●CineBench / PCMark / Procyon / POV-Ray / TMPGEnc / 3DMark

先日IntelのハイエンドであるCore i9-13900KSの性能評価結果(記事はこちら)をお届けしたが、これに引き続き今度はAMDのハイエンドであるRyzen 9 7950X3Dの性能評価結果をお届けしたい。

Photo01: 3D V-Cache搭載Ryzen 7000シリーズの性能を検証する

○片方向のDieのみ3D V-Cacheを搭載

ベンチマークの結果をご紹介する前に、まず仕組みについて簡単にご紹介したい。今年のCESにおけるAMDの基調講演の紹介(記事はこちら)の中で筆者は「Ryzen 9については(2)の工程を省き、つまり32MBの3D V-CacheのダイをZen 4のダイの上に載せる格好になっている。」と書いたのだがこれは間違いで、片方のダイは32MB L3のまま。もう片方のダイにのみ64MBの3D V-Cacheを搭載するという非対称構成になっていた(Photo02)。この理由について、「片方だけに3D V-Cacheを乗せてもさして性能に差は無かった」そうだが、AMDとしては

3D V-Cacheなし

32MB V-Cache搭載

64MB V-Cache搭載

の3つのダイを作るのは嫌だったようだ。まぁ極限までコンポーネントを減らす事で歩留まりを引き上げると共に柔軟性を最大限に確保するのがAMDの基本方針だからこれは当然理解できる。

Photo02: 3D V-Cacheが搭載されているダイはメモリアクセスの頻度を大幅に減らせる半面、3D V-Cacheを搭載しているので温度を余り上げられない(=動作周波数を上げにくい)。一方搭載されていないダイは熱的な制約がその分少ないので動作周波数を上げやすいという訳だ。同じダイでありながら、性格が異なる特性になったのは面白い。

ただそうなると、2つのダイの扱い方に差をつける必要がある。マルチスレッドでフルに動く処理(CineBenchとかPOV-Rayなどその最右翼だろう)は両方のダイをフルに使うからいいのだが、シングルスレッド処理が多いもの(3Dゲームがその代表例だろう)では、なるべく3D V-Cacheを搭載したダイを使う様にしないと、折角の3D V-Cacheが遊んでしまう事になる。このあたりは後述するが、AMDはこれをソフトウェア的に対処した。その分OSのインストールの際の処理がひと手間増えてしまったが、ただこれは今回は製品発表前の評価段階だからという話で、製品出荷後以降はもう少し洗練された手順が提供される事を期待したい。

さて問題の性能であるが、これがなかなか興味深い。Photo03はゲーム性能をCore i9-13900Kと比較したもの、Photo04はRyzen 9 7950Xと比較したものだ。既にCore i9-13900KSのベンチ結果で紹介している通り、いくつかのベンチマークはRyzen 9 7950Xでも互角の性能を示しているが、そうでないものに関しては結構大差がついていた。このPhoto03とか04を見ると、そうして大差がついていたゲーム(Watchdog:Legionなどその代表例である)での性能上昇ぶりが著しい訳で、これはなかなか楽しみである。

Photo03: 脚注を読んでをGPUに何を使っているのかが書いてない辺りがアレなのだが、前後の脚注からするとGeForce RTX 3080 Tiらしい。

Photo04: こちらも恐らくGeForce RTX 3080 Tiを使った場合のケースと思われる。

ところでこれを実現するために、AMDは新しく3D V-Cacheをゲームに最適化するためのドライバ(Photo05)と、PPM(Processor Power Management)用のドライバ(Photo06)である。加えて、新しくCurve OptimizerとPrecision Boost Overdriveが有効になっており(Photo07)、これを併用する事で更に性能を引き上げられるとする(Photo08)。ちなみに効率という意味では、同じスコアを出すために必要な消費電力はRyzen 9 7950Xと比較しても20W以上下がるとしており(Photo09)、このあたりは検証しておくべきだろう。

Photo05: ここに書いてあるように、プロファイルを自動的に測定して、利用するダイを3D V-Cacheありを使うか無しを使うかをダイナミックに切り替える仕組みである。

