ボルボ・カーは2030年の全車EV化を掲げ、急進的なEVシフトを進めている。写真はスウェーデンの車両試験施設(同社ウェブサイトより)

中国の民営自動車大手、吉利汽車(ジーリー)の持ち株会社の吉利控股集団は11月17日、同社が保有するスウェーデンの乗用車メーカー、ボルボ・カーの株式のうち1億株を売却すると発表した。

この売却が完了すると、吉利控股のボルボ・カーに対する持ち株比率は82%から78.7%に低下する。同社は今回の株式売却を通じて約3億5000万ドル(約525億円)の収入を見込んでおり、その資金を傘下のブランドのグローバル化に投じるとしている。

吉利控股はベンツにも出資

吉利控股は中国の自社ブランドの育成と同時に、海外の自動車メーカーの株式を積極的に取得してきた。同社の出資先はボルボ・カーのほか、ドイツのメルセデス・ベンツ・グループ、マレーシアのプロトン、韓国のルノー・コリア自動車などが知られている。

ブルームバーグの報道によれば、ボルボ・カーの株式売却ではアメリカのゴールドマン・サックス、フランスのBNPパリバ、スウェーデンのスカンジナビア・エンスキルダ銀行の金融大手3社が、売り出しの幹事業務を共同で引き受ける。売却手続きの完了後、吉利控股の手元に残ったボルボ・カー株には90日間の販売禁止(ロックアップ)期間が設定される。

「わが社はボルボ・カーの支配株主として、同社のグローバルな発展、製品ラインナップのEV(電気自動車)シフト、スマート化を引き続き全力でサポートする」。吉利控股の李東輝CEO(最高経営責任者)は、株式売却の声明文の中でそう述べ、同社とボルボ・カーの関係が不変であることを強調した。


吉利控股はEVシフトやグローバル化に積極投資しており、資金需要は旺盛だ。写真は傘下の吉利汽車の研究開発センター(吉利控股のウェブサイトより)

一方、ボルボ・カーのジム・ローワンCEOは、「(吉利控股の株式売却を通じて)一般投資家の保有株式が増加し、株式市場での流動性が改善することは、新規投資家にとっても既存投資家にとってもメリットがある」とコメントした。

2030年にはEV専業メーカーに

ボルボ・カーはもともとスウェーデンの商用車大手、ボルボ・グループの乗用車部門で、1999年にアメリカ自動車大手のフォードに売却された。さらに2010年、フォードはボルボ・カーを18億ドル(約2699億円)で吉利控股に売却。ボルボ・カーは吉利控股の傘下で経営再建を果たし、2021年にスウェーデンのナスダック・ストックホルム(旧ストックホルム証券取引所)に上場した。

決算報告書によれば、ボルボ・カーの2023年1月から9月までのグローバル販売台数は50万9000台と前年同期比18.7%増加。同期間の売上高は2899億スウェーデン・クローナ(約4兆1143億円)と同28.9%の増収を記録したが、純利益は107億スウェーデン・クローナ(約1519億円)と同24.1%の減益だった。


本記事は「財新」の提供記事です

ボルボ・カーは、西側諸国の主要自動車メーカーのなかでも急進的なEVシフトを進めている。同社は2025年までに販売するクルマの半分をEVに、残り半分をハイブリッド車にする計画で、2030年にはEVだけを販売する「完全なEVメーカー」になることを目指している。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は11月18日

(財新 Biz&Tech)