネタだとわかっていたんですけど、「グラドルなのにお金を持ってる=いやらしいみたい」な嫌味に聞こえて、その場で笑えなかったんですよね。
事業を死ぬ気でやってきて、自分で買ったアクセサリーひとつで調子に乗ってるみたいにイジられるのなら、もうバラエティ番組には出られないなと。それで踏ん切りがついて辞めました。
――自身で道を切り拓かれていますね。
グラビアの友人からは、「なんで起業とかめんどくさいことするの?」と言われますけどね(笑)。あと経営者としても支持されている女性タレントさんって、アパレルやコスメとかわかりやすい事業をしている人。
私みたいに事業を立ち上げて、売却して、みたいな人があまりいなくて、行く方向を間違えたのか、行き過ぎちゃったんですよ。
グラビアアイドル時代の1000倍
――最後に言える範囲でいいんですが、今は実際にどれくらい稼いでいるんですか?
波がありますけど、年収はグラドル時代の1000倍くらいですかね。あと長年タレントをやっているのもあって、給料がいつ減るかわからない不安定さが身に染みていて、事業を売却するときには株式をもらうようにしているので、資産としてはその株式もあります。
――前編で「好きだから」「ファンのため」だと言っていましたが、ますますグラビアを続けている理由がわからなくなってきたんですけど(笑)。
グラビアはずっと続けていきますよ。ビジネスだけだと心もすさんでくるし、違う環境にいることでメリハリもつくので、自分には欠かせないものだと思っています。
取材・文/鯨井隆正
撮影/松木宏祐