FW細谷真大はわずか3年でレイソルの象徴に。武器の「裏抜け」はオルンガを見て学んだ
サッカー日本代表「パリ世代」インタビュー04
細谷真大(柏レイソル/FW)前編
今季、若手の台頭が著しい柏レイソルにあって、その象徴的存在となっているのが、細谷真大だ。
中学時代から柏のアカデミー(育成組織)で育った細谷は、まだ柏U−18に所属していた高校3年時の2019年に2種登録でトップチームデビュー。以後、順調に成長を続ける20歳(※9月7日誕生日で21歳)は、シーズンを重ねるごとに出場試合数を増やし、今季J1では27試合出場7ゴールと、シーズン途中にしてすでに自己最多ゴール数を記録している(第28節終了時)。
チームへの貢献度の高さは、攻撃だけではない。守備においても、自慢のスピードを生かした高速プレスは威力抜群。柏の最前線に立つ生え抜きストライカーは現在、攻守両面でチームを牽引する役割を担っている。
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細谷真大(柏レイソル)2001年9月7日生まれ
---- まずは、柏での現状について聞かせてください。チームは開幕直後から上位争いに加わり、細谷選手自身もすでに1シーズンでの自己最多ゴールを記録しています。
「チームとしても、個人としても、今季のリーグ戦は自分がイメージしたよりもいい形で入れました。ゴールやアシストも取れているので、少しは満足しているという感じです。ネルシーニョ監督から要求されていることをチーム全員でしっかり理解してシーズンに入れたので、はじめからからスムーズにいけたのかなと思います」
---- 「自分がイメージしたよりもいい形で入れた」ということですが、今季開幕前の柏は昨季までの主力選手がチームを離れ、決して前評判は高くありませんでした。そのなかでFWの軸を任されるプレッシャーはありませんでしたか。
「主力選手が抜けたことによって、自分のなかでは『チャンスが来たな』と感じていました。巡ってきたチャンスをうまく生かし、経験を積みながら活躍できればいいなと、前向きに考えていたのがよかったのかなと思います」
---- 細谷選手個人としても4月までに4ゴールと、シーズン序盤に結果が残せたのは大きかったのではないですか。
「序盤に結果が出たことで、自分の自信にもつながりました。去年までは(シーズンが始まっても)なかなか点が取れずにいたので、今年はうまく入れたと思います」
---- それでも昨季の成績は、リーグ戦28試合出場で5ゴール。プロ入り2年目としては、今季につながる手応えを感じたシーズンだったのではないですか。
「手応えはもちろんありましたけど、最後の"決めきる"っていうところでは、もちろん今でも課題ではありますけど、まだまだ足りなかったなと感じた年でしたね」
---- 細谷選手はU−15から柏のアカデミー育ちですが、プロフィールによると、小学生時代も千葉県柏市のチーム(柏A.A.TOR'82)に所属しています。茨城県牛久市出身の細谷選手が、なぜ柏のチームを選んだのですか。
「お父さんがそこを見つけてくれて、行ってみようか、という感じでした」
---- 小学生にとって、柏まで毎日練習に通うのは大変ではありませんでしたか。
「自分は楽しかったので、大変とは感じていなかったですけど、親はやっぱり大変だったと思いますね。電車で行くときもありましたけど、(親にクルマで)送り迎えしてもらうことが多かったですから」
---- 柏A.A.TOR'82は柏レイソルの提携クラブですが、そこへ入る時点で柏のジュニアユース(U−15)へ進むことを考えていたのですか。
「いや、そこに入った時は、ジュニアユースに行くことは考えていませんでした。6年生になったあたりから、レイソルのアカデミーにジュニアユースがあるということを知って、意識し始めたのはそのあたりからです」
---- 自分もレベルの高いところでやりたい、と。
「プロになるためには、柏のようなJクラブに入らないとダメだと思ったので、入る決断をしました」
---- 中学生になる時には、すでにプロになりたいと思っていたのですか。
「そうですね、(プロになりたいと思ったのは)そのタイミングでしたね」
---- 柏のアカデミーで、どんなことを身につけられたと思いますか。
「やっぱり、トラップだったりパスの基本のところは小学生時代にあまりやってきていなかった分、学ぶことが多かったなと思います」
