2022年8月22日に、神奈川県の横浜スタジアムで開幕する第39回全日本少年軟式野球大会。各ブロック大会の代表となったチームが集う、まさに中学軟式最高峰の戦いだが、今年、創部2年半足らずのチームがこの大舞台に駒を進めた。

 そのチームが、聖心ウルスラ学園聡明中学校(宮崎)。夏2度の甲子園出場実績を持つ、聖心ウルスラの中高一貫の付属中学で、2020年4月に軟式野球部が創部。立ち上げには、聖心ウルスラで監督・部長を務めた石田敏英コーチが尽力し、現在の3年生が入学・入部すると同時に、弱冠25歳だった小泉裕之監督が赴任。以来、石田コーチと小泉監督の二人三脚でチームを作り上げてきた。

 大会に向け小泉監督は、「初の全国の舞台ですが堂々と戦いたい」と強い意気込みを見せる。

コールド負けばかりだったチームが急成長聖心ウルスラ学園聡明中ナイン

 宮崎県延岡市に校舎、練習グラウンドがある聖心ウルスラ学園聡明中学校。現在は3学年で45名の選手が在籍しており、土日を含め週4日活動。練習グラウンドは細長い形状をしており、できるメニューも限られているが、それでも打撃練習用の鳥かごやティー打撃を行うスペースもあり、「練習環境は恵まれている」と選手たちは揃って口にする。

 選手たちの多くは石田コーチに声を掛けられ、聖心ウルスラ学園聡明中学校を選んだ。小学校時代から実績のある選手が集まったが、チームは立ち上がったばかりで先輩も文化もない。最初は練習を行うだけでも苦労は多く、当然試合でも負けてばかりだったという。

「最初はコールド負けが当たり前で、何度試合をしてもコールド負けばかり。でも選手たちは本当に腐らずにやってきたなと思います。2年の春から少しずつ勝てるようになっていき、秋には県大会で準優勝できました」

 小泉監督が「チームの転機」と語るのが、秋、春と県大会の決勝で日章学園中学校に敗れたことだ。県内屈指の強豪チームに僅差で2度も敗れ、選手たちは大きな悔しさを味わった。夏こそは必ず県大会で優勝し全国大会に出場すると決意を新たに、選手たちは練習に打ち込んできた。

「日章学園さんと最初に試合をしたときは、正直惚れ惚れしてしまって。同じ中学生なのに思わず見入ってしまいました。これが日章学園の野球かと。そんなチームに2度も負けたことで選手たちは悔しがって悔しがって、そこから意識が変わっていきました」

 悔しさを糧に春からさらに成長を遂げた聖心ウルスラ学園聡明中は、この夏には、並み居る強豪校を次々と破って、初の全日本少年軟式野球大会への出場が決定。創部わずか2年半足らずでの快挙を成し遂げるに至った。

注目は大黒柱の森陽樹投手聖心ウルスラ学園聡明中・森陽樹(もり・はるき)投手(3年)

 チームの持ち味は投手力を軸に守備からリズムを作り、攻撃へと生かしていくことだ。大会では主に3人の投手がマウンドに上がる。

 エースを務めるのが、187センチの大型右腕・森 陽樹(もり・はるき)投手(3年)だ。すらりとした体格からボリューム満点の直球を投げ込み、6月の宮崎県大会では143キロを計測。また打撃でも強打の2番打者として攻撃の要となっており、全日本少年軟式野球大会でも活躍が期待される。

「彼は小学校の時にも全国大会に出場していますし、打って良し、投げて良し、走っても良しの選手です。この春からは、下半身をしっかり強化したことで土台ができ、制球力も安定するようになりました」

 また水田 陽(すいた・ひなた)投手(3年)は、切れのある直球と四隅を丁寧に突く制球力が武器で、主将の吉田 康清(よしだ・こうせい)内野手(3年)もピンチの場面では遊撃の守備からマウンドへと上がる。特に吉田は打撃でも3番打者で、打撃、守備、投球、リーダーシップと、チームの屋台骨を支える。

「自分の持ち味は、状況に合わせたバッティングができることだと思います。全国大会でも自分たちらしいプレーをして、感謝の気持ちを持って全国制覇できるように頑張っていきたいと思います」(吉田)

 4番に座る神尊 大輝(こうそ・だいき)選手(3年)も注目のスラッガーだ。がっちりとした体格から長打を連発し、確実性も持ち合わせる器用さも持つ。打線のポイントゲッターを担い、神尊の活躍がチームの得点力に直結する。

 高い投手力と、個性豊かな打線で全国の舞台でも躍進を目指す聖心ウルスラ学園聡明中。どんな戦いを見せるのか注目だ。