「ニキビ」と思ったのに、実は「粉瘤」だった… 両者を見分ける3つのポイント 皮膚科医が解説
皮膚に「できもの」ができたとき、「ニキビかな?」と考える人は多いと思います。しかし、実はニキビではなく、「粉瘤(ふんりゅう)」と呼ばれる腫瘍であるケースも少なからずあるようです。
見分けるのが難しいケースもある「ニキビ」と「粉瘤」。両者の違いや見分け方について、肌クリニック大宮(さいたま市)院長で皮膚科医の相馬孝光さんに聞きました。
粉瘤は「毛穴」に関係なく発症
Q.そもそも、「ニキビ」とは何ですか。
相馬さん「ニキビとは、一言でいえば『毛穴の炎症』であり、医学的名称としては『ざ瘡(そう)』といいます。主に、若年者の顔面や体の毛穴に一致して、赤いブツブツとしたできものが多発します。思春期には、皮脂腺の多い前額部(おでこ)を中心に出現することが多く、成人後はフェイスライン中心となることが多いです。その出現の仕方から『思春期ニキビ』、『大人ニキビ』などと呼称されることもありますが、医学的にはどちらも同じ『ざ瘡』です。
ニキビの原因は、(1)毛穴の詰まり(2)皮脂分泌の促進(3)ニキビ菌の繁殖の3つです。最も一般的なものは『尋常性ざ瘡』といい、患者さんのご相談のほとんどはこの病型です。尋常性ざ瘡の他には、症状の出方から区別する『集簇性ざ瘡(しゅうぞくせいざそう)』、原因から区別する『ステロイドざ瘡』や『毛包虫性ざ瘡(もうほうちゅうせいざそう)』などがあります」
Q.次に、「粉瘤」とは何でしょうか。
相馬さん「粉瘤とは、一言でいえば、皮膚に生じる『できもの』『しこり』の一種のことです。医学的名称としては、臨床名では『粉瘤』、病理組織学的には『表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)』『毛包嚢腫(もうほうのうしゅ)』などの呼称があります。
原因としては、何らかの理由によって皮膚に袋状の構造物ができ、その袋の中に剥がれ落ちた角質や皮脂がたまって、徐々に大きくなっていくことにあります。全身のあらゆる皮膚で発症する可能性がありますが、好発部位として顔面、体幹、陰部、頭部などが挙げられます。
多くの場合、皮膚が盛り上がった表面平滑な弾力のあるやわらかい『しこり』であり、可動性があります。ふくらんだしこりの中央に、残存した毛穴の開口部が黒い点として見えることがあり、強く圧迫されて開口部が破れた場合、不快な臭いのする角質が排出されることがあります。内容物が増えるにつれて風船のように少しずつ大きくなり、時に数センチ以上の大きさになることもあります。
また、嚢腫内で繁殖した細菌や、内部にたまった角質に対して炎症が起こると、化膿を起こして赤く腫れ上がり、強い痛みや発熱を生じることもあります」
Q.つまり、「ニキビ」と「粉瘤」はどう違うのでしょうか。また、実際に見た目は似ているのですか。
相馬さん「違いを判断するポイントは3つです。まずは、病型の違いが挙げられます。ニキビは『毛穴の炎症』、粉瘤は『皮下にできた風船のような袋』です。
そして見た目ですが、本来は全く異なります。通常は、ニキビは『赤い』のに対して、粉瘤は『皮膚色(常色)』をしています。ニキビの典型的な見た目は『赤いプツプツ』ですが、粉瘤は『皮膚色のドーム型のできもの』です。また、ニキビは毛穴の炎症なので、毛穴に一致して症状が出ますが、粉瘤は必ずしも毛穴と一致して発症はしません」
【ニキビ】
・病型…「毛穴の炎症」
・典型的な見た目…「赤いプツプツ」
・発症…毛穴に一致して症状が出る
【粉瘤】
・病型…「皮下にできた風船のような袋」
・典型的な見た目…「皮膚色のドーム型のできもの」
・発症…必ずしも毛穴と一致して発症するわけではない
Q.ニキビと粉瘤の治療について教えてください。
相馬さん「ニキビと粉瘤のそれぞれについて、皮膚科で行う治療方法は次の通りです」
【ニキビ】
一般皮膚科(保険診療)では、抗生物質の外用剤や『過酸化ベンゾイル外用剤』、『アダパレン外用剤』などの使用が中心です。そこへ、症状に応じて抗生剤や漢方薬の内服が加えられます。ビタミン剤を処方されている患者さんもいますが、ビタミン剤には科学的根拠はありません。
美容皮膚科(保険適用外)では、当院の場合、毛穴の詰まりには『ケミカルピーリング』、皮脂のコントロールとして『ハイドラフェイシャル』、ニキビ菌の殺菌を目的とした『エレクトロポレーション』などの治療を行っています。これら以外にも、重症のニキビに対しては『RFフラクショナルレーザー』という治療法や、イソトレチノインの内服などの治療も行います。
【粉瘤】
根治的な治療法は、手術による摘出のみです。当院の場合、通常の切除はもちろん、粉瘤の性状やサイズによっては、傷口が小さく済む『くり抜き法』という術式で治療しています。