---- 柏のアカデミーは過去、多くのJリーガーを輩出しています。先輩のなかで影響を受けたり、憧れたりした選手はいますか。
「トップの試合を見ていてすごいなと思ったのは、工藤壮人選手(現・テゲバジャーロ宮崎)ですね」
---- 自分の目指すスタイルに近かったからですか。
「いや、そこまでは考えていなかったんですけど(苦笑)、常に点を取っているイメージがありました」
---- 小さいころに柏の試合を見る機会は多かったのですか。
「小学校の時も(所属していたチームが)レイソルと提携していたこともあって、ちょくちょく見に行けましたね」
---- 生観戦したなかで印象に残っている試合はありますか。
「うーん、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)の試合は覚えているような感じがするんですけど......、相手は覚えていないです(苦笑)。たしか、レイソルが勝ちましたね」
---- その後、現実に夢を叶え、プロ選手となったわけですが、ルーキーシーズンはJ1で2試合しか出場できませんでした。プロ1年目を振り返ると、どうでしたか。
「1年目は自分自身、練習を通して周りの選手との差を感じていたので、本当にもがきながらやっていたというか、とにかく一生懸命やるということが、まずはその年の自分の課題だと感じていました」
---- 当時はJ1得点王となったオルンガ選手(現アル・ドゥハイル)をはじめ、強力なライバルがチーム内にいました。
「ミカ(オルンガ)だったり、呉屋大翔選手(現・大分トリニータ)だったりは、"裏抜け"がうまいと思っていました。そういう同じポジションの選手を見ながら練習をやったことで、学べたことは本当に多くあったなと思います」
---- 細谷選手もDFラインの裏へ抜け出すプレーを得意としています。やはり裏抜けが自分の武器だと考えていますか。
「そうですね。裏抜けは自分自身の強みだと思っていますし、あとは精神力っていうところも、自分では自信あるかなっていう感じです」
---- 精神力というと? 最後まであきらめず90分戦い続ける、とか?
「それもそうですし、ボールを持った時の『前へ前へ』っていう姿勢は、自分自身でも意識してやっているので、そういう部分でもあります」
---- 細谷選手のプレーを見ていると、裏抜けだけでなく、相手DFを背負った時のプレーにも、強さやボディバランスのよさを感じます。
「ポストプレーに関しても、自分はできるほうだと思っていますけど、たまに出てしまう(ボール)ロストがピンチにつながることがあるので、やっぱりもっと質を高めていく必要があるのかなと、今は感じていますね。まずは(ポストプレーでボールを受けた時に)ワンタッチでやるのか、ツータッチでやるのかっていうところの判断をしっかりと考えてやれば、ロストも減ってくるんじゃないかなと思います」
---- 自分の特長も踏まえて、現在の課題はどんなところにあると感じていますか。
「裏抜けができなかった時のポジショニングや、受けるタイミングは今後大事になってくると思いますし、あとはゴール前での落ち着きだったり、決めきる力はもっと必要かなと思いますね」
---- 決めきる力をつけるために、必要なことは何だと思いますか。
「たとえ決定機を逃したとしても、メンタルを落とさずにシュートの意識を強く持つことが必要だと感じます」
---- そうした前向きな姿勢は、もともとの性格によるものですか。それとも、そうあろうと意識しているのですか。
「特別に意識しているつもりはないですけど、決定機を外すと、自分もそうですけど、誰しも一回は絶対に落ち込んでしまう。そこで試合中に、どうメンタルを(高く)保つかっていうのはFWとして難しいところでもあるので、そこは練習からしっかりと意識してやっているところはありますね」
◆細谷真大@後編はこちら>>「同い年の久保建英に刺激もらった」
【profile】
細谷真大(ほそや・まお)
2001年9月7日生まれ、茨城県牛久市出身。中学時代から柏レイソルのアカデミーで育ち、柏U−18所属時の2019年3月にJリーグデビューを果たす。2020年にトップチームへ昇格し、2021年7月にはJリーグ初ゴールを記録する。昨年はU−21日本代表の一員としてドバイカップU−23、U23アジアカップに出場し、同年7月にはE-1サッカー選手権の中国戦でフル代表デビューを飾った。ポジション=FW。身長177cm、体重69kg。