糖尿病に関連する「し・め・じ」とは?

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 あなたは、「糖尿病」によって引き起こされる特有の「3つの病気」について知っていますか。糖尿病の患者に懸念される合併症として、「し・め・じ」と称される3つの病気が挙げられるといい、これら3大合併症の回避が重要とされています。

 糖尿病の3大合併症「し・め・じ」とは、どのような病気なのでしょうか。自身も1型糖尿病歴30年で、著書に「血糖値を自力で下げるやり方大全」(フォレスト出版)がある、内科医・糖尿病専門医の市原由美江さんに聞きました。

「し→め→じ」の順番に起こる

Q.糖尿病の「3大合併症」といわれる「し・め・じ」とは何ですか。

市原さん「糖尿病による3大合併症とは、『し(神経):糖尿病神経障害』『め(目):糖尿病網膜症』『じ(腎臓):糖尿病腎症』の3つのことで、『し→め→じ』の順番に起こります。血糖値のコントロールが悪い状態が数年続くと、徐々に進行していきます。これらは全身の動脈硬化、特に細小血管障害によるものです」

【し:神経】糖尿病神経障害

高血糖が5年程度続くと現れることが多い合併症です。大きく「感覚・運動神経障害」と「自律神経障害」に分けられます。

感覚・運動神経障害の典型的な症状は、両足の裏の違和感です。「何か膜を張った感じ」や「両足先のしびれ感や冷え」と表現されることが多いです。脱水や冷えが原因の「こむら返り」も、糖尿病神経障害の症状として起こります。

自律神経障害の症状としては、起立性低血圧(立ちくらみ)、排尿障害、便秘・下痢、またはそれの繰り返し、勃起障害などが代表的です。

【め:目】糖尿病網膜症

高血糖が5〜10年程度続くと現れることが多い合併症です。目の中の毛細血管から少しずつ出血が起こり、視界がかすんで視力が低下し、失明に至ることもある病気です。症状が出た時点では遅いため、眼科での定期的な検査が必須です。

【じ:腎臓】糖尿病腎症

高血糖が10年程度続くと現れることが多い合併症です。高血糖によって腎臓のフィルターの目が粗くなり、血液のろ過がうまくできなくなる病気です。老廃物や毒素、余分な水分、塩分などが体の中にたまらないよう、最終的には人工透析が必要となります。

Q.これら3つの合併症が起こらないようにするには、どうすればいいのでしょうか。

市原さん「これらの3大合併症を起こさないためには、過去1〜2カ月の血糖値の平均を反映した数値を示す『HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)』を7%未満にコントロールすることが推奨されています。これは、空腹時血糖が130ミリグラム未満、食後血糖が180ミリグラム未満(いずれも1デシリットルあたり)に相当します。個人差があり、これよりも血糖値がいい状態の人であっても、残念ながら合併症が出現することがあるため、可能であればより血糖値を正常に近づけることが望ましいです。

糖尿病と診断されたことのない人であれば、定期的な健康診断で血糖値やHbA1cを測定することで、糖尿病を早期に発見できます。“糖尿病予備軍”といわれている人は、規則正しい生活、バランスのいい食事、適度な運動を心掛けることが大切です。

糖尿病と診断されて定期的に通院している人は、血糖コントロールが悪い状態が続くのであれば、より効果的な薬への変更などを主治医と相談することが大切です」