ロッキーズ戦に先発したパドレス・ダルビッシュ有【写真:ロイター】

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通算123勝の野茂英雄以来、日本人2人目の快挙

■パドレス 9ー6 ロッキーズ(日本時間10日・デンバー)

 パドレスのダルビッシュ有投手が9日(日本時間10日)、敵地のデンバーで行われたロッキーズ戦で5回1/3を投げ5安打4失点、4四球6奪三振の内容で今季5勝目(4敗)を挙げ、メジャー通算100勝に到達した。日本人投手としては、通算123勝を挙げた野茂英雄(ドジャースなど)が2003年に到達して以来、2人目の快挙となった。【デンバー(米コロラド州)=木崎英夫】

 100球の粘投で勝利を手にした試合後のクラブハウス。洗濯用のカートに196cmの巨体を折り、ダルビッシュは仲間たちからビールシャワーで祝福を受けた。

「メジャーでは初めて(個人として)ビールシャワーをやってもらって、すごく冷たかったですけど、うれしかったです」と笑顔で振り返った。

「打者天国」と称される高地デンバーで、昨年9月24日以来の登板。そのときは、初回にチェンジアップを本塁打されたことから、落ちないと予想したスプリットを封印。ツーシームも理想の軌道は描けず、直球とスピン系のカッター、そしてスライダーで投球を組み立てて踏ん張った。この日は、前回3日のカブス戦で好感触を得たツーシームを軸に、直球、スライダー、カット、カーブ、そしてスプリットも織り交ぜ、幅も奥行きもある本来の持ち味を出し切った。

 威力のある速球に、変化球のバリエーションの多さとその切れ味でファンを魅了し続けるダルビッシュ。12年のメジャーデビューからこの日の100球で、投球数は計2万5069球に伸びた。

代名詞の豊富な球種を磨き続けた「1ついい球があれば…じゃない」

 ここまでの11年は、豊富な球種の習得とその研磨の日々とつながっている。

「1ついい球があればずっと活躍できるかといったらそうじゃなかったり、ずっとコマンド(制球)がよければ勝てるかといったらそうじゃない。(打者との)いたちごっこが、どんどんスパンが早くなっていくというか。若いピッチャーがどんどん速い球を投げてくるし、速い球を投げるピッチャーがどんどん入ってくると、僕の速い球が遅くなってくるので。そういう面でアジャストしていくっていうのはすごく難しいですけど、でも楽しいです」

 投手と打者による技術力の綱引きで、心技体そして野球知を磨き、生き残ってきた。この間、2015年に受けた右肘の靭帯修復手術から1年2カ月の空白期間があり、さらに2018年にはその右肘を痛めてシーズンのほとんどを棒に振っている。ダルビッシュは「運という要素もすごくある」と切実な言葉を添えた。

 8月16日に37歳の誕生日を迎える。進化と変化の歩みを止めないダルビッシュ有には、変わらない思いがある。

「家族の存在というのは僕の中で本当に大きいので。妻をはじめ子どもたち、前妻とその子どもたちを含めずっと支えられてきて今があるので。本当に自分の力がほぼない中でそうやってもらっているので、本当に感謝しています」

 誰かが言った「野球は人間性だ」――。これは真実でもある。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)