50代から考える「老後の住まい」。住宅ローン完済期限の理想は?
心配ごとが多い老後のこと。50代を過ぎると、住まいのこと、夫が亡くなった後のこと…そんなことを考えるようになります。今回、ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんに備えておきたいことについて伺いました。
この先どこで、どう暮らす?50〜60代半ばまでに考えたい住まいのこと
住宅ローンが完済できるのはいつを予定していますか? 残金はあといくらあるでしょうか。今の住まいは、高齢になっても快適に暮らせる環境でしょうか?
まだまだ元気な50代、60代ですが、そろそろ終の棲家について考え始めておきたい時期です。ここでは特に、住宅にまつわるお金について考えてみましょう。住居費は固定費の中でも大きな割合を占める支出です。早めに整理しておくのがおすすめです。
●住宅ローンはどうする?
「理想を言えば、住宅ローンは60歳までに完済しておきたいところ。それが厳しい場合はリタイアまで、あるいは年金受給開始までには終わらせておくと安心です」
年金開始前に住居費がかからない状態にしておき、もし夫に先立たれた場合も、妻の収入(年金5万〜6万円+会社員の夫の遺族年金5万〜7万円)=毎月10万円程度で基本的な生活費をまかなうのが理想です。
「40代で35年ローンを組んだ場合、完済は75歳以降。老後の経済破綻を防ぐためにも、子どもの教育費が終わったら積極的に繰り上げ返済に回すなど、ローンを適正な期間で終わらせるよう調整を。年金はできるだけ繰り下げて受け取り額を増やし、それまでの間は継続雇用や副業などで収入を得て、乗りきりましょう」
●賃貸の人は現金の用意を
賃貸の人は借家に住み続ける限り、家賃が発生します。
「ローン返済同様、目安は60歳か、リタイアするまでか、年金受給開始まで。それまでに、生涯でかかるであろう家賃分として、まとまった額を用意できれば、月々の年金から家賃を負担せずにすみます」
●今、社宅にいる人は要注意
社宅は会社が社員のために用意してくれているものですから、定年になったら退去しなくてはなりません。
「次の住まいのために短めのローンを組む人もいますが、ここはぜひ慎重に! 在職中ならローンも組みやすい、今のうちに買ってしまおう、という判断は危険です。退職したとたんに、現在のようなインフレに突入してしまうと、困窮しかねません。次の住まいを考えるときは、なるべく借金をせずに現金で買える範囲の物件にするなど、無理のない計画を立てましょう」
夫が亡くなって一人になった時の備え
会社員の夫が亡くなり、妻の収入が激減してしまったときの防貧対策として、生命保険などで備えておくのが賢明です。
●「夫の死後」に備えてお金をつくる算段を
「500万円ほど妻に入るようにしておけば助けになるでしょう。夫が平均寿命(81歳)で他界、そのとき妻が79歳だとすると、平均寿命(88歳)まではあと9年あります。単純計算しても、500万円÷108か月(9年間)=4万6296円。約10万円の年金収入に月々およそ4万6000円がプラスされれば安心ですよね」
もちろん、保険以外の備え方も考えられます。妻も子育てが落ち着いたら働き始め、できるだけ長く収入が得られるようにキャリアを磨く。年金の受け取りを少しでも遅らせて、もらえる金額を増やしておくなども有効です。
●年金生活の予行演習をしておく
実際にいくら年金がもらえそうなのか、そろそろはっきりし始めるのが50代。そこで「年金の範囲での生活がどんな感じになるのか、やってみましょう」と黒田さんはすすめます。
「支出を細かく見直し、どこまでなら削っても耐えられそうなのか。計算するだけでなく、実際にやってみるのがポイントです。食費はいくら以内、と数字を決めて本当にできるかどうか。暮らしの中でどこにお金をかけたいか、優先順位も家庭ごとに違うはず。それに、少しずつダウンサイジングした暮らしに自分を慣らしていくトレーニングにもなります。少しでも余裕のある50代のうちに予行演習して調整しておけば、老後までに無理のない小さな暮らし方が見つかると思います」
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