男性のほうがスマホをメリハリ利用している人が多い

写真拡大

「メリハリをつけた」スマホの使い方をしている人は、健康に自信があるというユニークな研究がまとまった。

NTTドコモの研究機関、モバイル社会研究所(東京都千代田区)が2023年11月30日に発表した調査「メリハリをつけてスマホを利用する人は、健康に自信がある傾向」によると、たとえば40代以下の男性の場合、メリハリをつけてスマホ利用をしている人は、ダラダラ利用している人に比べ、2割以上も健康に自信があるという。

メリハリをつけるスマホ利用って、いったいどんな使い方か? なぜ健康になれるのか? 調査担当者に聞くと――。

メリハリをつけたスマホ利用、若い女性が最も少ない

モバイル社会研究所の調査(2023年2月実施)は、全国の15歳〜79歳の男女7166人が対象だ。スマホの使い方を「目的を持ったメリハリ利用」「やや目的を持ったメリハリ利用」「どちらでもない」「目的なしのなんとなく利用」の4段階に分けて分析した。はっきりした目的があることが、メリハリ利用なのだ。

上記の分け方でスマホの利用方法を聞くと、男性は各世代ともに50%前後が、メリハリをつけていることがわかった。ただ、40代〜50代だけメリハリをつけている人が少ない。一方、女性は若い世代に「なんとなく利用する傾向」が高く(約60%)、年代が上がるにつれメリハリをつける人が増える傾向があった【図表1】。

次に、「スマホの使い方」と「同世代と比べ、自分は健康と思うか」という「健康意識」の関係を聞いた。その結果が【図表2】だが、これを見ると、性別年代に関係なく、スマホの使い方にメリハリをつけている人ほど、「健康意識」が高いことがわかる。

ただし、ここでも40代〜50代男性の「健康意識」が全体的に低いことが気になる。「目的なしのなんとなく利用」では、健康に自信がない傾向が6割以上に達し、突出して高い結果が出た。

さらに、スポーツログ管理サービス(ルート案内、歩行、ランニング、自転車、登山など)の利用状況を聞くと、男性の利用率は各世代ともに女性より高かった。男性は約5人に1人がサービスを利用していた【図表3】。

このスポーツログ管理サービスの利用と、健康意識の関係を聞いた結果が【図表4】だ。これを見ると、性別年代に関係なく、スポーツログ管理サービスを利用している人ほど、「健康意識」が10%〜20%も高いことがわかる。

特に60代以上の女性では、「健康意識」が高い人が80%近くに達し、最も高かった。半面、ここでもスポーツログ管理サービスを利用していない40代〜50代男性の健康に自信のない傾向が最も高く、「健康と思わない」という人が50%以上に達したのだ。

さて、株、信託などの投資サービスの利用状況を聞くと、男性の利用率は、各世代ともに女性の約2倍も高かった【図表5】。40代以上の男性では約4人に1人が利用していた。

そして、「投資サービスの利用」と「健康意識」の関係を聞くと、スポーツログ管理サービスと同じ傾向が出た。性別年代に関係なく、投資サービスの利用している人のほうが健康に自信のある人が多かったのだ【図表6】。

40、50代男性は、ストレスからダラダラスマホ?

ここまで見事に表れた、「メリハリをつけてスマホ利用をする人」の健康度は高いという調査結果。どう考えればよいのか。J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を担当したモバイル社会研究所の角誠(すみ・まこと)さん(健康意識とICT利活用調査担当)に話を聞いた。

――まず、目的を持ったメリハリ利用ですが、女性では明らかに年代が上がるにつれ増える傾向がありますが、逆に30代以下では「メリハリのない利用」が6割以上もあります。このギャップはどういう理由からですか。

角誠さん あくまで個人的な見解としてですが、女性若年層ではLINE・InstagramをはじめとしてSNS等のツールを利用した、ゆるく広いつながりを持つことが多いようです。また、動画もレコメンド(おススメ)されたものをダラダラ見てしまう傾向があるようです。

