リビング階段が人気です。とはいえ「リビング階段ではない間取り」ならではのメリットも見逃せません。冷暖房の効率がよく、騒音の問題もクリア、かつ、来客と家族の鉢合わせも起きない…。リビング階段を採用しない家を建てたことで、そんな快適な生活を手に入れた日刊住まいライター。暮らしやすい理由を語ります。コロナ感染時の家庭内隔離にもメリットが!

玄関ホールに折り返し階段を設置。リビング階段は不採用

1階にリビングが、2階に寝室や個室がある、2階建て注文住宅を工務店で建てた筆者。現在、夫とふたりで暮らしています(ともに30代)。3年前の家づくりの過程では、完成見学会に何度も足を運びました。

当時筆者が目にしたのは、ほとんどがリビング階段の間取りの事例。「今の時代、リビング階段が主流なのかな」と思ったものの、新居にはあえて、採用しませんでした。

わが家の生活パターンや、将来のことを考えると、リビング階段との相性はよくないと感じたのです。結果、今住んでいる家には、玄関ホールに折り返し階段を設置しました。

なぜ、リビング階段を設置しなかったのか。また、あえて、リビングとはつながらない階段にしたことで、どのようなメリットを感じているのか。詳しく語っていきます。

 

リビング階段を採用しなかった理由

リビング階段をやめようと思った大きな理由のひとつ。それは、私が極度の寒がりだからです。

リビング階段の間取りだと、暖房の熱が2階に逃げてしまい、1階が寒くならないか心配でした。もっとも、工務店の担当者の意見では、「(筆者が建てる家は)高気密高断熱の性能を備えているので、そんなに気にならないと思いますよ」とのこと。

しかし、家を建てた友達から「リビング階段は寒い」という話も聞いていました。どうやら正解は、住んでみてからでないとわかない? だったら、確実に寒くなりにくい方、つまり、「リビング階段ではない間取り」を選ぼうと思いました。

また、夫婦で生活リズムが違うことも、リビング階段をやめた理由のひとつです。夫は朝型人間で、早寝をします。一方、筆者は夜型人間。実際、今の家で夜中までリビングで過ごしています。

リビング階段の間取りだと、どうしてもリビングから寝室へ、音が伝わりやすくなるもの。筆者が夜な夜な音楽を聞いたり、スマホで友達と話をしたりしてる音が、2階の寝室にまで伝わって迷惑をかけそうだなと思いました。

 

こちらの写真は、でき上がったわが家の階段とリビングの位置関係を示すもの。玄関から見た様子です。左側に階段があり、右側にリビングの出入り口となる引き戸があります。

 

エアコンがすぐに効く快適な住まいになった

この家に住んで3年。結局、今の間取りにして、やはり正解だったと思います。まず感じたのは、冷暖房の効率のよさです。

当然、わが家をリビング階段の間取りにした場合と比較はできませんが、驚くほど早くエアコンが効きます。クーラーの場合、スイッチを入れて5分もしないうちに部屋が涼しく快適に。ちなみにわが家のLDKの広さは25畳。18畳用のエアコンを使っています。

夏場は設定温度28度、冬場は設定温度20度くらいで、風量弱でも筆者にとっては心地よい室温になります。

快適な理由は、高気密高断熱の家だから、ということもあるでしょう。実際、暖房に関しては、室内が暖かくなってからエアコンをオフにしても、暖かさが2〜3時間持続します。

筆者は寒がりなのに、エアコンの暖房も苦手。ずっとつけていると消したくなります。でも、消すとすぐに寒くなるからまたつける…。そんなもったいないことを、以前の家では繰り返していました。

今の家では、暖房をオフにしたあとも暖かさが持続するので、快適なうえにエコだな〜と思います。とくに光熱費が値上がりした昨今、これはありがたい!

来客時にあわてない、気を使わない

血筋なのでしょうか、夫の家族もやはり朝型人間。早朝から夫の家族がわが家に遊びに来ることがあります。筆者は、そのときはまだ夢の中。

もしリビング階段だったら…。起きるのが遅い筆者は、寝ぐせでボサボサですっぴん、歯磨きもしてない状態で、夫の家族の前を通らなければいけません。

それを想像すると、リビングを通ることなく、2階寝室から直接、1階の洗面所や浴室に行ける間取りにしておいて、助かりました。

一方で、筆者の友人が訪ねてきた際にも、メリットを感じています。筆者は、自分の2階の個室に友人を招くことにしています。リビングで夫がパジャマで昼寝していたとしても、問題なし。リビングを通らないので、お互い気を使うこともありません。

 

コロナの隔離生活がやりやすかった

去年、夫がコロナに感染したとき、家庭内で隔離生活をすることになりました。その際、夫は2階の寝室と2階トイレ、1階の洗面所と浴室以外は、出入りを禁止に。当然、リビングもNGです。

リビング階段でない間取りにしていたおかげで、隔離自体は、やりやすかったです。夫婦が接触する機会も、最低限に抑えることができました。

 

ちなみに、わが家のリビング出入り口の扉には、ガラス窓があります。ガラス越しに階段が見えるつくりなので、体調を崩した夫の様子を、ここからも伺えました。

 

流行りの間取りではなく、自分達の暮らしを重視

今どきは、リビング階段がスタンダード。家を建てる前は、そう思い込んでいました。完成事例やSNSを見ていると、どうしても、そんな錯覚をしてしまいそうです(もちろん、本当にリビング階段がふさわしいライフスタイルの方がいることも事実です)。

しかし、本当にそれでよいのだろうか…。筆者はじっくり、自分たち家族の生活パターンや理想の暮らしを想像しました。

朝から晩までどんな流れで生活するのか。どんな動線で家の中を移動するのか。いつもする料理は、お客さんが来たときは…。

家づくりの際に筆者は、こうしたことを紙に書き出していきました。おかげで、「生活リズムが違う夫に気を使うことになるかも」「来客が多いから、あわてることになりそう」「料理した魚のにおいが、2階に届くかも」…と見えてきたものがたくさんありました。

その時点ではっきりと、「リビング階段は自分に向かない」と意識するに至ったのです。

 

得られる情報が多いと、かえって本当に自分の暮らしにあったものが見つけにくいもの。今回、選択した階段プランが正解だったなと思えるのは、改めて自分に向き合って、「必要なもの」に気づけたから。そんなふうに、筆者は感じています。