高速道路のSA・PAで駐車マス不足が深刻化しています。4年で約3000マスの増設を行っても、やはり足りない状況。抜本的な解決策として、有料化などが提言されました。

とにかく足りない駐車マス

 夜間の高速道路にトラックがあふれる状況の解決につながるでしょうか。日本高速道路保有・債務返済機構とNEXCO3社、本四高速、外部有識者などからなる「高速道路SA・PAにおける利便性向上に関する検討会」は2023年2月3日、中間とりまとめを発表し、今後のSA・PAの役割と整備方針などを提言しました。


山陽道の佐波川SA上り。大型車マスに「V字型レイアウト」が導入されている。これも混雑対策のひとつ(画像:NEXCO西日本)。

 SA・PAではここ数年、駐車マス不足が顕在化しています。特に足りないのは大型車マスで、社会的要請の高まりから大型車の高速道路利用台数も2005年からの15年間で約15万台(17%)増加。このため現在も各エリアで駐車マスの増設を行っており、2018年からの4年間で3000台分も増やしたそうです。

 それでも駐車マスは足りません。全国852か所のSA・PAのうち、平日は特に全体の約5〜7割で大型車マスが不足しているといいます。深夜には大都市圏に近いエリアはもちろん、本線上にも車両が滞留している状況が見られ、他のSA・PA利用者が駐車できずに退出せざるを得ないケースも多いことがわかっています。

 深夜帯の大型車の滞留は、深夜割引の適用待ちのほか、長時間の占有もかなり多いようです。

 SA・PAで1時間以上駐車する大型車ドライバー430名を対象にアンケート調査を実施したところ、休憩・休息時間が「8時間以上」との回答が約45%を占めたそう。また「時間調整」との回答も一定程度あり、「着荷主の時間指定や荷待ちに対する調整を、SA・PAで行っているものと考えられます」と分析されています。

「8時間」というのは、トラックドライバーの労働時間の基準において1日の拘束時間に対して必要とされる「休息」の時間に相当します。長距離を走るドライバーにとって、法令に則った休憩・休息の確保が必要で、SA・PAがその受け皿になっているわけです。

 このトラックドライバーの労働基準が、2024年4月からさらに厳格化されるため、「休息場所の確保は更に重要な課題となってくる」とされています。

駐車有料化には懸念も

 中間とりまとめでは、駐車マス不足の抜本的解決に向け、従来から一部で実施されていた「駐車マスの予約・有料化」の拡大が打ち出されています。

 混雑するエリアは、「短時間限定マス」などを整備したうえで、たとえば2時間以上の駐車を有料化、ただし“休息”が必要な長距離ドライバーは10時間まで無料にする、といった案が出されています。法的整理を行い、有料マスを順次導入し、「最終的には混雑する路線の休憩施設はすべて有料化」するとしています。とりわけ混雑する東名や新東名などは、そのようになるかもしれません。

 また、“休息”を目的に長時間駐車する大型車などの受け皿として、大型車専用SA・PAを整備する方針なども打ち出されました。

 予約制のPAはすでに実績もあります。2019年、東名の旧豊橋本線料金所跡に整備された豊橋PA(下り)です。当初は無料で、48社が利用していたそうです。しかし、2021年から有料実験に移行すると、予約・利用とも半分以下(全車平均)まで落ち込み、有料化後も利用を継続したのは3社にとどまっています。このため、「有料化の導入は非有料エリアへの転換等、利用の偏りに留意することが必要」とされています。


東名下り線の豊橋PA。本線料金所の跡地へ予約制エリアとして開設された(画像:NEXCO中日本)。

 このほか、SA・PAや駐車マスの拡充手法にも具体的な対策が示されています。SA・PAの敷地に活用余地がない場合は、本線上の遊休バスストップや、豊橋PAのような本線料金所跡地を活用した駐車マスや、高速道路近傍の路外の土地を活用した整備も継続すべきとされています。さらに新たな手法として、「駐車マスの立体構造化」に取り組む方針も打ち出されました。

 日本高速道路保有・債務返済機構によると、今回の中間とりまとめは、現状の課題を踏まえてアイデア出しを行い、「あるべき姿の“フル”」を提示したものだといいます。各施策の実現性はこれから各社が検討するものの、「できることは少しでも早く」実現していく構えだと話しました。