人工衛星経由でどこでもインターネットが使える「Starlink」はこれまで、ハワイアン航空との提携により飛行機に乗りながらでも使用できるようになったり、旅行先でも使えるキット「STARLINK FOR RVs」を展開したりしています。Starlinkを運用するSpaceXは新たに、海上での使用を想定した衛星インターネットサービス「Starlink Maritime」を開始しました。

STARLINK MARITIME High-speed, low-latency internet with up to 350 Mbps download while at sea.

https://www.starlink.com/maritime

Starlink on your yacht, so hot | TechCrunch

https://techcrunch.com/2022/07/07/starlink-on-your-yacht-so-hot/

SpaceXの公式Twitterアカウントは2022年7月8日に、「Starlink Maritimeを使用すると、世界で最も離れた海域から接続できます」と述べて、新しい海上衛星通信サービスを発表しました。SpaceXのCEOであるイーロン・マスク氏も、「ボート用Starlinkだ!」と反応しています。



発表によると、ヨットでのクルージングを楽しみながら最大350Mbpsのインターネットが楽しめるStarlink Maritimeの費用は月額5000ドル(約68万円)で、端末の価格は2台で10000ドル(約136万円)とのこと。ユーザーは加入プランを任意に一時停止および一時停止解除できるほか、月額料金は使用した月のみ請求されます。

導入に200万円近くかかるのは一般人にはあまり手が出にくい価格ですが、世界一の富豪であるマスク氏から見るとリーズナブルなようで、同氏はTwitterで「高性能な2つの端子を搭載しており、荒波の中でも接続を維持することができます。プレミアムな価格であることは間違いありませんが、他のサービスよりもずっと安くて高速です。SpaceXは以前、接続性がもっと悪いのに月に15万ドル(約2040万円)も払っていたんですよ!」とコメントしています。



通信接続の(PDFファイル)カバーエリアは以下の通りです。水色の部分が記事作成時点でのカバーエリアで、薄い青色が2022年第4四半期までに、濃い青色が2023年第1四半期までにカバーするエリアです。



IT系ニュースサイトのTechCrunchは、「SpaceXは『世界で最も離れた海域から接続できる』と主張していますが、現在のところ、そのカバーエリアはアメリカを中心とした北米・ヨーロッパ・オーストラリア・ニュージーランド・ブラジル・チリの沿岸水域に限られています。地中海をクルーズするだけなら問題ありませんが、大洋を横断しようとした船は出港後すぐに接続をロストすることになるでしょう」と指摘しています。

その一方でTechCrunchは、Starlink Maritimeと競合サービスとの比較から「既存の海上インターネットプロバイダーは、プランによってはほとんどの海域をカバーできますが、その速度はお世辞にもよくありません。ローカルな海域だけでも高速なインターネットを提供できるサービスがあれば、たとえ値段は高くても、ハイエンドユーザーやクルーズ船のような商業サービスを引きつけることでしょう」と評価して、マスク氏の見立てを支持しました。