パリ五輪でのメダル獲得を目指すU−21日本代表が、アグレッシブな強化を続けている。

 9月にA代表がドイツで親善試合を重ねているのと時を同じくして、ヨーロッパに足を運んだU−21代表は、中3日の日程でスイス、イタリアと対戦。スペインサッカー協会が発表しているところによれば、11月にはスペインとのアウェーゲームも予定されているといい、豪華対戦相手との親善試合が目白押しだ。

「ヨーロッパのカレンダーと我々のカレンダーとがなかなか一致しないことが多いので、うまくいかないところはありますけど、マッチメイクに関してはすごく積極的に動いてくれているので、ぜひまたアウェーでレベルの高い相手とやりたいというリクエストは出してます」

 1−1のドローに終わったイタリア戦後、U−21代表を率いる大岩剛監督もそう話していたように、日本サッカー協会としても東京五輪で逃したメダルを次回のパリ五輪では是が非でも獲得すべく、この世代に力を注いでいる様子がうかがえる。

 とはいえ、本来的に"パリ世代"に望まれているのは、A代表の底上げ。U−21代表にとどまらず、A代表にも食い込み、既存戦力を脅かすことだ。大岩監督も常々話しているように、A代表に選ばれながらパリ五輪に出場する選手がどれだけ出てくるかが、結果としてメダル獲得にもつながる。

 その意味で言えば、今回のU−21代表のヨーロッパ遠征と並行して行なわれているA代表の活動にパリ世代の選手がひとりも選ばれなかったことは、彼らはまだまだ実力不足ということになるのだろう。

「今までとは少し違って、相手のプレッシャーにちょっとビビりながらやってしまった部分が多かったのかなと思います」

 そう語り、イタリアとのアウェーゲームを振り返ったのは、この試合でキャプテンを務めたMF藤田譲瑠チマだ。

 藤田は「ヨーロッパのチームと(続けて)戦うのは久々なので、本当に楽しかった」と言いつつも、「こういう試合を勝ちきることができないと、(パリ五輪)本大会でメダルには届かないと思うので、そこは反省して成長していくべきなのかなと思います」と、自戒の言葉を口にする。


U−21日本代表の主軸として奮闘した藤田譲瑠チマ

 そんな藤田は、7月のE-1選手権で初めてA代表に選出されたパリ世代のひとり。ボランチとしての高いボール奪取能力に加え、攻撃時には優れた展開力も見せ、一躍ワールドカップ本番でのメンバー入りを期待される存在となっていた。

 ところが、いざフタを開けてみれば、事実上ワールドカップ前の最終テストが行なわれているA代表に藤田の名前はなく、U−21代表のひとりとしてヨーロッパ遠征に参加することになったのだ。

 結果的にE-1選手権での活躍をその後につなげられなかった現状を、藤田本人はどう受け止めているのだろうか。

 イタリア戦を悔しい引き分けで終えた藤田にそんなことを尋ねると、「正直、世間の意見というのはそんなに気にしていないですし、(メディアによる)自分の評価だけがひとり歩きしていると感じていた」と語り、こう続けた。

「自分のなかでは、今のA代表に選ばれるような能力はまだ備わっていないと思っているし、もっと成長していかないといけない部分があると思っているので、そんなに慌てることなくというか、もちろん目指しているところはそこ(A代表)ですけど、今は自分のやるべきことをしっかりとやっていかないといけない時期なのかなと思います」

 もちろん、「悔しさっていうのは、一回(A代表に)選ばれた以上持っています」と藤田。とはいえ、自分が望んだからといってA代表に呼んでもらえるわけではないのも、また事実。だからこそ、「そういう(悔しい)気持ちを忘れずに、今できることをやればいい」と語る。

「この(U−21代表に選ばれた)状況に置かれたんだったら、このなかで100%やるし、もし(A代表に)選んでもらえるんだったら、そっちで100%やる。今は(どこにいても)自分のできることを100%やるべきなのかなと思います」

 敵地に乗り込んでのイタリア戦。藤田は「(劣勢だった)前半は(イタリアの選手が)うまいなと思うシーンが多かった」と言いつつ、「そこは自分たちのメンタルのところで変えられる部分が少なくない」とも語る。劣勢の前半、攻勢の後半を問わず、まったく臆することなくチームメイトに指示を送り、自らもボールに食らいついていく姿は、実に彼らしいものだった。

 未来を嘱望される新鋭ボランチは今、同世代の仲間とともにU−21代表で順調な成長を遂げている。