マツコも認めた「蕎麦ソムリエ」通を気取るなら海苔はのせないで【名店ガイドつき】/女子アナ日下千帆の「私にだけ聞かせて」
奥井さん(左)と日下アナ
10月に入り、ようやく秋らしくなってきました。涼しくなると一気に食欲が増しますね。今回は『マツコ&有吉かりそめ天国』(テレビ朝日系)で「蕎麦に詳しい有識者24人」に選ばれた蕎麦ソムリエ・奥井孝一さんに、おすすめの美味しい蕎麦店ベスト10を教えていただきました。
奥井さんは、福島県出身。明治大学法学部を卒業後、知的財産に関する情報サービス会社に入社。46歳のとき、ヘッドハンティングでトムソン・ロイターに転職し、全世界の特許や論文のデータを専門家に提供する仕事につきました。現在は、「知財ワークス株式会社」の代表として人材紹介をおこなうかたわら、都内の人気店向けの蕎麦を製麺する二刀流で活躍中です。
――奥井さんが、蕎麦に目覚めたきっかけは何ですか?
「福井県出身の友人に誘われて食べた『越前おろしそば』の美味しさに衝撃を受け、自分もこんな美味しい蕎麦を打ってみたいと思うようになりました。
2016年から福井県のアンテナショップで開催されていた蕎麦打ち教室に通うようになり、現在は『日本蕎麦伝統技能保持者』4段位、『蕎麦鑑定士』『蕎麦ソムリエ』の3つの資格を持っています。なかでも、『日本蕎麦伝統技能保持者』の試験はたいへん厳しいことで知られています」
――どんな試験なのでしょう?
「手打ちの主流である3本の棒を使った『江戸流』と違い、1本の太い棒で丸くのばす『一本棒・丸延し』という希少な伝統技法を扱う試験です。できるだけ圧力をかけず優しくのばすので、モチモチした食感の美味しい蕎麦が打てるのが特徴です。
試験で使う蕎麦粉は各自が持参するのですが、これは美味しい粉を選別する目利き能力も試されるわけです。そばつゆも、オリジナルで作ったものを持参し、味や香りなどを審査されます。
打ち終わった蕎麦を茹でて審査官に試食してもらう食味試験がありますが、見た目が上手に打てていても、実際に食べて美味しくなければ不合格となります。審査官からは、どのような狙いでその食材を使ったのかなど、鋭い質問が飛んできます。
5段位が最高なのですが、コロナ禍で試験自体がおこなわれず、まだ受験できていません。再開されたら、もちろん5段位を目指します」
――お店をオープンする予定はないのですか?
「お店では採算がとれるように、材料などのコストも考えないといけません。好きな材料を選べないと、究極の蕎麦は作れないので、気が向いたときに非公開で少人数を招待して『お蕎麦の会』を開催しています。器にもこだわりがあるので、自宅の一部屋はお気に入りの器や蕎麦道具でいっぱいです」
――蕎麦を食べるときの作法を教えてください。
「はい。まず、つゆの香りと味を楽しみます。最初は数本の蕎麦を何もつけずに食して、味と香りとのど越しを確かめます。
美味しい蕎麦は何もつけなくても美味しいのですが、薬味を使う場合は、ワサビはつゆに溶かさず、蕎麦に薄く塗りつけてください。蕎麦の3分の1から半分くらいまでを汁につけて食べます。
そうすると、蕎麦、ワサビ、つゆのそれぞれの香りと味を楽しむことができます。途中から味変でネギをつゆに入れてもOKです。ただし、蕎麦通は、海苔は主張が強く、蕎麦の味を邪魔すると考えているので、海苔はのせません。
それから、蕎麦には血管を若返らせると言われるルチンが含まれているのですが、水溶性でゆで汁に溶けていますので、蕎麦湯はぜひとも飲んでほしいです」
――美味しい蕎麦店を見分ける方法はありますか?
「基本的に大盛を出すお店はおいしくないところが多いです。山高く盛る “チョモランマ盛り” は、食べ終わるまでに伸びてしまうので、こだわりがないお店と判断されます。蕎麦は秒単位で味が変わっていきますので、出された蕎麦は素早く食べてください」
――では、奥井さんが選んだ東京の美味しい蕎麦店ベスト10を教えていただけますか?
「蕎麦店のランキングは、蕎麦の味だけで判断するのか、デートや接待でも使えるお店なのかなど、目的によっても評価基準が異なりますので難しいですが……ぜひいろいろなお店に行って、ご自分のお気に入りを見つけてください」
【東京のオススメ蕎麦店】
●ら すとらあだ(中野区本町)
●玉笑(渋谷区神宮前)
●一東菴(北区東十条)
●手打ち蕎麦 じゆうさん(中野区江原町)
●蕎麦 おさめ(新宿区下落合)
●土家(東村山市野口町)
●蕎亭 大黒屋(台東区浅草)
●green glass(新宿区下落合)
●手打ち蕎麦 吉(中野区上高田)
●きぬたや(国分寺市東元町)
※埼玉県ですのでランクインしていませんが、「手打ち蕎麦きくち」も古民家でそば通好みとしてオススメです
今年65歳になるそうですが、実年齢より20歳ほど若く見える奥井さん。周囲にはミュージシャン、料理人、華道家、陶芸家、アーティストなど多才な方々が多く、彼らからもらう刺激が、若さの秘訣かもしれないと話されていました。
■自己実現のための3カ条
(1)会いたい人には会う
(2)行きたいところには行く
(3)やりたいことをする
まずは “思う” ことからスタートし、行動に移すことです。
取材協力/麻布・川上庵
日下千帆
1968年、東京都生まれ。1991年、テレビ朝日に入社。アナウンサーとして『ANNニュース』『OH!エルくらぶ』『邦子がタッチ』など報道からバラエティまで全ジャンルの番組を担当。1997年退社し、フリーアナウンサーのほか、企業・大学の研修講師として活躍。東京タクシーセンターで外国人旅客英語接遇研修を担当するほか、supercareer.jpで個人向け講座も