Photo06: 通常ゲームなどが動く場合は、より高速なダイ(≒3D V-Cacheを搭載したダイ)を使わせるために、もう片方のダイを休止状態にする。が、この状態でシステム全体のダイのマルチタスクの負荷が増えて来た場合、自動的に休んでいたダイを復帰させてシステム負荷を減らす仕組み。

Photo07: ただし倍率設定にはロックが掛かっている。まぁ温度が上がりすぎると物理的に問題が出るので、これは妥当な判断だろう。

Photo08: PBO(Precision Boost Overdrive)の効果が余り無いのは、温度上昇を抑えるために低めに閾値が設定されているためだろう。

Photo09: まぁこの部分ではCore i9-13900Kでは相手にもならないのは仕方がないところだろう。

最後にラインナップであるが、Ryzen 9 7950X3D及びRyzen 9 7900X3Dは2月28日から出荷開始される一方、Ryzen 7 7800X3Dは4月6日発売との事である。Ryzen 9 7950X3Dの米国での値段はRyzen 9 7950Xと同じ、Ryzen 9 7900X3DはRyzen 9 7900Xの$50増しというなかなか絶妙なお値段である。

Photo10:ちなみにRyzen 9 7950X3DとRyzen 9 7900X3Dは、日本では3月3日の午前11時に発売開始との事。

ちなみに日本では3月3日の午前11時に発売開始との事。予想販売価格は

Ryzen 9 7950X3D \111,800

Ryzen 9 7900X3D \95,800(いずれも税込み)

との事である。

○評価機材

今回評価したのは、Ryzen 9 7950X3Dのみである(Photo11〜14)。CPU-Z(Photo15)及びWindowsからも問題なく認識された(Photo16)。

Photo11: 左に白く"AMD 3D V-Cache Technology"のロゴが入ったのが違い。パッケージサイズそのものはRyzen 9 7950Xのものと一緒。

Photo12: カバーが手前に開くのも一緒。CPUの奥はただの空きスペース。

Photo13: CPUパッケージは従来のRyzen 9 7950Xと完全に一緒。シルクのみが違う格好だ。

Photo14: 当然裏面も差は無し。

Photo15: L3が96MB+32MBになっているのが判る。

Photo16: これはまだチップセットドライバ類をインストールする「前」の状態である。

ところで今回マザーボードにはMSIのMEG X670E ACEを急遽調達した。これにはちょっと訳がある。AMDによればRyzen 9 7950X3Dを利用するための最小条件は

SBIOS based on AMD Combo AM5 PI 1.0.0.5aRC2 + SMU 84.79.215

Windows 10 Version 1903 Build 18362.30 with Virtualization-based security not enabled or Windows 11 version 21H2 build 22000.613 with Virtualization-based security enabled

である。OSの方はWindows 11 version 22H2なので問題ないとして、問題はBIOSの方である。Ryzen 9 7950Xの評価に利用したASUS TUF Gaming X670E-PLUSの最新BIOSであるVersion 0821は"AGESA version to Combo AM5 PI 1.0.0.3 patch A+D"ベースのものであり、残念ながら条件を満たしていない。実際装着してもブートしなかった。

今回AMDはこの対応BIOSを4種類のマザーボード(ASUS ROG CrossHair X670 Hero/MSI MEG X670E ACE/ASRock X670E TAICHI/GIGABYTE X670E AORUS MASTER)にのみ提供しており、それもあって急遽MSIのMEG X670E ACEを借用して利用した次第である。多分出荷開始頃までにはこの4つ以外のマザーボードにも、順次対応BIOSが提供される事を期待したい。

話を戻すと、手順としてはまずRyzen 9 7950X3D「以外」のプロセッサ(今回は筆者手持ちのRyzen 7 7700Xを利用)を使ってブート後、BIOSをAMDより提供されたものに置き換え、次いでCPUをRyzen 9 7950X3Dに置き換えた。Photo15はこの時点でのキャプチャである。ただここから幾つか手順がある。

