大学と受験生のマッチングが重視される選抜入試。どう対策をすればいいのでしょうか(写真: jessie /PIXTA)

かつて推薦・AO入試とも言われていた「選抜入試」。有名大学が募集枠を増やし、これからの時代のスタンダードにもなるかもしれない、と言われています。いったいどんな対策をとればいいのでしょうか。『選抜入試の教科書』を上梓した、現役東大生の西岡壱誠さんが解説します。

大学の推薦入試・AO入試の割合が増えています。

文部科学省が2023年3月31日に公表した「大学入学者選抜の実態の把握および分析等に関する調査研究」よると、大学入試全体での一般入試の割合は49.7%に対し、学校推薦型選抜31.0%、総合型選抜19.3%で、学力で大学合格を目指す一般入試よりも推薦型・総合型(旧推薦入試・AO入試)の割合のほうが多くなっていることがわかりました。

大学入学者の半分は、選抜入試

つまり、現在の大学入学者の半分は、選抜入試で進学をしているのです。

そしてこの入試は、大学と受験生とのマッチングが重視されます。学校の評定が高く優等生を求める大学もあれば、学内の活動よりも課外活動を評価する大学もあります。選抜入試で大学に合格するためには、各大学の求める人材を理解し、自分をうまく適合させていく必要があるのです。

今回、「クラウドセンバツ」という選抜入試特化型のオンライン塾の人たちから話を聞き、「受験生が、自分がどこの大学とマッチングする確率が高いかがわかる5つの問い」を用意しました。

質問はすべて2択クイズで、この2択の答えによって、受験生がどの大学に合格できる確率が高いのかがわかるというものです。

Q1 あなたは、評定は4.0以上ありますか?それとも3.9以下ですか?
→早慶上智以上を目指せるか、そうではないか

まずは評定です。「評定は4.0以上ありますか?」というのは、「偏差値で換算した場合に早慶上智より上の大学を目指せるかどうか」ということをわける分岐点になる場合が多いそうです。

選抜入試では、学校の評定はやはり重視される場合が多いです。

もちろん評定が高いかどうかですべてが決まるわけではないのですが、基本的に評定は4.0以上かどうかというので早慶上智以上の大学を目指せるかどうかは決まってくるのだとか。もし早慶上智以上の大学を目指す場合は、普段から学校の勉強はしっかり頑張っておいたほうがよいと言えるでしょう。

英語資格はなるべく早い取得を

Q2 英語資格は、高3秋までに英検準1級を取れますか?それとも2級までの取得しか難しいですか?
→国際関係の学部を目指せるか、そうでないか
→MARCH以上を目指せるか、そうでないか

次は英語資格の有無です。国際的な分野にも門戸が開いている大学や学部を目指している場合、英検はかなり重要な指標になってきます。それも、もちろん大学にもよりますが、大体準1級を持っているかどうかが分岐点になってくるそうです。

また、国際的かどうか関係なく、基本的にはMARCH以上の偏差値帯の大学を目指す人は、英検準1級を取っている場合が多いのだとか。必須というわけではありませんが、1つの大きな指標になることは確かでしょう。

しかも、考えておかなければならないのは、できるだけ早く取らなければならないということです。

たとえば「高3の最後の英検で準1級を取ろう!」と考えたときに、もしその試験で英検を取れなかったらすべての計算が狂ってしまいますよね? そうなるのは避けなければなりませんから、できるだけ早めに、高校2年生か高校3年生の1学期のテストでは取れるようになっているのが理想だと言えるでしょう。

ちなみに、単純比較ができるものではありませんが、TOEFLならスコア80以上が大体英検準1級と同じくらいの評価だと考えられているそうです。

Q3 活動実績は、校内のものが多いですか?それとも校外の活動が多いですか?
→優等生がほしい大学を目指すべきか、面白い活動を求める大学・学部を目指すべきか

次は活動実績です。「あなたは高校時代どんな活動をしてきましたか?」という質問を選抜入試ではされる場合が多いのですが、これが校内のものが多い場合、優等生を求める大学や学部がおすすめだといいます。

例えば、真面目にコツコツやってきていて、生徒会活動などに積極的に参加しているような生徒を求める大学・学部も一定数あります。校内の活動が多かった人は、そういうところを目指したほうが、合格率が高いそうです。

