オリックスのドラフトでの補強ポイントは「さらなる投手陣の強化」か「攻撃陣の底上げ」かの2択。社会人屈指の大型遊撃手も狙いたい
昨年度のパ・リーグ覇者・オリックスが、ここに来てさすがの戦いを見せている。夏頃まではソフトバンクと西武の一騎打ちかと思われたが、一気に調子を上げ、熾烈な優勝争いを演じている。
チーム防御率2.76はリーグトップ。その一方でチーム打率.245(リーグ3位)ながら本塁打数85本はリーグ最少である。つまり、投手陣の奮闘がチーム躍進の原動力になっていることは間違いない。
※成績は9月20日現在
そこで今回のドラフトだが、これまでのような戦いに徹するなら投手力をさらに強化して盤石にするか。それとも昨年の本塁打王・杉本裕太郎が苦しんでいる今、ファームにも見当たらない右打ちのスラッガーを筆頭に"攻撃力"の強化に向かうのか。この2択となるだろう。
投手力強化なら"快速左腕"不在の現状を鑑みると、矢澤宏太(日本体育大/173センチ・72キロ/左投左打)がマッチする。小柄でも試合終盤まで140キロ台後半が維持できる持久力は大きな魅力。変化球もスライダーにバリエーションをつけながら、チェンジアップが効果的だ。まだ力任せに走ってしまうラフな面も残るが、年齢的には1年後輩にあたる宮城大弥の精緻な投球に接することが、絶好の"教材"になるのではないか。
先発陣に厚みを加えるなら、社会人の吉野光樹(トヨタ自動車/176センチ・78キロ/右投右打)の実戦力の高さを買いたい。また、今季はなかなか本来のメリハリの効いた投球が見られないが、昨年の隙のない投球なら即戦力レベルの河野佳(大阪ガス/176センチ・78キロ/右投右打)を、もし2位で指名できたら大収穫だろう。
ファームに目を向けると、2年目の大器・山下舜平大に次ぐ高校生の有望株が何枚かほしいところだ。
球威と腕の振りの破壊力なら、今年の高校生ナンバーワンと見る大型サイドハンドの安西叶翔(常葉大菊川/186センチ・84キロ/右投右打)。爆発力抜群のフィニッシュに伸びしろを感じる茨木秀俊(帝京長岡/184センチ・84キロ/右投右打)に、この春から驚異の成長曲線を描く別所孝亮(大阪桐蔭/183センチ・87キロ/右投右打)の両右腕も将来性抜群の逸材である。
一方で、メイクチャンスに長けた選手は多くいるが、ポイントゲッターが手薄な野手陣は、長打力と勝負度胸を兼備した"元気者"がほしい。チーム構成上、右打ちならなおさらよしだ。
大学生なら、右中間に放り込めてガッツ溢れるプレーが魅力の萩尾匡也(慶應義塾大/外野手/180センチ・84キロ/右投右打)。
高校生なら、並外れた長打力を誇る内藤鵬(日本航空石川/内野手/180センチ・100キロ/右投右打)も楽しみな存在だ。また、打率、本塁打の両方でタイトルの期待をかけるなら西村瑠伊斗(京都外大西/外野手/178センチ・75キロ/右投左打)。教えてもなかなか会得できない内角の捌きがすでに"技"になっている、関西を代表するスラッガーのひとりだ。
あえて紅林のライバルを獲得したいチーム構成を考えると、高校生か大学生の捕手も補強しておきたい。高校生ナンバーワン捕手の呼び声が高い松尾汐恩(大阪桐蔭/178センチ・77キロ/右投右打)は1位か2位でないと獲れないだろうが、今夏の甲子園で活躍した山浅龍之介(聖光学院/175センチ・82キロ/右投左打)の攻守のレベルの高さは、松尾に次ぐハイレベルだ。
そして今のオリックスを見ていて、気になっていることがひとつある。3年目のショートストップ・紅林弘太郎のバッティングが、なかなか壁を突き破れないことだ。昨年からレギュラーに抜擢されて、今年もまずは守りの要として試合に臨んでいる状況だ。本来なら強肩・強打の遊撃手として不動のレギュラーになってほしい逸材である。
そもそも抜群に柔軟な身のこなしと、天才的なグラブ捌きを持った紅林だ。肩代わりできる選手などそうそういるものではないが、すでにプロ級のフィールディング能力と鉄砲肩の中川智裕(セガサミー/187センチ・88キロ/右投右打)なら可能だろう。このサイズで、華麗な身のこなしのフィールディングは、それだけで売り物になる。紅林のライバル候補としてぜひとも獲得したい人材だ。
オリックスは杉本をはじめ、福田周平、西野真弘、小田裕也......さらに今季リリーフ陣の一角として防御率0点台をマークしている阿部翔太など、社会人球界の実力派をひっそりと指名し、有力な一軍戦力として活用してきた伝統を持つチームだ。はたして中川の指名はあるのか。今年もオリックススカウト陣の社会人戦略が楽しみだ。