(1) BIOS SetupでAMD CBS(Photo17)→SMU Common Options(Photo18)→CPPC Dynamic Preferred Cores(Photo19)をAutoに設定する。

(2) msinfo32(システム情報)を確認し、Virtualization-base SecurityがRunningになっているかどうかを確認する。日本語だと「仮想化ベースのセキュリティ」が「実行中」かどうかである。もし実行中でなければ、実行中にする(Photo20)。

(3) Microsoft Storeで"Xbox Game Bar"を開き、最新版にUpdateする(Photo21,22)。

(4) AMD Chipset Driverをインストールする。その際にAMD PPM Provisioning File DriverとAMD 3D V-Cache Performance Optimizer Driverがインストールされる事を確認する(Photo23)。

(5) 再起動後、デバイスマネージャを立ち上げてシステムデバイスの下に"AMD 3D V-Cache Performance Optimizer"と"AMD PPM Provisioning File"があるのを確認する(Photo24)。

(6) 「コンピュータの管理」→「サービス」で一覧を表示させ、"AMD 3D V-Cache Performance Optimizer Service"が動いている事を確認する(Photo25)。

(7) Task Managerを立ち上げ、プロセス詳細画面で"amd3dvcacheUser.exe"が稼働している事を確認する(Photo26)。

(8) システム管理者としてコマンドプロンプトを立ち上げ

cmd.exe /c start /wait Rundll32.exe advapi32.dll,ProcessIdleTask

というコマンドを実施する(Photo27)。

(9) 最後にXbox Game Barをもう一度立ち上げ、フィードバックページでKGL Version LoadedとKGL Service Versionが同じであることを確認する(Photo28)。

以上で手順は終了である。ちなみにこの作業終了後にTask Managerでパフォーマンス表示を行うとこんな感じ(Photo29)。先のPhoto16を見比べて頂けると違いが判るかと思う。

Photo17: 普段はまず触らない設定項目である。

Photo18: この項目そのものは以前からある。触ったのは今回初めてだが。

Photo19: 普通はAutoになっている筈なので、これは確認という意味合いが強い。ちなみにこの"CPPC Dynamic Preferred Core"の項目は恐らく今回追加されたものである。

Photo20: 幸い筆者の環境では実行中であった。もし無効化されていた場合、「設定」→「プライバシーとセキュリティ」→「Windowsセキュリティ」→「Windowsセキュリティを開く」→「デバイスセキュリティ」→「コア分離の詳細」→「メモリ整合性」をオンにして再起動する。

Photo21: Update前のバージョンは5.822.11281.0。

Photo22: Update後のバージョンは5.823.1271.0になった。

Photo23: 赤枠は筆者が追加。

Photo24: これで無い場合はチップセットドライバのインストールが失敗している事になるので、(4)のやり直しとなる。

Photo25: ここで実行中でない場合、サービスの開始あるいは再起動を行って実行中にする。またスタートアップの種類が自動になっていなかったら、自動にする。

Photo26: これが立ち上がってないとすると、(5)が正常に動作していないことになるので、(5)でサービスを一旦止めてからサービスを再起動することになるだろう。

Photo27: ちなみに完了までには結構かかる(ちゃんと時間は測定していないが、30分位だったと記憶している)。

Photo28: AMDの説明ではここがVersion 2175だったが、今回試したら2221になっていた。勿論バージョンが同じなら特に問題は無い。

Photo29: Photo16の時は、3D V-Cacheが搭載されていないダイを使っているが、ドライバ類のインストール後は3D V-Cache搭載のダイを利用する様に変わった関係で、利用している仮想CPUが#16〜#31になっている。

さて表1に今回のテスト機材を示す。今回はCore i9-13900KSの性能評価結果と同じ環境、同じテストを実施している。例外はLinpackで、RyzenではIntelのLinpackは動作しないのでテストを実施していないし、グラフからも省いた(ので、微妙にグラフの番号が前回と異なっている)。

