帰省シーズン、年を重ねた親の住む実家を見て、終活を考えてしまうもの。ところが家族間のことなのに、スムーズに進まないことが多いといいます。そこで、実家の片づけを始める前に知っておくべきことを、片づけヘルパーの永井美穂さんに教えてもらいました。

みんなが悩む「実家の片づけ」。だれのため?

実家の片づけの“目的と必要性”を知っておくことは、もめないための第一歩です。片づけヘルパーの永井美穂さんに、実家の片づけを始める前に知っておくべきことを教えてもらいましょう。

●いきなり片づけの提案はNG。まず親の気持ちに耳を傾けて

50〜70代の読者の多くは、実家の片づけ問題に直面する世代。家族間のことでも、スムーズにいかないことが多いようです。

実家を片づけたいという声は、読者アンケートでも多数。しかし、いきなり提案するのは待って。まずは親の事情を聞く必要があると、片づけヘルパーの永井美穂さんは話します。
「読者の親の多くが80歳をすぎているなら、その世代は戦後思うようにものが買えなかった経験をしているはず。まだ使えるものを捨てることに拒否感をもっているかも」
 
また、親がひとり暮らしの場合は、こんな理由もあるそう。
「家をものでいっぱいにしてしまう高齢者は意外と多く、これはひとり暮らしの寂しさをもので紛らわしている場合も。そのため、片づけの必要性を感じていない可能性もあります。それなのに、たまにしか来ない娘が、親の気持ちを聞かずに片づけようとすれば、もめる原因に。親からすれば自分を否定されたような気持ちになっても仕方がないのです」

●親が元気なうちは、一緒に「生前整理」が理想的

とはいえ、床にものが散らばっていると、つまずいてケガをしたり災害時に逃げ遅れたりすることも。娘としては年老いた親の暮らしは心配です。だからこそ永井さんは親子で行う生前整理をすすめます。
「親が亡くなったあとに行う遺品整理は一気に片づくものの、それだけ手間や費用がかかります。また、親が亡くなった時点で実家に残されたものは、生きている家族の所有物に変わります。すると『遺品=親の思い出の品』という新たな価値観が生まれ、ますます片づけにくくなることも。生前に片づけておくべき理由は、親が残りの人生を心地よく安全に過ごすためです。一緒に整理すれば、お互いに思い残しも減り、すっきりとした気持ちになれるはずです」

【ポイント】遺品整理とは?

親の死後、残されたもの(遺品)の整理を家族が行うこと。「故人の遺志がなければ自由に処分できる半面、迷いが生じてしまうかも。業者に頼んだ場合は高額になることも」

つまり、片づけは親のため。親の持ちを優先しながら、一緒に進めていくという気持ちが大切です。
「一緒に片づけることで親の内面に触れることから、自分の育ったルーツを知るきっかけにもなります。生前整理は、最後の親孝行のようなもの。コミュニケーションをとりながら片づけを手助けしてみてください」

『これからの暮らしbyESSEvol.05』では今回紹介した以外に、50代〜60代の暮らし上手さんが「やめてラクになったこと」、老けない美容とファッション、どっちがおトク?、夏野菜おかずレシピなど、暮らしに役立つ情報が満載。