電子レンジの中には、ヘルツフリーに対応していない製品も

写真拡大

 電力会社から一般家庭に供給されている電気は「交流」に該当し、電気のプラス(+)、マイナス(−)が1秒間に数十回入れ替わっています。この入れ替わりの回数は、「周波数」(ヘルツ)と呼ばれていますが、地域によって異なるのをご存じでしょうか。静岡県の富士川と新潟県の糸魚川を境に、東側は50ヘルツ、西側は60ヘルツとなっているほか、50ヘルツと60ヘルツが混在している地域もあります。

 家電製品の中には、周波数を基準に製造されたものもありますが、50ヘルツの地域から60ヘルツの地域に引っ越した人が、そのまま50ヘルツの家電製品を使い続けた場合、どのようなリスクが想定されるのでしょうか。独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)製品安全広報課の担当者に聞きました。

電子レンジの使用中に発煙事故

Q.家電製品には、「周波数に関係なく使用可能な製品」「周波数が異なる地域でも使用可能なものの、性能が変化する製品」「周波数の違う地域ではそのまま使用できない製品」の3種類があると聞きます。主にどのような製品が該当するのでしょうか。

担当者「近年は、50ヘルツと60ヘルツの両方の電源周波数に対応したヘルツフリー製品が多いですが、洗濯機などのように、使用期間が長い家電製品の中には、ヘルツフリーに対応していないものもあります。あくまで目安ですが、家電製品の対応状況は以下の通りです」

■50ヘルツの地域でも60ヘルツの地域でも使用可能な製品
テレビ、ラジオ、トースター、電気こたつなど。

■50ヘルツの地域でも60ヘルツの地域でも使用可能だが、性能が変化する製品
冷蔵庫、扇風機、空気清浄機など。

■周波数が異なる地域では使用できない製品
電子レンジ、洗濯機、蛍光灯など。

Q.60ヘルツの地域で50ヘルツの製品を使うなど、居住地域の周波数と家電製品の対応周波数が異なる場合、どのようなリスクが想定されるのでしょうか。

担当者「居住地域の周波数と異なる周波数の家電製品を使用した場合、特に50ヘルツ地域専用製品を60ヘルツの地域で使用すると、モーターを使用している製品では回転数の増加による異常発熱が生じるほか、電気部品に過剰な電流が流れ、故障や発煙、発火に至るリスクが想定されます。

過去にNITEに通知された事例を確認すると、『電子レンジ』と『照明器具』でそれぞれ以下のような事故が発生しています。考えられる原因も含めて、紹介します」

■電子レンジを使用中に発煙した
50ヘルツ専用の電子レンジを60ヘルツの地域で使用したため、電子レンジ内の変圧器(トランス)に過剰な電流が流れ、異常過熱して発煙したと推定される。なお、本体には、「定格周波数に合った地域で使用すること」といった内容の注意書きが記載されていた。

■蛍光灯が点滅した後、「パチン」という音がして発煙した
60ヘルツ専用の「蛍光灯」を50ヘルツの地域で20年以上にわたって使用していたため、内部の部品が絶縁劣化(絶縁抵抗が低くなり電気が漏れやすくなっている状態)し、その後、短絡(ショート)して出火したと考えられる。

取扱説明書には、「使用する地域の周波数に合った器具を使用すること(主銘板を確認のこと)。適応しない周波数の製品を使用すると、蛍光ランプの短寿命、異常加熱などの故障の原因となる」といった内容の説明が記載されていた。

Q.家電製品の周波数は、どの部分に書かれていることが多いのでしょうか。

担当者「『50Hz専用』『60Hz専用』『50Hz/60Hz対応(ヘルツフリー)』といった形で、製品本体や取扱説明書に記載されています」

Q.50ヘルツの地域に住んでいた人が60ヘルツの地域に引っ越したときなど、以前とは周波数が異なる地域に引っ越した場合、それまで使用していた家電製品をどのように取り扱ったらよいのでしょうか。

担当者「異なる周波数の地域に引っ越したときに、それまで使っていた家電製品を引き続き使う場合は、お使いの製品の対応周波数を、本体の表示や取扱説明書で確認してください。お住まいの地域の周波数が分からない場合は、その地域の電力会社に確認しましょう。

居住地域の周波数と家電製品の周波数が異なる場合は、先述のように故障、発煙、発火のリスクがあるため、お住まいの地域の周波数に適合した製品を使用してください。スイッチで周波数の切り替えが可能な製品もあります。

また、製品の使用中に『照明が急に消える』『製品が異常発熱している』『製品から異音がする』など、異常が生じた場合はすぐに使用を中止し、メーカーなどに相談してください」

 家電製品を購入するときは、「ヘルツフリーに対応しているかどうか」を基準に選ぶと、周波数が異なる地域に引っ越したときも、家電を買い替えずに済むので便利かもしれません。