そんな訳でグラフ中の表記は

13900K :Core i9-13900K

13900KS:Core i9-13900KS

7950X :Ryzen 9 7950X

7950X3D :Ryzen 9 7950X3D

となっている。また解像度表記も何時もの通り

2K :1920×1080pixel

2.5K:2560×1440pixel

3K :3200×1800pixel

4K :3840×2160pixel

とさせていただく。またゲームの画面設定は前回説明した通りなので、今回は割愛する。

○◆CineBench R23(グラフ1)

CineBench R23

Maxon

https://www.maxon.net/ja/cinebench

グラフ1

ということでまずはこちらから。まぁ予想通りであるが、CineBenchでは性能の向上は無いというか、微妙にスコアが下がっている。これは当たり前の話で、Ryzen 9 7950XがBase 4.5GHz/Boost 5.7GHzなのに対してRyzen 9 7950X3DはBase 4.2GHz/Boost 5.7GHzであり、しかもTDPが低いということはそれだけBoost状態の時間が短くなるという話なので、それは性能が落ちるのは仕方がない。勿論Memory Accessに依存するようなアプリケーションであればL3キャッシュの容量増加でこれがカバー出来て性能が上がるシーンもあるのだろうが、少なくともCineBenchではそうした状況ではないようだ。

○◆PCMark 10 v2.1.2574(グラフ2〜7)

PCMark 10 v2.1.2574

UL Benchmarks

https://benchmarks.ul.com/pcmark10

グラフ2

グラフ3

グラフ4

グラフ5

グラフ6

グラフ7

ではPCMark 10では? というとこれも同じ。概ね、Ryzen 9 7950Xの1〜2%落ちという結果になっている。勿論厳密に言えば色々差はあって、例えばEssentials(グラフ4)のVideo ConferencingとかProductivity(グラフ5)のSpreadsheetsとかだとその差が非常に少ないのは、それなりにメモリアクセスがあって、これを3D V-Cacheで補える分性能差が少ないのだし、Digital Contents Creation(グラフ6)のPhoto Editingでは最高速になってたりするわけで、効果が無いわけではない。Application(グラフ7)のExcelなどもその例だろう。ただ動作周波数がやや低い分、スコアが若干悪化するのは致し方ないだろう。

○◆Procyon v2.1.657(グラフ8〜11)

Procyon v2.1.657

UL Benchmarks

https://benchmarks.ul.com/procyon

グラフ8

グラフ9

グラフ10

グラフ11

こちらも結果はPCMark 10と同じようなものだ。Office Productivity(グラフ11)のOutlookの様にむしろ性能が上がるケースもあるだろうが、殆どの場合ではCPUの動作周波数が効果的なケースであり、そうなるとTDPの枠が厳しいRyzen 9 7950X3Dが不利なのは否めない。

○◆POV-Ray V3.8.2 Beta2(グラフ12)

POV-Ray V3.8.2 Beta2

Persistence of Vision Raytracer Pty. Ltd

http://www.povray.org/

グラフ12

これもCineBenchの延長である。こちらも32MB L3で十分収まる範囲であり、それもあってやはりRyzen 9 7950X3DはRyzen 9 7950Xから若干落ちる。面白いのはCineBench R23だとSingle Threadが0.4%、All Threadで4.3%の低下なのに対し、POV-RAYだとOne CPUが2.3%、All CPUだと0.4%と落ち方の傾向が異なる事だ。とは言え、落ちている事そのものに違いはない。

○◆TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.26.29(グラフ13)

TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.26.29

ペガシス

http://tmpgenc.pegasys-inc.com/ja/product/tvmw7.html

グラフ13

こちらもやはりメモリアクセスの頻度低下よりもCPU Performanceの方が効くようで、Ryzen 9 7950X3DはRyzen 9 7950Xよりもややエンコード速度は落ちる。とは言え、Core i9-13900K/13900KSよりは優秀な成績を残している辺りは、十分という言い方もできるのだが。

○◆3DMark v2.25.8056(グラフ14〜17)

