「やる気」が出ないとき、どう自分を律するか……それが、最終的な成果を左右します(撮影:梅谷秀司)

覚えられない、続けられない、頑張ってもなぜか成績が上がらない――勉強が苦手で、「自分は頭が悪い」と思い込んでいる人も、実は「勉強以前の一手間」を知らないだけかもしれない。

そう話すのは、中高生に勉強法の指導をしている「チームドラゴン桜」代表の西岡壱誠さんです。

「僕も昔はこれらの工夫を知らなくて、いくら勉強しても成績が上がらない『勉強オンチ』でした。でも、『勉強以前』にある工夫をすることで、『自分に合った努力のしかた』を見つけられて、勉強が楽しくなったんです。効果は絶大で、偏差値35だった僕が東大模試で全国4位になり、東大に逆転合格できました」

西岡さんをはじめとする「逆転合格した東大生」たちがやっていた「勉強以前の一工夫」をまとめた書籍『なぜか結果を出す人が勉強以前にやっていること』が、発売すぐに3万部を突破するなど、いま話題になっています。ここでは、東大生が勉強以前にやっている「やる気を高める方法」を解説します。

東大生は「やる気が出ない」にどう対処しているか

「やる気が出ません! どうすればいいですか!」


この質問は、生徒からの質問の中で、いちばん多い質問だと言っていいと思います。どんな学校のどんな生徒でも、やっぱり「やる気が出ない」は大きな悩みになっている場合が多いようです。

この「やる気がでない」という悩みは、大人になってからも同じですよね。学生であれば勉強に関して、大人であれば仕事に関して、「机に座るまでが長い」「机に座っても、『さあ、やろう!』という気になれない」と思い悩む人は多いのではないでしょうか。

実は東大生の中にも、同じ悩みを抱えている人はとても多いです。そんな中でもなんとか工夫して勉強に手をつけてきたから、彼らは東大生になれた、と言うこともできます。

そこで今日は、やる気が出ないときに東大生たちがやっている「3つの工夫」について、みなさんにお話ししたいと思います!

まずは、「行動の分解」です。

やる気を出す工夫1:行動を分解する

そもそも人は、なぜやる気がなくなってしまうのでしょうか? それは、行動を始めるときに、「やること」が膨大に見えてしまうからです。

このシーズンになると、夏休みの宿題を思い出しますね。夏休みの間に宿題をぜんぜんやらずに、8月31日になって泣きを見ていたのは私だけではないと思うのですが、夏休みの宿題は「溜め込んで」しまうとやる気が一気になくなってしまうものですよね。

そのときの心理状態を思い返すとこんな感じです。

「終わる気がしない!」「そもそもどこから手をつけていいかわからない!」と。つまり、量が膨大だと「何をやればいいのか」がわからなくなってしまうというわけです。

さて、僕は夏休みにずっとテレビゲームばかりやっていたのですが、テレビゲームはプレイヤーの「やる気」をうまく引き出す仕掛けを作っています。「この村からこの村に移動してください」「この洞窟の奥まで進みましょう」と、いろんな局面できちんと「何をするべきか」を画面に表示してくれるのです。

または、最近のスマホゲームでは、「ボックスを開いたらアイテムゲット!」「ログインしたらボーナスゲット!」と、「やるべきこと」を提示したうえで、それをクリアしたらプレゼントまでもらえるようになっているのです。

つまり、「夏休みの宿題のやる気が出ないのにゲームはやる気が出る」のは、「次にやるべき行動が明確になっていないから」なのではないでしょうか。

だからこそ、東大生はどんな物事でも、行動の細分化をします

「夏休みの宿題をやる」ではなく、「1:まずはノートを用意する」「2:そこの1ページ目に、こういうことを書き出す」「3:次にネットでこういうことを調べる」と、やるべきことを分解して考えます。心の中でやるべきことを分解して、1から順番にやっていくのです。

「この本を読む」みたいな簡単なものだったとしても、「まずは席に座る」「本を右手で持つ」「左手でページをめくる」と、本当に細かく行動や動作を分解するのです。

イメージとしては、自分の身体という名前のロボットをボタン操作で動かすような感覚です。こうして行動を分解できれば、やることが明確になって、ゲームのように1つひとつの動作を完了させていく感覚で物事に取り組めます。ぜひやってみましょう。

次は、「3、2、1の法則」です。

やる気を出す工夫2:「3、2、1の法則」を使う

やり方は非常に簡単で、何かを始めるときに「3、2、1」と口に出し、「0」のタイミングで実際にそれに手をつけるというものです。心の中で唱えるだけでもいいですが、実際に口に出したほうが有効でしょう。

例えばみなさんがやる気が出なくてベッドでだらだらしているとしましょう。そのときに、まずは先ほどのように行動を分解します。

ベッドから出るなら、「布団から出る」「身体を起こす」「ベッドから降りる」「クローゼットに行く」「着替える」「机の前に座る」「ペンを持つ」と、行動を細分化してみます。

そしてそのうえで、1つひとつの動作をする前に、「3、2、1」と口に出し、「0」のタイミングで行動を起こしていきます。「3、2、1、0」で布団から出て、「3、2、1、0」で身体を起こして、「3、2、1、0」でベッドから降ります。

時間制限がないと、人間は「だらけて」しまいます。「ちょっとスマホを見よう」「ちょっとだけ寝よう」と考えたときの、その「ちょっと」が、だらだらと1時間になってしまうわけですね。

ですから、「3、2、1」で時間制限を作るのです。カウントダウンをすることで、自分をうまくコントロールして、行動までの助走をつけるのです。

これを実践していた学生曰く、「行動の滑り台を作る」イメージなのだとか。「実際に行動する前にカウントダウンをすることで、滑り台の上から滑っていくかのように、スムーズに行動に移せるようになる」とのこと。

この方法を使えば、やりたくないことでも実践できるので、みなさん騙されたと思って、ぜひ試してみてください

最後は、「キリを悪くする」です。

やる気を出す工夫3:キリを悪くする

多くの人は、何かを実践するときに「キリよく物事を終わらせよう」とすると思います。例えば仕事でも、「あと数ページで終わるから、ここまで終わらせてから帰ろう」とかしますよね。

でも、それだとなかなか、次の日にやる気が出ないことがあるのです。

逆に、キリが悪いところで切り上げておいたら、「昨日の仕事、あとちょっとだったな。とりあえずそこからやるか」と思えるようになります。キリがいいところまで終わらせると、はじめからリセットして行動することになってしまうんですよね。「また1からやらなきゃ。大変だなあ」と思ってしまうわけです。

ゲームでは、「はじめからスタートする」と「つづきからスタートする」という2択がありますよね。そして人間はやっぱり、「つづきからスタート」のほうがやる気が出ます。0からやり直すような感覚だと、やる気が下がってしまうわけです。

だからこそ、途中の状態で勉強や仕事を投げ出すようにして、次の日にその続きからできるようにしておきましょう。もう数分で終わる仕事をあえて次の日に持ち越したり、もう数ページで読み終わる本をそのままにしたり、「もう少し」であえて止めるのです。

こうすることで、少しもやもやした感覚になるかもしれませんが、その「もやもや」が次の日のやる気につながるのです。

いかがでしょうか? やる気が出ないときには、ぜひ参考にしてみてもらえればと思います。

(西岡 壱誠 : 現役東大生・ドラゴン桜2編集担当)