逆に、学校内の活動ではなく、校外での課外活動が多い場合は、面白い活動をしている人を求める大学・学部を考えてみるといいと思います。慶應のSFC【湘南藤沢キャンパス】などの自分で起業する人が多い学部などがこれに該当しますね。

この違いは、偏差値ではなく、校風で決まります。たとえば早稲田大学は面白い活動のほうを求める傾向があり、反対に慶應大学は優等生がほしい大学だと言われています(SFCは例外)。大学のHPを確認し、しっかりと校風を見極める必要があるわけですね。

地方ごとに枠が設定されている入試も

Q4 都会出身ですか?地方出身ですか?
→地方出身の優遇が受けられるかどうか

次は住んでいる場所です。地方出身ですか?という質問は、地方出身者向けの入試を受けることができるかどうかを問う質問になります。

大学は文部科学省から、「都会と地方の教育格差を是正するための働きかけをしてほしい」という要請を受けている場合があります。それをクリアできるかどうかによって補助金が設定されている場合もあるのだとか。

なので、地方の人が優遇される入試形態というのも一定存在するのです。

たとえば早稲田大学の社会科学部の全国自己推薦は、地方ごとに枠が設定されています。

あえて言葉を選ばずに言うと、住居が「田舎」であればあるほど、合格に有利に働くと言われています。

使えるものはなんでも使ったほうがいいので、受験生の方はぜひ、このポイントは理解しておくようにするといいと思います。

ちなみに、同じように「男性よりも女性のほうを優先的に取るように」という要請がある場合もあるので、若干地方出身の女性の方が合格しやすくなるように設計されている入試もあるようです。参考にしてもらえればと思います。

Q5 やりたいことは明確ですか?それとも明確ではありませんか?
→文系・理系を目指すべきか、総合的な学問を行う学部を目指すべきか

さて、まず前提として、大学の学部には、2つの種類があります。1つは、理系と文系の、勉強内容が明確な学部です。法学部であれば法学の勉強をすることがわかりますよね? 経済学部であれば経済の勉強をすることが明確だと思います。このように、合格後の勉強の内容がある程度明確な学部がパターン1です。

もう1つは、総合的な学問を学ぶ学部です。リベラルアーツ学部とか、国際教養学部とか、そういう合格後の勉強の内容が多岐にわたるため明確でない学部がパターン2です。

そしてそのうえで、もし受験生にとって、自分のやることが明確でないのであれば、パターン1の明確な勉強内容が定まっている学部を目指すべきだと言われています。

逆に、自分のやることが明確なのであれば、パターン2の、文系と理系の垣根を超えた総合的な学びができるリベラルアーツ系の学部がおすすめです。

明確な目標があるのに、総合的な学部を選ぶ?

「え!?逆じゃないの!?」と思った人もいるかもしれません。

「明確な目標がない人が、勉強内容が明確じゃないところに行くものだと思っていた!」と。そう感じるかもしれませんが、それは大きな間違いなのだとか。

そもそも、明確な目標がない人は、選抜入試では不利です。その状態で目指しても、不合格になる可能性がとても高いです。なんとかして、きちんと明確な目標を語れる状態になる必要があります。

なぜならやはり合格する人はどんな人でも、「この学部に行ったら、こんな勉強がしたい」ということを明確に語れる状態になっているのです。

そしてそのためには、もしやりたいことがないのであれば、しっかり学部やテーマを絞って活動していく必要があります。広い学びの機会を得られるところは、逆に自分がやりたいことを語りにくいので、うまくいきません。テーマが狭いほうが、「こんなことがしたい」というのをうまく表現しやすいのです。

逆に、やりたいことが明確な場合は、勉強内容が明確ではないところに行っても、芯を持って学習に励める場合が多く、大学側にもそれをうまくプレゼンできる場合が多いです。

やりたいことが不明瞭、は不合格の典型


「やりたいことが明確じゃないから総合的なところにいこう」は不合格になる典型のようなので、みなさん気をつけてください。

いかがでしょうか? あくまでも今回協力してくださった「クラウドセンバツ」さんの、今までの受験生のデータから見えてくる傾向の話なので、すべてが100%当てはまるとは考えてほしくないのですが、こうした傾向を知っておくことは受験で有利になる要素と言えるでしょう。

みなさんぜひ参考にしてみてください。

(西岡 壱誠 : 現役東大生・ドラゴン桜2編集担当)