3DMark v2.25.8056

UL Benchmarks

https://benchmarks.ul.com/3dmark

グラフ14

グラフ15

グラフ16

グラフ17

さて、ここからがRyzen 9 7950X3Dの本領発揮である。まずOverall(グラフ14)を見ると、WildLifeとかNightRaid、TimeSpyなどではCore i9-13900K/KSにややビハインドがあるが、負荷が大きくなるほど相対的にRyzen 9 7950X3Dのスコアが上がっている。FireStrike ExtremeとかSpeedWayは一番高速だし、FireStrike UltraとかPortRoyalなどでも性能向上が明確になっている。これはGraphics Testの結果(グラフ15)も同じである。Physics/CPU Test(グラフ16)に関しては、そもそもメモリアクセスがボトルネックになりそうなシチュエーションが考えにくい(NightRaidはちょっと謎)からまぁ妥当だが、Combined Test(グラフ17)では解像度が上がると間違いなくメモリアクセスがボトルネックになる事もあって、FireStrike UltraでRyzen 9 7950X3Dが最高速なのは腑に落ちる。要するに、負荷が高い3Dゲームでは、Ryzen 9 7950X3Dの3D V-Cacheが非常に効果的に働きそう、ということだ。

●ゲームその1:Borderlands 3 / Cyberpunk 2077 / F1 22

○◆Borderlands 3(グラフ18〜24)

Borderlands 3

2K Games

https://borderlands.com/ja-JP/

グラフ18

グラフ19

グラフ20

グラフ21

グラフ22

グラフ23

グラフ24

結果(グラフ18〜20)を見ると、2.5K以降はともかく2Kで明確にRyzen 9 7950X3Dがトップになっている。もともとBorderlands 3はRyzen 9 7950Xも高速なゲームであるが、Ryzen 9 7950X3Dはこれを上回っている。しかも比較的CPU性能が出やすい最大フレームレートでもRyzen 9 7950X3Dは2Kでトップの性能であり、確かに高速に実行できていることが判る。フレームレート変動を見ると、2K(グラフ21)の70秒〜90秒付近が特に性能差が判る部分だし、また全体としてCore i9-13900K/KSに見られるスパイク状のフレームレート低下(Ryzen 9 7950Xにも、わずかながらある)が一切ないあたりがグラフ18の結果に繋がったと考えられる。

○◆Cyberpunk 2077(グラフ25〜31)

Cyberpunk 2077

CD PROJEKT RED

https://www.cyberpunk.net/us/ja/

グラフ25

グラフ26

グラフ27

グラフ28

グラフ29

グラフ30

グラフ31

結果(グラフ25〜27)を見ると、全体的にまだちょっとCore i9-13900K/13900KSの方がフレームレートは上ではあるが、それでもRyzen 9 7950Xに比べるとその差はグンと小さくなっており、また最大フレームレートも向上しているあたりは明確にCPU性能の向上がある、として良いと思う。

フレームレート変動(グラフ28〜31)を見ると、2Kはまだしも2.5Kだと殆どCore i9-13900K/KSと差が無いレベルになっているし、その2KでもRyzen 9 7950Xからの性能向上は明白である。

○◆F1 22(グラフ32〜38)

F1 22

EA Sports

https://www.ea.com/ja-jp/games/f1/f1-22

グラフ32

グラフ33

グラフ34

グラフ35

グラフ36

グラフ37

グラフ38

結果(グラフ32〜34)を見ると、数字的に言えばまだ平均フレームレートで0.5〜1fpsほどCore i9-13900K/13900KSに及ばない事になるのだが、グラフを見る限りではそこまでの差があるか? というとまぁ同等扱いして良い気がする。最大フレームレートも、Core i9-13900KSには若干負けるもののCore i9-13900Kは完全に凌いでいるし、最小フレームレートも高めである。フレームレート変動(グラフ35〜38)をみても、もう2Kの時点で明確な差がある箇所が見当たらないほどで、これは同等とすべきだろうと判断できる。

●ゲームその2:Far Cry 6 / Hitman 3 / Metro Exodus

○◆Far Cry 6(グラフ39〜45)

