御用達制度は1954年に廃止されている

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「産地直送」、「ご当地限定」、「数量限定」と、商品に付加価値をもたらす表現はいろいろある。なかでも「宮内庁御用達」と聞けば、インパクトは強い。しかし、宮内庁(元・宮内省)による御用達制度は1954年に廃止されている。

それでもしばしば、いまだに「宮内庁御用達」を目にするような......。J-CASTニュースBizは、企業などが「宮内庁御用達」と名乗ることに問題はないのか消費者庁を取材した。

ほとんどの企業は歴史や沿革で触れるだけ

そもそも「宮内庁御用達」とはどういう意味なのか、岩波新書の広辞苑第7版によれば「御用達」とは、「認可を得て、宮内または官庁の用品を納めることを生業とする商人。御用達」と書かれている。これに「宮内庁」とつくので、宮内庁に納めていた商人となる。

ここで、旧制度での「宮内庁御用達」であったとされる老舗企業のウェブサイトを調査した。

最も多かったのは創業の歴史や企業の沿革の中で、「〇年から宮内庁御用達」と記載していたサイトだ。すき焼き店をはじめ、海苔店、和菓子店などでそうした伝え方をしていた。また、宮内庁御用達であった製品の取り扱いを止めたことを報告している業者もあった。

次いで多かったのが、トップページのバナーで「宮内庁御用達」の文言を使っている企業だ。確かに元・宮内庁御用達という信頼とブランド力が高いことはわかるが、70年近く前に制度が終了しているのに、今も大きく打ち出しては誤解を招かないだろうか。

景品表示法「優良誤認表示」に関わる可能性

日本広告審査機構(JARO)のQ&Aページに、「商品などに『宮内庁御用達』と表示しても問題ないの?」との項目がある。見解は、こうだ。

「昭和29年に廃止されているため、現在では『宮内庁御用達』という文言は、歴史的事実として表示するような場合を除き使えません」

「宮内庁御用達」の取り扱いについて、消費者庁を取材した。担当者は、景品表示法の中でも5条1号の「優良誤認表示」に関わってくると指摘した。

「優良誤認表示」には「内容について、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示」と、「内容について、事実に相違して競争業者に係るものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示」がある。消費者庁は「(宮内庁御用達)制度が廃止されていることを知っている人ならば、誤認は起こらない。一方で、知らない人が見ると誤認する可能性はある」と回答した。

過去に宮内庁への納入実績がある企業が、宣伝で「宮内庁御用達」と書く場合には、「一般消費者が誤認しないように、制度が(今は)もうないことを注意書きしておく必要があると思われる」。さらに、「納入実績がない企業が、『宮内庁御用達』の文言を使うことは虚偽の記載となり、誤認の危険性がある宣伝行為だといえる」と述べた。