食事を抜くと、どうなる?

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 食事は1日3回(朝、昼、夜)が望ましいとされていますが、中には「食費を抑えたい」「減量したい」という目的で、昼食や夕食を取らない人もいるようです。昼食や夕食を抜いた場合、体にどのような影響を与えるのでしょうか。管理栄養士の山本芽生(やまもと・めい)さんに聞きました。

脂肪がつきやすくなる

Q.ネット上では、「1日2食でも問題ない」「1日3食は食べ過ぎ」という意見も上がっていますが、食事は1日3回(朝、昼、夜)取るのが望ましいのでしょうか。

山本さん「1日3食が望ましいと考えます。1日2回の食事では、必要な栄養が十分に補給できなくなる可能性があります。特に体を作るたんぱく質は、1回の食事量で吸収できる量に限りがあるため、複数回の食事に分けて摂取する必要があります。

例えば、朝食を食べない人は比較的多いですが、朝に糖質とたんぱく質を含んだ食事を摂取すると体内時計がリセットされ、1日のリズムをつくりやすくなるといわれています。

朝食をかんで食べることによって、脳を刺激し覚醒状態を作ると同時に、エネルギーを補給できるため、日中に活発に動ける状態になります。また、おのずと代謝量が上がり、体が温まるだけでなく、頭も働きやすくなるため、仕事のパフォーマンスアップにつながります。

このほか、朝食を取ることで、胃腸も動き始め、朝の排便を促してくれるため、排便習慣を作るためにも、朝食は大切です。毎日、欠かさずに食べるのをお勧めします。

食事の回数を減らしてしまうと、栄養補給の機会を逃してしまいます。どうしても1日3食摂取するのが難しい場合、間食を交え、栄養補給の機会を増やすとよいでしょう」

Q.ある民間企業の調査によると、食費を抑えるために、昼食を取らない人もいるようです。昼食を抜いた場合、体にどのような影響を与えるのでしょうか。

山本さん「昼食を抜くと、体に脂肪がつきやすくなってしまいます。なぜなら、夕食まで空腹時間が長く続くため、どか食いにつながりやすく、食事量が増える傾向にあるからです。

どか食いをすると、血糖値が急上昇しやすく、血糖値を下げるためにインスリンというホルモンが大量に分泌されます。インスリンは、血糖値を下げる際に糖を脂肪に変えるため、大量に分泌された場合、たくさんの糖が脂肪に変わってしまうのです」

Q.ダイエットのために夕食を一切食べない人もいるようです。この場合、体にどのような影響を与えるのでしょうか。

山本さん「食事が不規則になると、体内に脂肪を蓄えようとするため、かえって太りやすくなってしまいます。

空腹時は、体内でエネルギーを作り出す必要があるため、体の組織に蓄えられている糖分をエネルギー源として使用します。その際、筋肉を分解してエネルギーにしてしまうため、筋肉量が落ちます。すると、脂肪を燃焼しにくくなり、リバウンドしやすい体になってしまうのです」

Q.「午後8時以降は食べない方がよい」とよくいわれますが、仕事の関係で午後8時以降でなければ夕食を取れない人もいると思います。この場合、午後8時以降でも何か食べた方がよいのでしょうか。

山本さん「午後8時以降の場合も、寝ている間に体を修復するための栄養素を補給した方がよいと考えます。

その際、糖質や脂質の摂取を控え、たんぱく質を豊富に含む食べ物や、食物繊維の多い食べ物を選びましょう。たんぱく質は体を修復する働きがあり、食物繊維は胃の満足感を得やすく、余分な脂肪の吸収を抑える働きがあるので、一緒に食べることで就寝中に体が修復され、肥満を防ぐことができます。

低脂肪でたんぱく質を多く含む食材は、鶏ささみ、鶏むね肉(皮なし)、豚ヒレ、イカ、タコ、貝類などで、食物繊維の多い主な食べ物は、野菜、キノコ類、海藻です。

もし昼食と夕食の間が大きく空いてしまう場合、脳のエネルギー不足により集中力が低下し、疲れやイライラが出やすくなるため、仕事の作業効率が下がる恐れがあります。それを防ぐために、夕方に脳のエネルギー源となる炭水化物の比率が高い、おにぎりやサンドイッチなどを食べるのをお勧めします」

Q.1日2食の生活を続けた場合、健康面にどのような影響を与えるのでしょうか。

山本さん「肝臓で中性脂肪やコレステロールの合成が高まり、脂質異常症のような生活習慣病に発展しやすくなります。また、欠食が増えることによって、インスリンを分泌するすい臓に大きな負担をかけることにつながり、糖尿病を発症する可能性があります。

脂質異常症や糖尿病は血管に負担をかけるため、放置してしまった場合、動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞のような命に関わる病気に発展してしまうケースもあります」

昼食にお勧めの料理は?

 なお、山本さんは、昼食時に比較的安く購入でき、栄養価の高い食べ物について、以下の弁当・ご飯系、総菜系のメニューをお勧めしています。炊いた白米を自宅から持参すれば、総菜と組み合わせができるほか、量に応じて野菜やたんぱく質を組み合わせると、栄養のバランスが良くなるということです。

(弁当・ご飯系)
・幕の内弁当
・中華丼
・鶏五目の炊き込みご飯とおかず
・アジのほぐし身ご飯
・鶏のユズこしょう焼きとだしご飯

(総菜系)
・鶏肉のトマト煮
・豚汁
・八宝菜
・サケの西京焼もしくは塩焼き
・サバのみそ焼きもしくは塩焼き

 健康のためにも、1日3食しっかり食べるとともに、バランスのよい食事を心掛けましょう。