Far Cry 6

Ubisoft Entertainment

https://www.ubisoft.com/ja-jp/game/far-cry/far-cry-6

グラフ39

グラフ40

グラフ41

グラフ42

グラフ43

グラフ44

グラフ45

Ryzen 9 7950Xから大きく性能を改善したのがこちら。結果(グラフ39〜41)を見れば明白である。勿論2Kに関して言えば平均/最大/最小フレームレート共にCore i9-13900K/13900KSにまだ一歩及ばない感はあるが、それでもかなり近いところまで肉薄している。フレームレート変動(グラフ42〜45)でもこれは明白で、特に2Kの30〜45秒あたりはCore i9-13900K/13900KSを凌いでいるあたり、性能差はかなり小さいと考えて良いかと思う。

○◆Hitman 3(グラフ46〜52)

Hitman 3

IO Interactive A/S

https://www.epicgames.com/store/ja/product/hitman-3/home

グラフ46

グラフ47

グラフ48

グラフ49

グラフ50

グラフ51

グラフ52

結果(グラフ46〜52)を見ると、Ryzen 9 7950Xから大きく性能を改善したのみならず、Core i9-13900K/13900KSを凌ぐ性能を発揮している。フレームレート変動(グラフ49〜52)を見ても全体的に高めで推移しており、かなり良い成績として良いと思う。

○◆Metro Exodus PC:Enhanced Edition(グラフ53〜59)

Metro Exodus PC:Enhanced Edition

4A Games

https://www.metrothegame.com/

グラフ53

グラフ54

グラフ55

グラフ56

グラフ57

グラフ58

グラフ59

結果(グラフ53〜55)を見ると、全体的にRyzen 9 7950Xからの性能向上は明白だが、Core i9-13900K/13900KSに追いつくにはもう一息といったところだろうか。とは言え、最大フレームレートはかなりCore i9-13900K/13900KS寄りになっているし、最小フレームレートも上がっている辺り、明確に3D V-Cacheの効果が見て取れる。

フレームレート変動(グラフ56〜59)を見てみると、例えば2Kの場合で言えば、殆どの所ではフレームレートがCore i9-13900K/13900KSと変わらないのだが、負荷が増える部分(15秒付近とか27秒付近、45秒付近、60秒前後)でちょっと明確にフレームレートが落ちているのが判る。もっともこうした負荷が増えるところは同時にCore i9-13900K/13900KSもフレームレートが落ちている訳で、なのでこの差をどこまで体感できるか? というと微妙な感じではあるのだが。

●ゲームその3:The Division 2 / Shadow of the Tomb Raider / Watch Dogs:Legion

○◆Tom Clancy's The Division 2(グラフ60〜66)

Tom Clancy's The Division 2

Ubisoft

https://www.ubisoft.co.jp/division2/

グラフ60

グラフ61

グラフ62

グラフ63

グラフ64

グラフ65

グラフ66

結果(グラフ60〜62)を見る限り、Ryzen 9 7950X3DはもうCore i9-13900K/13900KSと同等と考えて良い程度の性能に見える。最大フレームレートでもこれは明確だ。フレームレート変動(グラフ63〜66)でも、差があるとは言い難い程度で、同等と考えて良いだろう。少なくとも、明確に差があったRyzen 9 7950から比べると大きな性能向上と言える。

○◆Shadow of the Tomb Raider(グラフ67〜73)

Shadow of the Tomb Raider

SQUARE ENIX

https://tombraider.square-enix-games.com/en-us

グラフ67

グラフ68

グラフ69

グラフ70

グラフ71

グラフ72

グラフ73

結果(グラフ67〜69)では一応Ryzen 9 7950X3Dが最高速ではあるのだが、御覧の通り明確な差が付くほどか? というと難しい。そもそもRyzen 9 7950Xがこれまで2Kでは最高速であり、そこから3fps程の向上があったことを考えると、1%を超える性能向上という事になるのだが、まぁそこまで大きな差か? と言われると難しい。

