スーパーGT第6戦は9月17日・18日、宮城県のスポーツランドSUGOを舞台に行なわれた。シリーズも終盤となり、チャンピオン争いの行方を大きく左右するこの1戦。圧倒的な速さを見せたのは、今季GT-Rからバトンを受け継いで戦う「日産・新型Z」だった。


チャンピオンシップ争いで上位を独占する日産の新型Z

 スーパーGTは成績に応じて、車体に重りを載せる「サクセスウェイト」というシステムが導入されている。基本的にはドライバーズポイント1点につき、2kgのウェイトを積載しなければならない。だが、第7戦では1点あたり1kg、最終戦の第8戦では全車0kgとなるため、ランキング上位陣にとっては今回のSUGOが一番重いハンデを背負うことになる。

 その一方で、ウェイトが軽いチームにとってはここで大量得点を獲得できれば、ランキング上位に食い込むチャンスがある。そういう意味でもSUGOの結果は、チャンピオンシップを占ううえで非常に重要となる。

 SUGOの予選で日産勢は、サクセスウェイトの影響もあって後方に沈む結果となった。だが、決勝では途中から降り始めた雨を味方につけて、みるみると順位を上げていった。

 特に注目を集めたのが、ナンバー3のCRAFTSPORT MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)と、ナンバー23のMOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ)だ。

 彼らが装着するミシュランタイヤは、昨シーズン途中から溝の入り方が他メーカーと異なるウェットタイヤを持ち込んでいた。最近のレースではドライコンディションが続いたため出番はなかったのだが、今回久しぶりに雨が降ったことで初めての実戦投入となった。

 雨のコンディションで行なわれた3月の開幕前テスト走行時、ミシュランタイヤを履く3号車と23号車は驚異的なタイムを叩き出し、関係者を大いに驚かせた。ライバルたちも警戒はしていたのだが、SUGOの実戦でも圧倒的な速さを見せつけたのである。

日産勢が6戦中3勝をマーク

 3号車と23号車は、他メーカーのタイヤを履くライバル勢より1周あたり2秒近く速いペースで周回。あっという間に1位・2位を独占した。最終的には3号車が今季2勝目をマークし、日産勢としては2021年の第4戦・鈴鹿以来となるワンツーフィニッシュを飾った。

「天候に左右されて状況が刻々と変化するなか、常にピットと交信しながら走っていました。今回はミシュランのウェットタイヤに救われましたし、島田(次郎)監督と根岸(圭輔)エンジニアの的確な判断で戦略面もうまくいきました」(3号車の千代)

 そして、3号車と23号車に劣らず圧巻の走りを見せた日産マシンがもう一台ある。第5戦で優勝してランキング首位に立ったナンバー12のカルソニック IMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バケット)だ。

 今回のSUGOでは89kgと非常に重いサクセスウェイトを背負っていたため、予選14番手に沈んでからのスタートとなった。しかし決勝では、雨のなかで装着したブリヂストンのウェットタイヤがコンディションに合っていないと判断すると、すぐに別の種類のウェットタイヤに交換。3号車や23号車よりさらに速いペースで周回していき、最終的に5位でフィニッシュしたのだ。

 サクセスウェイトの搭載量を考えると、入賞するのも難しかった。だが、そんな状況下で5位まで挽回できたのは、チャンピオン争いを考えると大きな前進と言えるだろう。

「僕たちは雨が強くなっていくと踏んでウェットタイヤを選択したけど、実際には雨が止んで路面も徐々に乾きはじめていった。コンディションに対してタイヤが合わなくなってしまって、もう一度ピットに入って別の種類のウェットタイヤを装着したら、ペースは非常によかった。チームも柔軟に対応してくれて、戦略面でもうまくいったよ」(12号車のバケット)

 SUGOでのレースを終えて、新型Zの日産勢はここまで6戦中3勝をマーク。どこのサーキットでも高いパフォーマンスを発揮している。

 勝利を逃したレースを見ても、開幕戦・岡山ではレース後半に追い上げた23号車が3位表彰台を獲得。第2戦・富士では3号車がクラッシュに見舞われるまで優勝争いに絡む好走を見せ、12号車が3位。そして第4戦・富士でも日産Zが終始トップ争いに絡む活躍を見せ、12号車が2位、ナンバー24のリアライズコーポレーション ADVAN Z(佐々木大樹/平手晃平)が3位に入った。

7年ぶりの王座奪還なるか?

 シーズン序盤から調子のよさが目立つ日産勢だが、中盤戦に入ってさらに安定感が増した感がある。これについて、23号車の松田はこのように語った。

「中盤戦に入って、クルマのセッティングがだいぶ煮詰まってきたかなという感じはあります。特に僕たち(23号車)はシーズン序盤、(昨年までの)GT-Rのよさにこだわりすぎた部分があって、それでうまくいっていないところもありました。けど、今はかなり形になってきたかなと思います」

 第6戦を終えたドライバーズランキングを見ると、3号車の千代/高星組が54ポイントで首位に浮上。12号車の平峰/バケット組が50.5ポイントで2位、23号車の松田/クインタレッリ組が37ポイントで3位と、日産勢が上位を独占している。3号車は他メーカーのライバルに対して20ポイント近いリードを築いた。

「SUGOは正直、苦しい展開になると思っていました。次もどんな展開になってもいいレースができるようにしたいです。Zの初年度でタイトルを獲らないといけない責任感はあります」(千代)

 冒頭でも触れたとおり、ホンダ勢やトヨタ勢にとっても第6戦は大事なレースだった。しかし、結果的に日産勢とのリードが広がってしまい、レース後は両陣営とも険しい表情を見せていた。

 もちろん、残り2戦で逆転できる可能性も残っている。日産勢も最後まで油断はできないだろう。とはいえ、今回のレース内容と結果を加味して間違いなく言えるのは、全国の日産ファンが待ちに待った「7年ぶりのシリーズチャンピオン」に大きく近づいたということだ。