この記事をまとめると

■警察庁は早めの前照灯の点灯を呼びかけている

■前照灯とは基本的にヘッドライトのハイビームのことを指す

■ハイビームに関する決まりについて解説する

前照灯は基本的にハイビームのことを指す

 交通死亡事故の発生時刻を調べると、日没時間と重なる17時〜19時がもっとも多い。

 日没時刻の前後1時間のことを薄暮時間帯といい、この時間帯は、周囲の視界が徐々に悪くなり、自動車や自転車、歩行者などの発見がお互いに遅れたり、距離や速度がわかりにくくなるため、とくに自動車と歩行者が衝突する事故が多くなるというわけだ。

 そこで警察庁では、薄暮時間帯における前照灯の早めの点灯を呼びかけているわけだが、この前照灯とは、基本的にヘッドライトのハイビームのことを指している。

「えっ、ハイビームなんてほとんど使ったことがないんだけど」という人もいるだろうが、道路運送車両の保安基準(前照灯)では、

・走行用前照灯=夜間にその前方100mの距離にある交通上の障害物を確認できる性能を有するものであること。

・すれ違い用前照灯=夜間にその前方40メートルの距離にある交通上の障害物を確認で きる性能を有すること。

 と定義されている。

 そして、道路交通法 第52条(車両等の灯火)の1項「車両等は、夜間(日没時から日出時まで)、道路にあるときは、政令で定めるところにより、前照灯、車幅灯、尾灯その他の灯火をつけなければならない。政令で定める場合においては、夜間以外の時間にあつても、同様とする」の「前照灯」とは、走行用前照灯=ハイビームのこと。

 そして2項の「車両等が、夜間、他の車両等と行き違う場合又は他の車両等の直後を進行する場合において、他の車両等の交通を妨げるおそれがあるときは、車両等の運転者は、政令で定めるところにより、灯火を消し、灯火の光度を減ずる等灯火を操作しなければならない」の「灯火の光度を減ずる等灯火」がいわゆるロービームに当たるので、夜間、対向車や前走車がいないときにロービームで走り続けるのは、厳密にいうと無灯火扱いになり、違反点数1点・反則金6000円(普通車)が課せられる。

 ただし、夜間対向車などがいない道で、ロービームで走っていたとして、取り締まりにあったという例は、寡聞にして知らない。少なくとも都市部でロービーム=無灯火でキップを切られた人はいないだろうし、ローカルエリアでもそうした事例はないはずだ。

 だからといって、交通量が少ない道でもロービームでいいというわけではない。

状況に応じて小まめにハイビーム/ロービームを切り替えるべき

 平成29年3月に、免許の更新時講習などで配られる「交通の方法に関する教則」が次のように一部改正されている。

○第6章 危険な場所などでの運転

  前照灯は、交通量の多い市街地などを通行しているときを除き、上向きにして、歩行者などを少しでも早く発見するようにしましょう。ただし、対向車と行き違うときや、ほかの車の直後を通行しているときは、前照灯を減光するか、下向きに切り替えなければなりません。

  交通量の多い市街地などでは、前照灯を下向きに切り替えて運転しましょう。また、対向車のライトがまぶしいときは、視点をやや左前方に移して、目がくらまないようにしましょう。

○第7章 高速道路での走行 

  夜間は、対向車と行き違うときやほかの車の直後を通行しているときを除き、前照灯を上向きにして、落下物や交通事故などにより停止した車を少しでも早く発見するようにしましょう。

 このように、『交通の教則』に原則ハイビームであることが明記され、その必要性が強調されているからだ。

 ご存じのとおり、2020年4月から新車の乗用車には「オートライト機能」の搭載が義務付けられ、サポカーの「先進ライト」には、

・自動切替型前照灯(前方の先行車や対向車等を検知し、ハイビームとロービームを自動的に切り替える)

・自動防眩型前照灯(前方の先行車や対向車等を検知し、ハイビームの照射範囲のうち当該車両のエリアのみを部分的に減光する)

・配光可変型前照灯(ハンドルや方向指示器などの運転者操作に応じ、水平方向の照射範囲を自動的に制御する)

 といった機能も盛り込まれている。

 これらが普及していけば、無灯火の問題や、ロービーム/ハイビームの切り替えタイミングなども機械任せで解決するかもしれないが、現段階ではまだまだ過渡期なので、ドライバー自身が日没30分前にはヘッドライトを点け、状況に応じて小まめにハイビーム/ロービームを切り替えることを徹底して欲しい。

 これは取り締まり云々ではなく、自身と周囲の安全を守るための重要なポイントだということを自覚しておこう。