ただフレームレート変動(グラフ70〜73)を見ると面白いのだが、Ryzen 9 7950Xでは75秒付近の負荷が軽いところで大きくフレームレートを上げているが、Ryzen 9 7950X3Dはここはそこそこで、その代わり120秒あたりからの比較的負荷が重そうな部分で明確にフレームレートを引き上げている。またRyzen 9 7950Xは40秒手前と50〜60秒の辺りでスパイク状にフレームレートがしばしば落ちており、これが平均フレームレートを下げる要因になっているのだが、Ryzen 9 7950X3Dはこのスパイクが殆ど無い(皆無ではないが、かなり頻度が少ない)。Ryzen 9 7950X3Dが最高速なのはこのあたりに起因するようだ。

○◆Watch Dogs:Legion(グラフ74〜80)

Watch Dogs:Legion

Ubisoft

グラフ74

グラフ75

グラフ76

グラフ77

グラフ78

グラフ79

グラフ80

圧倒的に性能が向上したのがこちら。結果(グラフ74〜76)でも判るように、2KのシーンではRyzen 9 7950Xと比べて40fps以上、Core i9-13900K/13900KSと比較しても20fps以上フレームレートを引き上げている。2.5KでもまだCore i9-13900K/13900KSと比べて15fps以上の差があり、その性能差は明確と考えて良いだろう。

フレームレート変動(グラフ77〜80)でもこれははっきり見て取れる。2K(グラフ77)ではRyzen 9 7950X3Dのグラフは他と完全に分離しており、明確な性能差が明らかである。2.5Kでもまだかなり分離しており、これはもうCPUの性能差としか言いようがない。

●ゲームベンチマーク総評 / 消費電力測定 / 考察

○◆ゲームベンチマーク総評(グラフ81)

なかなか微妙な優劣という感じなので、今回行った9つのゲームベンチマークについて、2Kにおける平均フレームレートをまとめたうえで、Core i9-13900Kのフレームレートを100%とした場合のそれぞれの平均フレームレートの比をまとめたのがグラフ81である。

グラフ81

AMDはRyzen 9 7950Xを"World's Fastest Gaming Desktop Processor"としている訳だが(Photo03,04参照)、そこまでの性能差があるか?というと微妙なところではある。この9つのベンチマーク性能差の相乗平均を取ると

ということで、確かに最高速ではあるのだが、その主な要因はWatch Dogs:Legionの大きな伸びであって、これが無いとCore i9-13900KSと同等程度に収まるだろう。とは言え、一応最高速であることは間違いない。ただ筆者的には、Ryzen 9 7950X3Dの真価はこのフレームレートの伸びでは無いと考えている。という事で筆者が真の価値と考える消費電力の結果に移りたい。

○◆消費電力測定(グラフ82〜88)

冒頭にも書いたが今回Linpackの追加測定は無かったのでグラフに入れていない(ので気になる方はこちらのCore i9-13900KSのレビュー記事をご覧頂きたい)ということで、Sandra 2021のDhrystone/Whetstone(グラフ82)、CineBench R23(グラフ83)、TMPGEnc Video Mastering Worksで4Streamトランスコード時の最初の240秒(グラフ84)、3DMark FireStrike Demo(グラフ85)、Metro Exodus(2K)(グラフ86)の消費電力変動と、それぞれの平均値(グラフ87)、及び待機状態との差(グラフ88)をまとめてみた。

グラフ82

グラフ83

グラフ84

グラフ85

グラフ86

グラフ87

グラフ88

今回Ryzen 9 7950XとRyzen 9 7950X3Dではマザーボードが異なり、正直MEG X670E ACEの方がやや装備が豪華で、その分待機時の消費電力も5Wほど増えている。なのでグラフ87を見る場合にはこの差を考慮して頂く必要がある。その意味ではグラフ88が実情に近いと思う(ちなみにRyzen 9が待機時消費電力が多い理由は、恐らくX670チップセットのせいである。これ、B650とかにすればCore i9のZ680チップセットと同等に収まるように思う)。ということでグラフ88を見ると、Ryzen 9 7950X3Dの圧倒的な省電力性の高さが浮き彫りになったように思う。一番顕著なのはMetro Exodus 2Kの結果だ。Ryzen 9 7950Xと比較しても50W、Core i9-13900K/KSと比較して100W以上省電力というのは、大きなアドバンテージである。ぶっちゃけ、ゲームのフレームレートを上げるにはCPUに100W余分に喰わせるより、GPUに100W余分に喰わせた方が現時点では効率的である。昨今の電気代高騰の状況で、同じランニングコストでゲームを遊びたければ、GPUをワンランク上げる方が効果的なのは明白である。

