開幕5試合で6ゴール

 絶好調の古橋亨梧が壮大な目標を口にした。

 スコティッシュ・プレミアシップの第5節ダンディー・ユナイテッド戦で、王者セルティックの背番号8はハットトリックを達成。4試合連続でネットを揺らし、ここまでの5試合で6得点とゴールランキングのトップに立っている。


セルティックの古橋亨梧は今季すでに6ゴールと絶好調 photo by Getty Images

「ハットトリックができて嬉しいです」と試合後に古橋は報道陣に語った。

「チームが取り組んできたフットボールのおかげです。まずは20得点を狙い、できれば30ゴール、いやそれ以上を目指したい」

 現在27歳の日本代表FWは昨季、ハムストリングの負傷により約4カ月も離脱していたにもかかわらず、全公式戦で20得点を記録した。それを考慮すると、十分に実現できる数字だ。

 試合後のメディアでは、キョウゴ(スコットランドではこちらで通っている)の巧みなオフサイドの破り方が大きな論点のひとつになった。

 先制点と3点目のシーンで、アシストの一つ前のフィードが入った時、彼は完全に最終ラインの後ろにいた。それらに自身は関与せず、オンサイドの味方(1点目はジョタ、3点目はリエル・アバダ)へボールが入ると、すぐに鋭く動き出し、クロスを引き出してゴールに繋げている。

 キョウゴのこうした動きについて、元スコットランド代表でセルティックでも活躍したケニー・ミラーは、BBCスコットランドの番組『スポーツシーン』で次のように語った。

「キョウゴはオフサイドポジションにいることが多いが、重要な場面ではしっかりとオンサイドにいる。

 オフサイドを逆手に取るのが実にうまい。彼は前節のハーツ戦でも似たようなゴールを決めている。その時も、ラインを少し越えたところにいながら、ボールがワイドに出てから瞬時に動き出し、ディフェンダーを出し抜いたんだ」

 それはかつてアーセナルでアーセン・ベンゲル監督が、ティエリ・アンリに教えていた動きにも通じるものだ。キョウゴもアンリもスピードと決定力を兼ね備えており、その武器を最大限に生かすべく、アンジェ・ポステコグルー監督が考案したのだろう。

巧みなオフサイド破り

 とくにダンディー戦の先制点は、このオーストラリア人指揮官の戦術が導き出したものと言える。

 まず最前線のキョウゴが相手GKにプレスをかけてロングボールを蹴らせる。すると、彼がペナルティーボックスの外へ歩いている間に、セルティックのチームメイトがマイボールにする。

 そして、アバダが左前方に抜け出すジョタへフィードを送ると、オフサイドポジションにいたキョウゴは中央で右回りの円を描くように駆け出す。ジョタはキョウゴよりもやや前方から折り返し、これを受けたボックス内のキョウゴが冷静にシュートを流し込んだ。

「練習で取り組んでいることしか、試合では表現できません」と古橋は試合後に言い、この得点も普段から練習している結果だと暗示した。

「今日はチームで9得点も奪えて自信に繋がりましたが、もっともっと決定力を磨いていきたい」

 今シーズンの古橋は昨シーズンと比べて、より中央でフィニッシャーの役割に注力しているように見える。昨シーズンは1年目でアピールをしたい気持ちが強かったからか、前線で大きく動き回り、スペースを作ることと突くこと、そしてハイプレスにも勤しんでいた。

 一方、今シーズンの彼はゴールマウスの幅の中でプレーすることが多く、ジョタやアバダ、あるいは前田大然が走るスペースを空け、自身は彼らからのクロスを待っているのだ。

 ポステコグルー監督も、キョウゴのここまでの好調を称えている。

「実に見事な活躍だ」と指揮官は試合後に語った。

「彼は我々が取り組んでいることにおいて、極めて重要なパートを担っている。(多くのゴールを決めているが)彼自身、それが自分だけのものではないのを理解している。彼はカウンターアタックの火付け役になり、相手に脅威を与えている。うちのストライカーは皆、ものすごいハードワークを積んでおり、その結果が数字に現れているのだ」

「レアル・マドリードと対戦したかった」

 そうしたセルティックのクオリティーを試す格好の機会が、これから立て続けにやってくる──週末にレンジャーズとのオールドファームを控え、さらにその3日後にはチャンピオンズリーグ(CL)のグループステージ第1節でレアル・マドリードと対戦するのだ。どちらも本拠地セルティックパークで行なわれる。

 とくにCLの本戦に出場することは、キョウゴの夢でもある。欧州最高の舞台で自らの実力を試し、かつてセルティックの一員としてCLで活躍した中村俊輔のように、そこにはっきりと足跡を残したいと考えているのだ。

「レアル・マドリードと対戦したいと思っていました」とキョウゴは語った。

「セルティックパークなら、最高のサポーターたちが僕らにエネルギーを与えてくれるので、とても楽しみです。

 これまでにやってきたことを試合で表現できれば、レアルにも勝てると思います。いや、どこにでも勝てるはずなので、とにかくトライしたい。自分にとって、相手はどこでもよかったけど、レアル・マドリード、ライプツィヒ、シャフタールが入ったグループはすごくいい。すぐにでも試合がしたいし、(ピッチ上で)CLのアンセムを聴きたい。チームにとっても、自分にとっても、成長するためのいい機会になるでしょう。

 CLはずっと観てきた大会で、そのグループステージでプレーするのは自分の夢でした。だから、必死に努力を続ければ、どんなことでも叶うというのを、日本と世界の子どもたちに見せたい」