起床時に首が痛い…「寝違え」、なぜ起きる? 原因&対処法を専門家に聞く
朝、起きたときに首が痛いと感じたことはないでしょうか。この症状は「寝違え」といわれていますが、痛みがひどくて首を動かせないこともあります。そもそも、なぜ首を寝違えるのでしょうか。寝違えてしまったときは、どのように対処すべきなのでしょうか。睡眠健康指導士の大久保早絵(おおくぼ・さえ)さんに聞きました。
寝返りを打たないのが原因
Q.そもそも、なぜ寝違えてしまうのでしょうか。原因について、教えてください。
大久保さん「寝違えの主な原因は、『睡眠時に長時間、寝返りを打ちにくい姿勢を維持』『首や肩回りの筋肉の凝り、ゆがみ』です。睡眠中に寝返りを打ちにくい原因は、以下の通りです」
・枕の高さが合っていない
・枕の使い方が間違っている
・うつ伏せになる癖がある
・家族と一緒に寝ていて窮屈
・体の筋肉の緊張が強い
・自律神経のバランスが乱れている
・ストレスが多い(脳がストレスを感じることで、脳の影響を受けやすい筋肉がこわばり、寝返りも制限される)
Q.睡眠中に寝返りを打たないと、なぜ寝違えてしまうのでしょうか。
大久保さん「寝返りが制限されることで、首や肩の筋肉が圧迫されて血液循環が悪くなったり、首の骨に負担がかかり、椎間関節の関節包(関節を包んでいる袋状の膜)や靱帯(じんたい)に炎症が生じたりすることが主な原因だと考えられています。
実は寝違えた状態でレントゲン検査をしても、異常が見られないケースは多いといわれています」
Q.寝違えたときの対処法について、教えてください。寝違えたときにやってはいけないことはありますか。
大久保さん「軽度の痛みであれば、安静にするだけでも症状は緩和します。無理に何かをしようとせず、自然に治るのを待ちましょう。
患部をマッサージしたり、ストレッチしたりしないでください。ストレッチをすると、逆に炎症を広げてしまう恐れがあります。無理に首を回したり、もんだりしないように気を付けましょう。
痛みが強い、またはすぐに回復しないと生活に支障が出る場合などは、患部の炎症を抑えるために、氷水を入れたビニール袋や保冷剤をタオルで包んでから、患部を10分程度冷やしてください。炎症が治まるまでは、1日に数回アイシングをすると効果的です。
しかし、炎症が治まった後も冷やし続けてしまうと逆に血流が悪くなり、症状の改善が遅くなる可能性があるので注意しましょう。
痛みがひどい場合や長引く場合は、整体院や治療院を利用するか、整形外科で消炎鎮痛剤や筋弛緩(しかん)剤などを使った対症療法を検討してください」
塗り薬で炎症が悪化する可能性も
Q.寝違えたときに市販の塗り薬を使用したり、首を温めたりしても問題ないのでしょうか。
大久保さん「寝違えたことで患部が炎症を起こしている可能性があるので、温めてしまうと炎症を悪化させてしまいます。塗り薬の場合も、その効能が血流促進というものであれば、炎症を悪化させるので要注意です。
筋肉系の痛みに関する治療の簡単な基準は、『急性期(痛みがあるとき)は冷やす』です。市販薬であっても、それが冷やすものなのか、温めたり血流を促進させたりするものなのかを基準に考えてみると良いでしょう。実際に痛みが慢性的なものであれば、温めて血流を促進させる方が回復は早まります。
あくまでも目安なので、症状が改善しない場合や悪化した場合などは、整体院や治療院、医療機関に相談することをお勧めします」
Q.寝違えは何日程度で治るのでしょうか。受診の目安について、教えてください。
大久保さん「症状にもよりますが、筋肉に炎症がある場合はたいてい3日から1週間程度で改善します。この場合、安静にしたり冷やしたりするなどして様子を見ても問題ありません。
ただし、頸部(けいぶ)ねんざのような症状が出ている場合は、改善に1〜2週間程度かかることもあります。この場合は、痛みが引いても慢性化するリスクが高くなるので、1週間たっても痛みが残っている場合は、整体院や治療院、医療機関に相談しましょう」