もっと言えば、Core i9-13900KSが2Kでの平均フレームレートが153.4fpsなのに対し、Ryzen 9 7950X3Dは148.8fps。その差は4.6fpsほど、比率で言えば3.1%ほどRyzen 9 7950X3Dの方がフレームレートは低い事になる。が、果たしてここで3.1%のフレームレートの低さが、どれだけプレイ性を損なっていると言えるだろうか? その一方で消費電力は124.6W低い。毎日1時間プレイするとして、1か月の電気量の差は3.8kWh弱になる。ちょっと無視できない電気量だ。

表2/表3/表4

同じようにDhrystone/Whetstoneの効率を表2に、CineBenchの効率を表3に、TMPGEnc Video Mastering Worksの4stream Encodeの効率を表4にまとめた。ブルーが最高効率の結果である。CineBenchの1 ThreadではCore i9-13900Kに大きく水をあけられているし、All Threadでは僅差でRyzen 9 7950Xに負けているが、Dhrystone/WhetstoneやTMPGEnc Video Mastering Worksの効率は非常に高い事がお分かりいただけるかと思う。今回測定は行っていない(休止期間が多い関係で、処理中のみの消費電力測定を行うのが困難なため放棄した)が、PCMark 10とかProcyonに代表されるアプリケーションでも、性能は確かに低いがその分消費電力も低いと想像され、効率そのものはかなり良いと思われる。そもそもRyzen 9 7950X3Dクラスになると、性能が低いといってもそれは相対的なものであって、絶対的な処理性能としては普通のユーザーが使うのに不自由さを感じさせるようなものではないだろう。それでいて消費電力が低い、というのはやはり大きなアドバンテージだと思う。

○考察 - 実用かロマンか? X3Dとても実用的

ということでRyzen 9 7950X3Dの性能をご紹介した。とりあえず筆者の評価としては、「これはお勧め」である。そもそもRyzen 7000シリーズの速報版の考察(記事はこちら)で「その一方で、場合によってはAlder Lakeを凌ぐ消費電力になってしまったのは、ちょっと残念である。」と書いたわけだが、Ryzen 9 7950X3Dは大分(平均して50Wほど)消費電力も下がり、その一方で性能はそれほど落ちていない訳で、非常に魅力の増した製品になったと位置づけたいと思う。しかも価格は$699で据え置きなのだから、どちらを買う? と言われれば迷う余地はない。ハイエンド製品を狙っているユーザーには強くお勧めしたい。

もっともその一方で、OCに魅力を感じているユーザーには全くお勧めは出来ない。そうしたユーザーには、Core i9-13900KSの方がずっと向いているだろう。価格は同じで、消費電力は多いが遥かに上まで回る。もう実用性というよりもロマンを追求する路線向けであり、ロマン枠の製品に消費電力云々を言うのは野暮だろう。

強いて言えば、Ryzen 7000シリーズの完全版の考察(記事はこちら)で書いたように、エンコードとかをメインにするのでなければRyzen 9 7900Xでも十分という話もあり、その意味ではRyzen 9 7900X3Dも一緒に評価して見たかったところではある。ただRyzen 9 7900Xが市販価格で6〜7万で販売されている事を考えると、予想価格はちょっと割高感があるのは否めないのだが。

ただ筆者としては、4月のRyzen 7 7800X3Dの方が気になるところだ。今回の結果を見ると、Ryzen 7 7800X3Dでもかなり行けそうな気がしなくもない。手持ちのRyzen 7 7700XをRyzen 7 7800X3Dで置き換えるべきかどうか、早く試してみたいものである。