モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜〜金曜6:00〜9:00)。10月26日(木)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「『Google(グーグル)』の独占禁止法違反」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。


※写真はイメージです



◆Googleが独占禁止法違反の疑い 具体的に何が問題?

公正取引委員会は10月23日(月)、独占禁止法違反の疑いでアメリカの巨大IT企業「Google」の審査を始めたことを明らかにしました。Googleは、自社の基本ソフト(OS)であるAndroidを搭載するスマートフォンメーカーに対して、Googleが有利になるような契約を結ばせた疑いが持たれています。

ユージ:今回どのような点に「独占禁止法違反」の疑いがかかったのでしょうか?

塚越:公正取引委員会は、問題を2つ指摘しています。

1つ目の問題は、スマホを出荷する際に、アプリストア「Google Play」、検索アプリ「Google Search」、ブラウザアプリ「Google Chrome」と、Googleの自社アプリを最初からスマホ搭載させ、アプリアイコンもスマホ画面の指定位置に配置させている点です。

多くの人は最初に設定されたものを使うので、(競争関係にある事業者の検索アプリなどを搭載しないことで)Googleが有利になるということで、Googleアプリを不当に優遇している点を問題視しています。

2つ目は、競合関係にある検索アプリをスマホに搭載しないことなどを条件として、Googleが広告で得た収入を分配するという契約を、スマホの製造メーカーと結んだとされるそうです。これもGoogleが有利になる契約ですよね。

ユージ:「うちの競合他社のアプリを使用しないで」ということですね?

塚越:そうですね。Googleは2022年の時点でモバイル検索市場のシェアが世界で90%以上ということで、日本でも7割を超えるなど、圧倒的な影響力を持っています。そのため契約によって他社を排除し、公正な競争が阻まれた可能性を公正取引委員会は問題視しているとのことです。

◆EU、アメリカでも同様の動きが起きていた

ユージ:Googleのサービスは世界中で使用されていますが、日本以外でも同様の問題は起きているのでしょうか?

塚越:アメリカの巨大IT企業(ビッグテック)に厳しいのはEUです。欧州委員会は2018年、Googleがスマホ向け自社アプリの使用を取引先に強要したとして、およそ5,900億円の制裁金を課しています。

一方、アメリカでも司法省が2020年、Googleの検索・検索広告が独占的な地位にあり、競争を阻害しているとして、反トラスト法(日本における独占禁止法)にあたるということで提訴しています。今年の9月から審理が始まっています。

ユージ:日本の公正取引委員会の対応は遅かったのでしょうか?

塚越:EUやアメリカでもビッグテックに対する厳しい指摘は以前からありましたが、それに比べると日本は動きが遅かったのは否めないかなと思います。それでも日本で公正取引委員会がデジタル分野の監視を強めて、今年2月にはスマホのOS、基本ソフトの市場調査報告を公表して、AppleとGoogleの寡占状況に懸念を示しています。

ただ、動きが遅いのには他にも理由があります。日本は、例えばYahoo!のように、国内に限ればGoogleに対抗できる事業者もいるので、そうした事業者との関係も考慮するといった事情がありました。いろいろと事情はあるのですが、生成AIを搭載した検索なども始まっていきますので、競争が今後も激化するなかで、委員会としては今こそ審査すべきときだと判断しました。

◆Googleの独占でどのような問題が起きるのか?

塚越:Microsoft CEO兼会長のサティア・ナデラさんは、Googleが圧倒的な力を持ってしまうと独占力を拡大する構えを見せるようになる、として警告しています。Microsoftも、Windows95や98の頃に独占禁止法問題でかなり揉めたこともあります。

いずれにしても、デジタル市場は急激な独占が生じやすい領域です。企業買収なども繰り返しおこなわれ、一部の巨大企業による独占が続くと、より良い技術開発などが生じなくなってしまうこともあります。そうなるとコストが下がらなくなったり製品の質が下がったり、巡り巡って私たち消費者にとっても良いことはありません。

◆私たちの生活への影響は?

ユージ:今後の展開としてはどうでしょうか?

塚越:まずは独占禁止法違反の捜査が開始されます。関連する情報収集のほか、公正取引委員会は法人や個人にも、11月22日(水)まで情報提供を呼びかけています。要するに、どういう契約がGoogleと企業でおこなわれているか、情報提供を求めているということだと思います。

また、この動きに対してGoogle日本法人は、政府や業界関係者とともに、前向きに協力する姿勢を見せているので、そこがどうなるかということです。仮に、違反が認定されると課徴金の支払いや、事業の改善計画の提出などが求められると考えられます。

いずれにしても認定されるか・されないかも含め、かなり時間はかかると思ってください。すぐという話ではありません。

ユージ:Googleの独占、私たちの生活に影響は出ますか?

塚越:基本的に私たちの生活は変わりません。あくまで国が考えることなので、個人への影響は今のところ関係ありません。ただ、日本でスマホは圧倒的にiPhoneが強いですが、世界全体でみるとAndroidが圧倒的なシェアを持ちますし、検索エンジンでは世界9割のシェアを持っています。

今後、Googleの一連の行為が独占に当たると認定されれば、Androidスマホを購入した際、最初にどのブラウザを利用するか、ユーザーが最初に選択することが求められる可能性があるかなと思います。


吉田明世、塚越健司さん、ユージ



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10月26日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
https://www.tfm.co.jp/link.php?id=7714
聴取期限 2023年11月3日(金) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜〜金曜6:00〜9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/