チーム事情から見るドラフト戦略2022〜ソフトバンク編

 多数の新型コロナ感染者を数え、主力の長期離脱も相次いだ今季のソフトバンク。それでも西武、オリックスとパ・リーグ首位の座を争って、チーム打率.254はリーグトップ、チーム防御率3.17もリーグ3位。非常事態が続いたチーム事情を考えれば、この数字は立派なものだ。
※成績は9月11日現在

 その理由は、やはり"選手層の厚さ"以外になさそうだ。


スリークォーターから最速152キロの快速球を投げる白鴎大・曽谷龍平

補強ポイントは左腕と和製大砲候補

 シーズン早々、中軸の栗原陵矢が左膝前十字靱帯断裂、半月板損傷の重傷で戦線離脱すると、そこに3年目の柳町達がスポッと入って、懸命にその穴を埋めんとすれば、唯一無二のチームリーダー・松田宣浩の不振にはルーキーの野村勇がそこを引き受けて、俊足と二塁も守れる守備力を発揮しながら、勝負強いバッティングでチームに貢献してきた。

 そんなシーンがあちこちに見えて、"新旧交代"とか"過渡期"という見出しが躍ったが、むしろ苦境を"充実"で切り抜けた印象すらあった。

 2完封を含む6勝を挙げ、新たなローテーション左腕誕生かと思われた大関友久だったが、まさかの精巣ガン手術により離脱。本人にとっても、チームにとっても、こんなに痛いことはなかっただろう。

 中継ぎには嘉弥真新也、ストッパーにはリバン・モイネロという絶対的存在のサウスポーが君臨しているが、そのあとの左腕がいない。

 ならば、1位は曽谷龍平(白鴎大/182センチ・79キロ/左投左打)で斬り込むのか。重複必至の即戦力左腕だが、昨年ドラフト1位・風間球打の明桜高校の3年先輩。互いに意識し合っての相乗効果も期待したいところか。

 一方で、柳田悠岐以外に和製大砲が少ないチーム編成に、とくに右打ちの大砲候補を何枚か......今年は「それらしき者」が見え隠れしているだけに、方向転換も「手」かもしれない。

 その一番手である浅野翔吾(高松商/170センチ・86キロ/右投右打)は、今夏の甲子園で「これでもか!」の実力を存分にアピール。一躍、1位重複候補に台頭した。打つだけでなく、守れて、走れて、高いレベルで三拍子揃っているのが大きなアドバンテージだ。

 それでも左腕最優先なら、1位を曽谷でいって、2位に和製大砲候補を持ってくる手もある。今年は地元・九州に「右打ちのギータ(柳田悠岐)2世」がいる。

 古川雄大(佐伯鶴城/186センチ・89キロ/右投右打)はとんでもない身体能力の持ち主だ。名のとおり「雄大」な体躯がスピーディーに機能して、50メートル6秒0の脚力に広い外野の守備範囲。タイミングが合った時の打球の飛び方は、十分にプロ級の迫力。ソフトバンク野手陣に挑むか[平田2]ら、これくらいのスケールがなかったら見劣りするだろう。

 全国的にはまったく無名の存在だが、スカウト間では12球団周知の逸材。先に指名される可能性は大いになる。ならば、海老根優大(大阪桐蔭/182センチ・85キロ/右投右打)か、森下翔太(中央大/182センチ・88キロ/右投右打)が残っていれば狙いたいソフトバンク好みのパラフルでエネルギッシュなふたりだ。

育てたい今宮健太の後継者

 ソフトバンク投手陣と言えば、春季キャンプなどで"タワー"と称したいほどの長身で大型のオーバーハンド投手がブルペンにずらりと並ぶ壮観な風景が思い浮かぶが、そのなかに斬り込める条件は"150キロ"。

 そんな「ホークス好み」の投手を探せば、行き着くのが羽田野温生(東洋大/188センチ・95キロ/右投右打)だ。

 今春のリーグ戦は左脇腹を痛めて回復に務めたが、角度抜群の快速球が150キロを超えることは、昨年秋の快投で証明済み。プロでも勝負球になるカットボール、フォークも兼備して、この秋のリーグ戦での復活ぶり次第では、1、2位でないと獲れない存在にグレードアップすることもあり得る大器だ。

"遊撃手"は毎年獲得しておかなければならないチーム編成のキーポイント。内野陣の年齢構成を考えれば、今年は高校生だ。

 フィールディングに独特の野球カンが光る赤堀颯(聖光学院/174センチ・74キロ/右投右打)ならハイレベルのソフトバンク内野陣でも食い込んでいけるのではないか。選出された「U18ワールドカップ日本代表」でも、実戦のプレーのなかで、早くも抜けたフィールディングセンスを発揮し、守りの要として機能できている。

 毎年、多数の育成選手を指名して、3、4年かけて体づくりからじっくり仕上げ、そのなかの何人かを一軍戦力として「育成」しているソフトバンク。今年はそこでどんな無名の逸材の名を挙げるのか......興味は尽きない。