スターバックスは江蘇省昆山市で中国最大級のコーヒー加工・物流拠点を稼働させた(写真はアメリカ本社のウェブサイトより)

「中国はスターバックスにとって非常に重要な市場だ。われわれはここで巨大な成長機会を目の当たりにしている」

アメリカの大手コーヒーチェーン、スターバックスのラクスマン・ナラシムハンCEO(最高経営責任者)は9月19日、財新を含む中国メディアの取材に応じ、中国市場への積極投資を継続する方針を強調した。

「中国のコーヒー消費量は、現在は1人当たり年平均約12杯だ。日本の200杯、アメリカの380杯に比べて、まだ(成長の)初期段階にある」。ナラシムハンCEOはそう述べ、中国市場の成長余地は極めて大きいとの認識を示した。

デジタル化に325億円を追加投資

同社はこの日、江蘇省昆山市に総額15億元(約304億円)を投じて建設した中国最大級のコーヒー加工・物流拠点「スターバックス中国コーヒー・イノベーション産業パーク」を稼働させた。

この拠点では、中国国内のスターバックス全店舗に(加工済みの)コーヒーおよび関連製品を供給するほか、中国の消費者の嗜好に合わせた各種製品の開発を担う。

ナラシムハンCEOはさらに、広東省深圳市にある「スターバックス中国イノベーション技術センター」に2億2000万ドル(約325億円)を追加投資し、オペレーションのデジタル化を加速する計画も明らかにした。

スターバックスは現在、中国の約250都市に約6500店舗を展開している。2025年には、これを300都市、総店舗数9000店に拡大する方針で、中国市場での売上高を現在の2倍、営業利益を4倍に増やすことを目指している。

スターバックスの中国市場進出から23年。同社は長年にわたり、中国のコーヒーチェーン市場で首位の座に君臨してきた。しかし近年、瑞幸咖啡(ラッキン・コーヒー)や庫迪咖啡(コッティ・コーヒー)など中国資本の新興チェーンが次々に台頭し、スターバックスから市場シェアを奪っている。


中国のコーヒー市場の成長余地は大きいが、チェーン間の競争も激しい。写真は中国のスターバックスの店舗(アメリカ本社のウェブサイトより)

2023年4〜6月期には、ラッキン・コーヒーの売上高がスターバックスを初めて追い抜いた。同四半期のスターバックスの中国売上高が前年同期比51%増の8億2200万ドル(約1215億円)だったのに対し、ラッキン・コーヒーは同88%増の62億100万元(約1256億円)を記録。店舗数では、ラッキン・コーヒーは6月末時点で1万836店と中国のコーヒーチェーンとして初の1万店超えを達成。スターバックスとの差を広げている。

新興チェーンとの競争について、ナラシムハンCEOは「スターバックスは競争を歓迎する」と語り、競争を通じて中国のコーヒー愛飲家を増やすことができれば、それは(スターバックスを含む)業界全体のメリットになるとの考えを示した。

本社副社長に中国法人トップを登用

スターバックスは中国市場への積極投資を続ける一方、中国が世界に先行するデジタル化をグローバル経営にも取り入れようとしている。その意気込みが表れたのが、同社が9月18日に発表した経営幹部人事である。


本記事は「財新」の提供記事です

2021年から中国法人のCOO(最高執行責任者)を務めていた劉文娟氏が、10月2日付でアメリカのスターバックス本社の執行副社長に就任し、中国法人の共同CEOを兼務する。劉氏は中国法人のデジタル・イノベーションの責任者として、オペレーションのデジタル化を主導した実績を持つ。

(財新記者:包雲紅)
※原文の配信は9月20日

(財新 Biz&Tech)