そのため、メリハリなくスマホを利用してしまう傾向があると推測します。年齢層が上の世代は、スマホを娯楽目的ではなく、道具として利用をする傾向があると思います。

当研究所が出した「モバイル通信白書2023」でも、毎日LINEを使っている30代以下の女性は80%以上なのに対し、40代以下は70%前後。また、毎日Instagramを見ている20代以下の女性は70%以上なのに対し、40代以下は30%以下といった、明確な落差の傾向が出ています。

――それでは、若い女性のメリハリ利用は少なくなりますね。一方、男性では40〜50代の働き盛りで、メリハリ利用が他の年代に比べてガクンと下がります。これはどういう理由からでしょうか。

個人的には、この年代の男性が健康不安を抱えていることと何か関係があるような気がしますが、いかがでしょうか。

角さん おっしゃるとおり、先ほどの「モバイル通信白書2023」にもありますが、男性40代〜50代が「自分は健康だ」と思う割合は約51%しかなく、なんと男性60代以上の約63%よりも低く、男性の各年代を通じて最低です。

――それは、健康に自信がないからスマホ利用にメリハリがないのか、それともスマホ利用にメリハリがないから健康に自信がないのか。結果と原因はどちらが先でしょうか。「ニワトリが先か、卵が先か」のような問いかけですが。

角さん 男性40代〜50代の働き盛りの「スマホのメリハリ具合」と「健康に対する自信」の間における直接の原因は、現状把握できておりません。あくまでも推測ですが、働き盛りの忙しさなどに起因したストレスなどが、ダラダラとスマホを利用してしまう原因の1つになってしまっているようにも感じます。

スポーツログ利用で、ポジティブスパイラルに

――スポーツログ管理サービスを利用している人では、明らかに健康である結果が出ましたね。これも「ニワトリと卵」のような質問ですが、もともと健康管理意識が高いからなのか、それとも、スマホのスポーツ関連サービスを利用して健康になったということでしょう。

角さん スポーツを取り組む人は、もともとある程度、健康に自信があると思います。さらにスマホなどのICTデバイスで積極的にスポーツログ利用を行うことにより、より効率的にスポーツに取り組むことができると思います。

その結果、ポジティブスパイラルが発生し、自身の健康にも、また自信向上にもつながっているのではないかと推測しております。

――一方、女性のスポーツログ利用が男性より低く、特に40代以降では半分以下しかないことが気になります。これはどういう理由からでしょうか。

角さん 「モバイル通信白書2023」でも紹介しましたが、もともと女性はGPSと連動した運動データ(自転車、ランニング、登山など)の取得比率が男性と比べて低いようです。さらにスマートウォッチ利用率も女性が低い傾向です。男性のほうがデジタルガジェットを好んで利用する傾向があるようです。

その代わり、女性のほうが体重、体脂肪、内臓脂肪を測定する体組成計の取得比率は男性より高いです。

株、投資では、60代以上の健康度が最も高くなる謎

――ところで、株、投資信託サービス利用者は、健康に自信があるという結果も非常に面白いです。やはり、積極的にリスクを負ってまでお金を稼ごうという人はバイタリティーがあるということなのでしょうか。

特に、株、投資信託に関しては、男女とも60代以上が最も健康に自信があるという結果がとても興味深いです。高齢者は、投資に回すことができる貯蓄が多いとされますが、健康で長生きするためにも積極的に株や投資をしたほうがいいと言える結果でしょうか。

角さん 「株・投資」と「健康意識」に直接の相関があるように見えますが、そのバックグラウンドにある「金銭的余裕」や「精神的余裕」といったものが影響している可能性があるかもしれません。「株・投資」を積極的に行うことで、「健康意識」が高くなるかどうかはわかりかねます。

――今回の調査では「スポーツログ管理サービス」と「株・投資サービス」に絞っていますが、ほかのメリハリのある使い方、たとえば、若い男性の「ゲーム」とか、若い女性の「美容」などでも同じことが言えるのでしょうか。そういった調査はありますか。

角さん 今回は、スマホなどのアプリ・サービス利用の中で、特に健康意識との関係が大きく見られたものをピックアップしました。「ゲーム」や「美容」に関しては調査しておりません。今後、さらに分析を進めていきたいと思います。

(J-CASTニュースBiz編集部 福田和郎)